ある禁煙に成功した人の話

とにかく今のままではダメだ。
それだけは間違いない。

でも、何をどうしたらいいんだろう。
まったく分からない。

何でもいい。
何かやらなくっちゃダメだ。

挑戦しなきゃ……。

やり遂げよう。
やり遂げて自信を取り戻そう。

自信のない俺なんて
生きる価値もないしな。

まだ、さすがに死にたくはないし。

いや、いけない。

すぐにあきらめるのが
俺の悪い癖だ。

やらないと。うーん。
やっぱり無理。

いや、やらないと。
やればできるさ。

いやいや、やればできる、なんて性格なら、
こんな風になってないさ。

いや……。
あー、イライラしてきた。

心理学の本もう1度読んでみようかな。

人は操れなかったけど、
自分なら操れるかもしれない。

人に対して
悪用しようと思わず、

自分に対して
善用しようと思ったら、

書いてあることが
まったく違って見えてきた。

読み直すうちに
だんだん分かってきたことは、

意志の力で
悪習慣を絶つことは
できない
ということだった。

その習慣が自分にとって
意味がある間は、
絶対にやめられない。

では、どうしたらいいのか?

まず、その習慣が自分にとって
どんな意味があるのかを知ることだ。

その上で、続けるデメリットと
やめるメリットを考える。

その習慣が自分にとって意味がないうえに、
続けるデメリットも
やめるメリットも大きければ
自然にやめられるはず。

俺は、心理学で操っていた気になっていたけど、
連中は実は
操られているフリを
していただけかもしれない。

いや、きっとそうだ。
うるさいから
適当にあしらっておけ
って思っていたに違いない。

もしかしたら
全員でつるんでいたのかも……。

そう思うと、自分のあさはかさに顔から火が出た。

人を操った気になって、
実はほかの全員から嗤(わら)われていたんだ。

そう思うと、
思い当たる節はたくさんある。

今まで何でも人のせいにしてきたように思った。

何でも自分に原因があるなんて考え方は
正直よく分からないが、

俺にも非があることが
あったような気がする。

そのあと、会社を興してうまくいかなかったのも、
周りの連中や不景気のせいにしていたけど、
本当にそうか?

俺だけがチャラく成功して、
チャラい生活をしようと考えていたんじゃないだろうか。

どうも会社をダメにしたのは、俺らしい。
その後、就職して失敗したのも、
それ以来どの企業も門前払いなのも、
どうも俺に原因があるような気がしてきた。

いや、もうこれ以上は考えたくない。
少なくとも、俺にも原因がありそうだ
ということだけは分かった。

子供の頃から
親や先生にやればできる子なんですよ

って言われ続けてきたが、
何もできなかった俺。

でも、本当にやればできるじゃん!


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