物語の体操

■第一講 本当は誰にでも小説は書けるということ

・上記の前説で本のコンセプトについて。
・内田伸子さんという発達心理学の先生が用事を対象に行ったカードによるおはなし作成実験。
  あかずきんちゃんのキーワード的カードに他のカードを混ぜ、
  そのうち5枚見せると5歳の女の子が全く別の新しいお話を話す。
・上記の「解体と再構成」のレッスンをアレンジし、
  カードをシャッフルしてプロットを作る方法を解説(一般にこの本の内容として最もよく知られている方法)
・この方法は、大塚氏が「聖痕のジョカ」というマンガのストーリーを作るために編み出した手法。
・大塚氏が受け持つ教室の生徒による作例3つ紹介。
・このカードの配置は、グレマスという記号論の研究者が提示した「行為者モデル」に倣っている。



■第二講 とりあえず「盗作」してみよう

・二次創作、引用、サンプリング、カヴァー、リミックスなどの言葉への疑問の提言。
  この世に「創作による完全な著作物」は本当に存在するのか。
・大塚氏が原作を担当した「魍魎戦記魔陀羅」は手塚治虫氏の「どろろ」の盗作である。
・マダラは最初からメディアミックスを想定して企画された。
・どろろをどんな風に解体し、マダラとして再構成したのかについて紹介。
・プロップというロシアの民族学者による「昔話の形態学」について。
  どろろやマダラもこれとまったく同じ構造になっている。
・オットー・ランクという心理学者による「英雄神話に共通の構造」とも同じ。
・既存の構造を盗作することで無数の新しいバリエーションを作り出せる。
・これらの構造を使った生徒による作例を紹介。
・村上龍氏の「コインロッカー・ベイビーズ」と「五分後の世界」をテキストとして生徒に読ませ、
  2000字のプロットを作成させる。そのプロットを盗作し、同じ分量の新しいプロットを作成させる。 
  作例を2つ紹介。



■第三講 方程式でプロットがみるみる作れる

・80年代小説家達が似通った構造の小説を書いていたことの紹介。
・蓮實重彦氏が指摘した「依頼と代行からなる宝探し」という構造。
・プロップが提唱した魔法民話の「31の機能」「七人の登場人物」(あてはまる例:スターウォーズ
・大塚氏原作の「黒鷺死体宅配便」を例に「行為者モデル」に基づいたキャラクター作成を紹介。
・黒鷺死体宅配便の行為者モデル表を元に、新しいプロットを作成する。生徒の作例紹介。



■第四講 村上龍になりきって小説を書く

・二次創作/村上龍について
・最近のまんがは全体を一人の作家が一人で創作し管理することが困難になり、
  技術/才能の分裂、細分化が起こっている。
・村上龍氏の「五分後の世界」の続編「ヒュウガ・ウィルス」は、
 「五分後の世界」の世界観のみを履修した二次作品になっている。
・歌舞伎用語の「世界」と「趣向」
・ストーリーテリングと分離した世界観の構築の重要性
・「五分後の世界」の世界観を用いて新しくプロットを作成する課題。生徒の作例紹介。



■第五講 「行きて帰りし物語」に身を委ね「主題」の訪れを待つ

・平野啓一郎氏の「日蝕」に見られるRPGっぽさ
・「五分後の世界」で新しく生徒が作成したプロットに見られる「行きて帰りし物語」の構造
・児童文学家の瀬田貞二が指摘した児童文学や指輪物語に見られる「行きて帰りし物語」
・「行って帰る」を誘導しやすい世界観について(例 五分後の世界 スタンドバイミー
・成年式の反映としての「行きて帰りし物語」。そこに登場する仮の家の役割。(例 キッチン



■第六講 つげ義春をノベライズして、日本の近代文学史を追体験する。

・つげ義春の「退屈な部屋」(「無能の人/日の戯れ」収録)を1週間で
  400字詰め原稿用紙30枚の小説として書き直す課題。生徒の作例を2つ紹介し、比較する。
・映画を見ながら小説に書いてみて、ノベライズされて出版されている本とあとで見比べてみる訓練。
・1人称と3人称、近代文学史における私小説、田山花袋の「蒲団」から
  70年代に登場したキャラクター小説に至る流れ
・全体の総括


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■課題をきちんとこなすことによって身につく能力

・第1講 異なったいくつかの要素を瞬時に物語として再構築する能力
・第2講 「物語の表層」を取り去ってその「構造」を浮かび上がらせる能力
・第3講 「物語」を「機能」の段階まで解体、それを一定の法則に従って再構成する能力
・第4講 既存の「世界観」の上に新たな「物語」を作る能力
・第5講 「成長の物語」を自然に構成する能力
・第6講 「物語」の中の「私」の位置を可変させ、様々な形の「小説」として再構成する能力


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