ガンパレ開発者が語る「ゲーム世界観の作り方」とは

株式会社ベックの芝村裕吏氏の講演から

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ゲームビジネスにおいて利益を出す方法は、
「独走する」か「模倣する」の2種類しかなく、
この割合は状況に応じて変動するが、だいたい 1:20だという。

この割合はジャンルの設定や世界観の構築、ゲームシステム、
グラフィックなど、すべてに当てはまる。

そもそも人間というハードウェアに、
ゲームというソフトウェアを売ることを考えると、
求められる独創性の幅は自ずと決まってくる。

手が6本ある美少女キャラは、確かに独創的だが、
売れないというわけである。

芝村氏はゲーム開発における作業序列を、川の流れにたとえて説明した。

川の上流では川幅は狭いが、流れは速い。
下流になると川幅は広くなるが、流れは遅くなる。

これをゲーム開発に当てはめると、川幅は作業人員で、
流れの速度が作業の重要度となる。

企画や世界観構築などは上流、開発工程は中流、デバックなどが下流。

その上で重要なのは、川の流れが逆流しないように、
ゲームの開発工程においても、
上流のミスを下流で挽回するのは非常に難しいとした。

 たとえば一般的にゲーム開発の工程は、

「発起」→「企画」→「システム設計(仕様)」
→「開発作業」→「デバック」

となり、
世界観設定はその中でも上流過程、
だいたい企画の前段階に位置づけられるという。

これがゲームが開発終了に近づいたところで、後付の世界設定をすると、
たいてい失敗すると指摘した。

これは芝村氏が過去100本近くゲーム開発に携わった中で得た実体験だという。


次に芝村氏は、実際の世界観構築における作業を
「立ち位置の決定」「キーワード作成」
「考証作業」「評価試験」の4段階にわけて説明した。

世界観構築においても、まずはじめに行うことはジャンルの決定同様に、
「自分の立ち位置を決める」ことである。

これらは企画やゲームシステムなどによっても変わる。

企画やゲームシステムが平凡な場合は、
世界観で独創性を出す場合もあるし、
その逆もまた然りという具合だ。

また芝村氏は世界観は複数で構築すると、
お互いの意識共有が難しいので、この段階では一人で行う方がベターだと述べた。

 ゲームデザイナなり、ディレクタなりの心の中で生まれた世界観が成熟してくると、
次にそれを開発チームに伝える必要がある。

ここで重要なのが「キーワードの活用」だ。

いかに独創的な世界観を、できるだけ少ないキーワードに整理し、
チーム内で一つの世界を共有できるか。

実際に芝村氏が最もエネルギーをかけるところだという。

一般にゲーム業界では、この共有感覚をうまく作り出せる人のことを、
世界観作成の名人と呼び、センスや才能で片づける傾向にある。

しかし芝村氏はゲーム業界に対する知識や市場の洞察力で、
誰もが磨ける分野だとした。

 キーワードが出そろうと、次はキーワードの関連性や、
矛盾点を解消する作業、いわばキーワードの肉付けを行っていく。

世界設定の実作業となる段階であり、
一般的に「考証作業」と呼ばれる過程である。

メインとなるデザイナや、システム開発者とのキャッチボールで考証が進むことも多いという。
これを実際のゲーム開発に必要なだけ繰り返す。

昔はハードの表現能力が低かったため、無駄となる世界設定も多かったが、
今では特にグラフィック関連の設定が増えたため、作業量が増加する傾向にある。

この世界設定が終了しないと、実際の開発作業には移れない。

そのため世界観設定を短縮することが、
プロジェクトの期間短縮に繋がり、販売上の機会損失も最小化できる。

そのため前述のように海外の大規模開発では、
史実などをテーマにする例が増えていること。

また芝村氏の場合は、最初に大量に考証作業を行い、
複数のゲームで世界観の再利用を行っていると述べた。

またグラフィックのテイストは陳腐化しやすいが、
文章は日持ちがよく、変更も容易で、誰でも作成できるため、
世界設定はテキストベースで行う方がベターだとした。

 最後にできあがった世界設定は、デザイナやプログラマ、
システム開発者などからチェックを受ける。
これが「評価試験」である。

作業工程からいえば、これも最初に厳重なチェックを受けた方が、
後のトラブルを減少させられる。

時にはこの段階で、ターゲットユーザへのグループインタビューや、
宣伝担当とのミーティングなどを行い、修正が行われることもあるという。

また、時には特殊なゲームシステムを軟着陸させるために、
世界観が利用されることもある


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