ある有名な映画監督の 若かりしころの体験談です。 ------------------------------------- 中学の卒業旅行に出かけて 雨に降られてしまう。 濡れた気まずさから 宿のお婆さんに尋ねる。 「この雨、すぐやみますかねえ?」 「この国で降り出した雨が 止まなかった事は一度もありません」 普通なら怒るところを あの時僕は思春期 なるほどそうかと 受け取り それから映画監督になって 雨が降っても突っ込んで撮影をする やがて 雨があがり 雨上がりの濡れた みずみずしい風景は 突っ込んだ人しか撮れない やんでから撮ろうと動き出しては もう遅い 次の雨がきてしまう。