【合言葉】 合言葉で、味方であるか否かを確認する。 警察や探偵が、合言葉を用いて犯罪組織に潜入する。 合言葉を知らぬが、機転を利かせてその場をきりぬける。 合言葉を知らないため、殺される。 【合図】 吉報か凶報かを示す。意図的に、あるいは手違いにより、正しくない合図が送られることがある。 秘密の重要な合図。当事者以外には合図の意味はわからない。 客をもてなす合図。 生まれたのが男児か女児かを知らせる合図。 遅すぎた合図。 夫への変わらぬ愛を知らせるハンカチ。 【愛想づかし】 遊女が悪人をあざむくために、わざと夫や恋人に冷たい態度をとる・愛想づかしをする。 愛する男の家族からの頼みにより、遊女が、男と別れる決心をする。 妻が、夫の決心を鈍らせないように、夫に冷たい態度を見せる。 権力者からの強要によって、女が恋人に別れを告げる。 【アイデンティティ】 自分が誰だかわからなくなる男。 他人を見て、「これは自分だ」と誤認する男。 自分を落とした男。 自分が誰だかわからなくなる女。 自分の実体は幻にすぎないと悟る男。 アイデンティティを否定される男。 自分が白人か黒人かわからない男。 【赤ん坊】 生まれたその日に立ち上がり歩行する赤ん坊。 言葉を話す赤ん坊。 生まれた時のことを知っている赤ん坊。 抱くと重くなる赤ん坊。 産女(うぶめ)の赤ん坊。 天界や異郷の存在が、男の赤ん坊の形で地上に派遣される。赤ん坊は地上で成長し、天界へは帰らない。 天界から女の赤ん坊の形で地上に送られ、成長後も地上にとどまって、天界へは帰らない。 天界から女の赤ん坊の形で地上に送られるが、成長後、地上にとどまることなく、天界に帰ってしまう。 赤ん坊に将来の進路を選ばせる。 母親による嬰児殺し。 赤ん坊の幽霊、あるいは父親の幻想。 【悪魔】 悪魔と人間の契約。悪魔が人間の望みをかなえ、その代償に人間は魂を悪魔に与える。 地獄堕ちと引き換えに、名画を描かせてやろう、との誘い。 悪魔にだまされた人間が、愚かな契約をする。 悪魔が神と賭けをして、人間を試す。 欲のない人間には、悪魔の誘惑も無力である。 悪魔をつかまえる。 悪魔との問答。 神に反逆し、戦う悪魔。地獄に住む悪魔。 「神」という言葉を聞いただけでも、悪魔は滅ぶ。 悪魔に似た姿の宇宙生命体。 悪魔の子供。 【足】 生まれながらに足に障害を持つ神。 傷を負うなどして足を悪くした人。 「足に傷を負った人が、後に失明する」との迷信。 足の奇病ゆえに死ぬ男。 二足歩行から、人間の魂の病気が始まった。 二足歩行から四足歩行へ退化する。 英雄が、足の踵を矢で射られて死ぬ。 不死身の怪物の唯一の弱点が、足にある。 靴のために足を切る。 人間の身体に動物の足。 足で踏まれる人。 裸足の女。 【足跡】 足跡を残せば、正体が知られてしまう。 密会の折の足跡。 行きの足跡と帰りの足跡。 神の足跡。 鬼・異類の足跡。 巨人の足跡。 河童の足跡。 一本足の足跡。 にせの足跡。 【仇討ち】 父の仇を討つ。 父の仇を眼の前にしながら、討たない。 父が殺されそうなことを知った子供たちが、先回りして父の敵を討ち、父の命を救う。 兄の仇を討つ。 父・兄の仇を討つ。 父・夫の仇を討つ。 夫の仇を討つ。 夫を殺した人物でなく、夫の死の原因となった物を、敵(かたき)と見なして討つ。 暴行された妻と娘の仇を討ちたいと思うが、犯人が特定できないので、同類の犯罪者を何人も殺す。 主君・主人の仇を討つ。 友人の仇を討つ。 親の敵(かたき)と知らずに殺す。意図せずに行なわれた仇討ち。 動物の動物に対する仇討ち。 日本および西欧の伝説・昔話などをもとに創作された、動物仇討ち物語。 「仇討をする」と嘘を言って、大勢の見物人を集める。 【頭】 頭にさまざまなものを載せる・つける・かぶる。 頭から木が生える。 多くの頭(顔・首)を持つ怪物。 頭痛。 【穴】 住処・隠れ家としての洞穴。 異郷へ通ずる穴。 現世にある穴が、極楽あるいは冥府へ通じる。 死者が穴を通って、天上界あるいは地下界へ行く。 冥府の死者が穴を通って、現世に戻って来る。 穴の中に入り、体が大きくなってしまって、外へ出られない。 底知れぬ穴。 穴を掘ってその中へ言葉を言い入れる。 身体に開いた穴。 のぞき穴。 【兄嫁】 兄嫁が夫の弟を誘惑する。 兄嫁と夫の弟が一夜をともに過ごすが、何事も起こらない。 兄嫁との結婚。 青年が兄嫁を恋する。 【尼】 ヨーロッパの尼僧が、アジアやアフリカへ派遣される。 尼僧の水浴。 尼僧の入浴。 【雨乞い】 王・僧・呪術師などが、天や龍神に祈って雨を呼ぶ。 女性の力で雨を呼ぶ。 龍が命を棄てて、雨を降らせる。 【雨宿り】 雨宿りが縁で、男女が契りをかわす。 雨宿りをもっと大がかりにしたのが光源氏の物語である。 雨宿りの最中の情交。 契りをかわすまでにはならないばあいもある。 情交の対象になりえぬ老婆に会う物語がある。 男が出会う女は、生身の人間でなく、妖怪の類であることもある。 風雅な雨宿り。 【雨】 不吉な雨。 人を死にいたらせる雨。 雨の夜の怪物。 雨の夜に、狸が人間を妖怪と見間違う。 雨を牢に入れる。 雨音。 雨の日は、屋外で働く職人や商人は仕事にありつけず、賃金を得られない。 火の雨。 【蟻】 人間が蟻に変ずる。蟻が人間に変ずる。 蟻の恩返し。 蟻の援助。 蟻の会話。  勤勉な蟻。 蟻の国。 蟻の大群が、不特定多数の人々を襲う。 蟻を踏みつぶさない。 【あり得ぬこと】 「枯れた植物が芽吹く・根づく」という、あり得ぬことを想定し、それが実現する。 「調理した食物が芽吹く・根づく」という、あり得ぬことを想定し、それが実現する。 「馬に角が生え、烏の頭が白くなる」という、あり得ぬことを想定し、それが実現する。 あり得ぬはず、と安心していたことが意想外の形で現実化する。 あり得ぬことが起こった、との妄想を抱く。 あり得ぬことを想定する。 あり得ぬもの。 あり得ぬ不幸。 【アリバイ】 空間の操作。犯行時刻に、犯人が現場から遠く離れた場所にいるように見せかけて、にせのアリバイを作る。 時間の操作。実際に犯行が行なわれた時刻の数分〜数十分後に、見せかけの犯行時刻を設定して、犯人がにせのアリバイを作る。 真のアリバイを証明しようとする。 無実の人のアリバイを、嘘を言って否定する。 ある事件のアリバイを証明すると、別の事件の犯人であることがバレてしまう。 目撃者の愚かな錯覚から、犯人の意図せぬアリバイが成立してしまう。 【泡】 泡から女神が生まれる。 泡から子供が生まれる。 神龍が吐いた泡。 泡から陸地ができる。 泡から島ができる。 死んで泡になる。 泡がきっかけで、殺人が露見する。 【暗号】 古代の暗号。 数字による暗号。 点字を利用した暗号。 「e」の字が多用されることを手がかりに、暗号を解読する。 暗号解読器。 暗号による日記。 【暗殺】 王や大臣などの暗殺。 剣をふるったり鉄槌を投げたりして暗殺を試みるが、失敗する。 銃撃して暗殺しようとするが、その瞬間相手が動いたので失敗する。 暗殺の未遂。 暗殺を恐れる人。 暗殺を事故死として取り扱う。 【安楽死】 自殺をはかった人を安楽死させる。 不治の病気の人を安楽死させる。 安楽死専門の医者。 安楽死を願って失敗する。 【言い間違い】 あわてたため・馴染みのない言葉のため、などの理由で言い間違いをする。 二人が互いに相手の言葉に連られて、言い間違いをする。 言い間違いが、隠れた願望をあらわす。 俳優の言い間違いから、戯曲の題名が決まる。 雨が降ってきた時の、言い間違いの物語。 言い間違いを聞いた人が、さらに言い間違える物語。 【息】 息を吐いて神を生み出す。 息を吐いて邪神を生み出す。 息を吐きかけて、毛や土に生命を与える。 息を吐きかけて、死者を蘇生させる。 息を吐きかけて生命を奪う。 息を吐きかけて盲目にする。 熱い息と冷たい息。 長い時間、息をとめることができる。 自分で息をとめて死ぬ。 息を失った男。 「雨女」が、人の寝息に乗じて体内に入り込む。 「山地乳(やまちち)」が、人の寝息を吸い取る。 亀の呼吸。 【生き肝】 生き肝(あるいは心臓)は、さまざまな病気に著効のある薬である。 猿の生き肝・猿の心臓。 猿の化身が「心を与えてもよい」と言う。 雷公の生き肝。 生き肝でなく、胎児そのものを必要とするばあいもある。 【異郷訪問】 海の彼方もしくは海底。 山中。川の上流を尋ねて到る。 地底。 天上。 異郷を再度訪れようとしても道がわからず、二度と行くことができない。 いつもとは違う道から町へ入ったために、異郷をかいま見る。 少年少女の異郷訪問。 近代小説の中の異郷訪問。 夢の中の異郷訪問。 夢の中で、他人が異郷へ旅するありさまを見る。 一般に、異郷は一度だけ訪れるものであるが、異郷を三度訪れる物語もある。 【生霊】 憎しみの念が生霊となる。 生霊が人間に手助けを請う。 生霊を落とすことはきわめて難しい。それに比べれば、死霊を鎮める方が幾分か容易である。 室内で鏡に映した姿が、遠方で友人たちに目撃される。 逆に、身体から抜け出た魂が、遠方の鏡に映し出される。 鏡と魂は、密接な関係がある。 にせの生霊。 【生贄】 神や怪物に人間を捧げるならわしがあったが、英雄がこのならわしをやめさせる。 【遺産】 莫大な遺産を相続する男。 遺産を分配する。 遺産分配の争い。 亡兄や亡父の遺産をねらう男。 余命いくばくもない人の遺産をねらう女。 死亡保険金を、家族への遺産とする。 【石】 女が石に化す。 石が女に化ける。 男が石に化す。 動物が石に化す。 妖怪や魔物が人間を石にする。 人間・妖怪などが、石から誕生・出現する。 動かぬ石。 石を用いて子供が生まれるのを遅らせる。 売買の対象。高く売れる石・売れない石。 堅い石を、刀で切る。 人間だと思って刀で真っ二つに切ったら、それは石だった。 虎だと思って矢を射込んだら、それは石だった。 人に害をなす石。 英雄に触れたため、不思議な力を持つようになった石。 夜泣き石。 成長する石。 岩が玉と化して、人間世界を経験する。 石とパン。パンと石。 石を食べる。 【石つぶて】 ねらい通り当る石つぶて。 銭形平次の「投げ銭」は、没羽箭張清の石つぶてにヒントを得たものである。 当てるつもりがないのに、偶然当る石つぶて。 婚礼の夜、その家に近隣の人が石つぶてを打ちつける風習。 石を投げつけて人を殺す。 【一妻多夫】 一人の女が、四人の夫を持つ。 一人の女が、五人の夫を持つ。 前世の五人の夫が、現世では五人の子供に生まれ変わる。 一人の女が何度も結婚し、そのたびに夫に死別する。 幽霊の一妻多夫。 何人もの男と関係を持ったので、生まれた子供の父親がわからない。 父親が誰なのか、つきとめようとする。 『氏子中』の変型が『町内の若い衆』。 【一夫多妻】 一人の男が大勢の女を妻として、自分の邸内に住まわせる。 王や皇帝は、数十人あるいは百人以上の妻を持つ。 妻一人と愛人九人。 【糸】 糸は、男女を結びつける働きをする。 女の足指に結びつけた長い細紐を、男が引く。 謎の夫の着物に長い糸をつけ、それをたどって正体を知る。 無関係な像に糸を結びつけ、「像に犯された」といつわる。 糸をたどって、目指す人のあとを追う。その居所をつきとめる。 迷路の道しるべとしての糸。 迷路のごとき穴に糸を通せという難題。 身体から糸が出る。 糸だと思ったら視神経。 死に臨んだ人と、仏を結ぶ糸。 瀕死の肉体と、魂(あるいは幽体)をつなぐ糸。 多量の糸を繰り出して、相手を縛る。 糸くり(=糸つむぎ)の労苦。 【井戸】 井戸に毒龍が棲む。  井戸から亡霊が出る。 テレビに映る井戸から亡霊が現われ、テレビの外へ出て来る。  井戸の中の呪宝。  井戸に子供が落ちて死ぬ。 井戸に落ちて現世では死ぬが、死後の世界では幸せになれる。 井戸に落ちて死んだ蠍(さそり)が、夜空の星になる。 井戸に落ちる子供を救う。 「井戸に貴重品を落とした」と、子供が嘘を言う。 井戸に身投げする。 井戸に死体を隠す。 井戸のもとの男女。 井戸のもとで遊んでいた子供たちが、成長後、夫婦になる。 井戸端に落とした財布がきっかけで、男女が深い関係になる。 井戸の底が異郷に通ずる。 火を吐く井戸。 【従兄弟・従姉妹】 従兄弟・従姉妹の結婚。 従兄弟・従姉妹の恋。 二人の従姉妹。 従兄妹間の結婚の結果、子供にその影響が出ることがある。 【犬】 犬は人間の忠実な家来である。 飼い主とともに死んでいく犬。  飼い主である老人の自殺を思いとどまらせる犬。 人間の言いつけに忠実な余り、死んでしまう犬。 犬が人間に危険を知らせる・宝のありかを知らせるなど、貴重な情報をもたらす。 犬の教えを人間が悟らない。その結果、犬もしくは人間が死ぬ。 人間が犬に転生する。 仔犬を見て、友人の転生した姿であることを知る。 仔犬を見て、自分の父母の転生した姿かもしれぬ、と思う。 犬を見ても、恋人の転生した姿であることを知らない。 人間が犬に転生し、その犬が再び人間に転生したのが、現在の自分かもしれぬ、という空想。 人間の魂が犬に乗り移る。 犬が人間に変身する。 人間を襲う犬。 人間の後をつける犬。 犬が狼に化す。 犬頭人身。 人面犬身。 「犬」の文字。 【犬婿】 犬婿と人間の娘。 犬が、人間の娘二人と交わる。 犬が、人間の女大勢と交わる。 犬婿と人間の娘の間に生まれた子供たち。 直接交わることなく、犬の気を受けて娘が懐妊。 娘が犬婿を殺す。 犬頭人身の子供たち。 犬が人間に化けて女と交わる。 【猪】 神の化身である猪。 猪狩り。 猪の牙で殺される。 猪に追われて逃げる。 猪に似せた石。 死者たちが猪の肉を食べる。 【入れ替わり】 瓜二つの兄弟姉妹が相談して、互いに入れ替わる。 王子と乞食が衣服を交換したために、入れ替わってしまう。 殿様と百姓が衣服を交換したために、入れ替わってしまう。 少年少女の身体と心が入れ替わる。 少年少女の行動が入れ替わる。 二人の男の心が入れ替わる。 対立する二大国の思想が入れ替わる。 二軒の家の住人が入れ替わる 月と太陽が入れ替わる。 【入れ子構造】 入れ子構造の人間たち。 入れ子構造の人間たちの正体。 入れ子構造の女性器。 入れ子構造の動物。 入れ子構造の記憶。 入れ子構造の戯曲。 夢の中の夢の中の夢。入れ子構造の夢。 入れ子構造の変型。現宇宙が、新しい高次の宇宙を産み出し、高次の宇宙はまた、より高次の宇宙を産み出す。それがどこまでも続く。 【因果応報】 他に対して行った善行・悪行が、後に同じような形で自分の身にふりかかる。 前世で他に対して行った善行・悪行が、現世で同じような形で自分の身にふりかかる。 親の因果が子に報う。 偶発的な事故のばあいにも、因果応報の理がはたらく。 【隠蔽】 悪事を、より大きな悪事によって隠蔽する。 音・声を、より大きな音・声によって隠蔽する。 強い金色光が、金の簪を隠蔽する。 死に関わる臭気を、より強い臭気で隠蔽する。 一つの殺人死体のまわりに大勢の戦死者を配置して、殺人を隠蔽する。 言いにくい報告事項の前後に別のことがらを述べて、目立たなくする。 殺人を駆け落ちに見せかける。 女性スパイの存在を隠蔽するため、架空の男性スパイをでっち上げる。 【飢え】 飢えた人と出会う。 飢えのために、食物ではないものを食べる。 食物ではないもののように見せかけて、こっそり食物を食べる。 飢えのために、人間の肉を食べる。 人間の肉を食べた者は、身体のまわりが光る。 飢え死にする。 食物が見えていても食べられず、死んでしまう。  【魚】 失った物が魚の腹から見つかる。 魚の腹から珠が出る。 魚の腹に物を隠す。 大魚の腹の中の人。 大魚の腹の中の像・人形。 人間が魚に化す。 魚が人間の姿となって命乞いをする。 蟹が命乞いをする物語もある。 魚女房。 魚が船に飛び入る。 笑う魚。 【誓約(うけひ)】 ある条件を設定し、その成否によって、願いが叶うかどうか、吉か凶か、運命を占う。 日本でも外国でも、しばしば石が誓約(うけひ)に用いられる。 自分がどのような行動をするかを決める。 自分の将来を占うが、曖昧な結果に終わる。 【兎】 兎と亀の駆けくらべ。 兎とはりねずみの駆けくらべ。 自分の身を犠牲にする兎。 傷ついたものをさらに傷つける兎と、傷を負った上にさらに傷つけられる兎。 走る兎。 【牛】 人間が、死んでから牛に生まれ変わる。 仏が牛に化身する。 牛の導き。牛の教え。 牛面人身。 人面牛身。 半牛半人。 神が牛に変身して乙女をあざむく。 神が乙女を牛に変身させる。 人間が牛になる、との迷信。 牛を運ぶ。 闘牛。日本の闘牛は、牛と牛が闘う。 スペインの闘牛は、牛と人間が闘う。 【後ろ】 後ろ手。一般に、相手に背を向けて何事かをするのは呪いのしぐさである。 後ろへ投げる。 自分自身の後ろ姿。 【嘘】 畑(畠)を掘らせるための方便としての嘘。 苦しい旅を続けさせるための方便としての嘘。 子供たちの命を救うための方便としての嘘。 巧みな嘘のために、自分の目も信じられなくなる。 嘘に対して嘘で対抗する。 嘘と知りつつだまされたふりをする。 だまされたふりをして人をだます。 いつも嘘をついているので、本当のことを言っても信用されない。 いつも演技をしているので、本心を吐露しても信用されない。 嘘つき男・嘘つき女の最後の嘘。 嘘のつきくらべ。 嘘ばかり言う動物。 嘘の嫌いな子。 嘘のつもりで言ったことが、偶然、現実と一致した。 嘘を言ったら、それが実現した。 【歌】 歌を詠んだ功徳で、病気が治る。 命と引き換えに、名歌を詠む。 歌をうたったために、神のもとへ召される。 歌を詠んで、日照りに雨を降らせる。 逆に、歌を詠んで雨を止める。 歌の力で、夫の愛を取り戻す。 歌が、男女の縁を結ぶ。 歌を詠んで、罪を許される。 女が歌を詠んで、貴人の怒りを鎮める。 歌によって、願いが叶う。 入水する時に歌を詠んで身を沈める。 覚悟の入水でなく、思いがけず水に落ちた時も、歌をうたう。 歌合。 歌合戦。 歌のとおりに殺人事件が起こる。 虚構の歌。名所の歌を、現地へ行かずに作る。 虚構の新体詩。友人の体験を聞いて、現地へ行かずに詩を作る。 歌による占い。 神の歌。託宣歌。 【歌問答】 Aが歌の上の句または下の句を提示し、Bがそれに合う句をつける。 死者と生者の歌問答。 【うちまき】 米をまいて魔物を追い払う。 小さな魔物に米粒をまくのに対し、大きな鬼に豆をまいて追い払う。 豆の代わりに金銀をまく。 小判をまく。 神など尊いものを拝む時にも、うちまきをする。 魔性のものが、うちまきのごとく多くの石つぶてを投げつける。 豆を投げつける。 砂をまく。 【宇宙人】 宇宙人が地球を攻撃する。 地球に来襲した火星人の、意外な弱点。 地球に来襲したX星人の、意外な弱点。 宇宙人と地球人との、友好的な出会い。 宇宙人が、高度な文明を持つ自分たちの星へ、地球人何人かを招く。 地球人が「自分は宇宙人だ」との自覚を得る。あるいは、宇宙人が「自分は地球人だ」との自覚を得る。 恐ろしい宇宙生物。 宇宙怪獣。 相手に合わせて姿を変える、宇宙の知的生命体。 宇宙人と地球人の結婚。 【うつほ舟】 女がうつほ舟に入れられ、海に流される。 女とその子がうつほ舟に入れられ、海に流される。 男または怪物が、船で流されることもある。 米俵に乗せて流される。 化人(けにん)が、うつほ舟に乗って去る。 【馬】 馬と結婚の約束をする娘。 馬と夫婦になる娘。 馬と交わる女たち。 馬が動かなくなる。 人食い馬と英雄。 他人の馬に乗っていたため、間違って殺される。 馬の教え。 観音の化身の白馬。 天翔ける馬。 八本足の馬。 人を馬にする術。 「人を馬にする」と称するが、できない。 人を馬に変えるふりをして、人妻と交わる。 「馬を人に変え、人を馬に変える」と称して、酒食や金品をだまし取る。 馬人間。 馬が埴輪に変わる。 駿馬と駄馬。 馬乗り。 【海】 海の水のからい理由。 海の水すべてを収める器。 海の水を退ける・干上がらせる。 海の水を飲み干す。 海を汲みつくそうとする・埋めつくそうとする。 海上を歩く。 海の世界は、そのまま天上世界に通じている。 海の底に都がある。 海の下の町には、おにぎりもお菓子もある。 海に沈む宝。 海に沈んだ宝を引き上げる。再び取り戻す。 海の中から、不死の甘露などを得る。 海の名前の起源。 【占い】 未来の禍福を知る。 多くの人の目前に迫った危難を、人相や手相から読み取る。 【占い師】 自分の災難を予見できない占い師。 にせ占い師。 占い師の死後。 【瓜二つ】 間違えられたり、身代わりになったりする。 神・仏・悪魔などが、ある人間と瓜二つに化ける。瓜二つの人間を造る。 瓜二つの集団。 人が死ぬ前に、その人と瓜二つの人物が現れる。 瓜二つの二人と思わせて、実は一人が二役をする。 現身と霊姿と思わせて、実は一人が二役をする。 【ウロボロス】 自分の尾をくわえて円環状になる蛇。 自分の尾をくわえて回転する犬。 自分の排泄物を主食とする虫。 自分の持つ瓶(びん)の中へ落ちる男。 自分の身体から自分自身を産み出す女。 ヘビ・ガマ・ナメクジ、三すくみのウロボロス。 【運命】 定まった死の運命。 定まった結婚の運命。 定まった貧窮の運命。 悪い運命が将来予想される時、その悪運を早目に終わらせてしまう。 運命をそのまま受け入れる。 運命の転換。Aが受けるはずの非運を、Bが受ける。 悪い運命は、他の人や物に移すことができる。 悪い運命を他の人に移すことなく、自ら引き受ける。 悪運の兆し。 不運と思われた出来事が、実は幸運に結びついていた。 【絵】 絵に描かれた動物が抜け出て、生きた動物となる。 絵に描いた動物に瞳を点ずると、生きた動物となって抜け出す。目をつぶすと、絵に戻って抜け出なくなる。 絵から抜け出る女。 絵から出てくる大津波。 絵の中に入り、また出て来る。 絵の中に入ったきり、出て来ない。 絵の中の舟に乗り、画中に姿を消す。 絵の中の舟に乗らず、俗世にとどまる。 絵姿が老いてゆく。 本物そっくりの絵。 気まぐれに描いた絵にそっくりの人物。 迫真の絵姿。 威力ある絵姿。 ある時には名画と見えたものが、別の時に見ると印象が異なる。ある人が名画と見るものを、他の人は無価値なものと見る。  名画の贋作。 世間に認められぬまま病死する天才画家。 【映画】 映画の怪。 映画のスクリーンの中に入りこむ。 映画の登場人物が、観客にむかって呼びかける。 映画の登場人物が観客に呼びかけ、スクリーンから出て来る。 映画をそのまま事実として体験する。 サイレント映画とトーキー映画。 映画の中の時間進行と、現実の時間進行(=上映時間)を、おおむね一致させる。 結末が二種類ある映画。 映画を愛する人々。 映画を作れない、という内容の映画。 物語の最後に、それが現実のことではなく、映画の撮影だったことが示される。 試写会。 【ABC】 ABC順の書写。 ABC順の読書。 ABC順の殺人。 【円環構造】 最上・最強・最良のものを求め、巡り巡ってまたもとの出発点にもどる。 最強のものを求めて転々とするが、もとの出発点にはもどらない。 しりとりを続けて、もとの出発点にもどる。 役所のたらい回し。 夢から現実にまたがる円環構造。 過去の世界へ送り込んだ自分自身と、年月を経てふたたび対面する男。 三十年後の自分自身を殺し、それから三十年を経て、かつての自分自身に殺される女。 【演技】 道化を演じる。 臆病者のふりをする。 破戒僧のふりをする。 悪人のふりをしてわざと殺される。 いつわりの恋。 【宴席】 夜、怪物や死者などが宴会を開く。 敵味方入り交じっての酒宴。闘いの場となる。 宴席に招かれざる客が現れる、または凶事が起こる。 婚礼の妨害。 宴席にもたらされる訃報。 宴席での哲学的議論。 秘密の仮装パーティ。 【尾】 尾のある人。 動物の尾を女の髪と思う。 女の髪を動物の尾と思う。 動物の尾に火をつけて罰する。火をつけた側の所有物が、そのために燃えてしまう。 多くの狐の尾に火をつけ、敵の畑を焼く。 多くの牛の尾に火をつけ、敵軍を攻める。 猿の尾の短いわけ。 窓の外を通り過ぎない尾。 猫の尾と星の尾。 罪人の身体に尾を巻きつけて、罪の軽重を示す。 大蛇の尾から太刀を取り出す。 【王】 王を求める民。 神々が、治めるべき国を分配する。 王が息子たちに、治めるべき国を分配する。 王位を譲り合う。 二人の王が並び立つ。 世俗の王と宗教の王が並び立つ。 王の衣裳を着れば、王と見なされる。 衣裳がないのに、衣裳を着ていると思い込む王。 【狼】 神や動物を呑みこむ狼。 肉親に化けて、人や動物を呑みこむ狼。 狼男。 狼男のふりをする。 凶暴な男が、その性格にふさわしく、狼に化身する。 狼頭人身。 狼に育てられる子。 狼の恩返し。 狼の恩知らず。 狼の口に腕を入れる。 【大晦日】 大晦日は、神・鬼・霊など超自然的存在と出会う時。または死と再生の時。 大晦日にやって来る怪物。 大晦日は、祝祭の時である。 大晦日は、経済活動の区切り目である。 【教え子】 教え子が教師を慕う。教師が教え子を愛する。 教師が教え子と関係を持つ。 教師が教え子と結婚する。 十二人の教え子。 家庭教師とその教え子。 小説家とその教え子。 教え子たちが、退職した「先生」をいつまでも慕い続ける。 教え子たちが、教師を追放する。 教え子の事故死。 夜間中学の教え子たち。 【おじ・おば】 叔母と甥が結婚する。 (血のつながらぬ)叔母と甥が関係を持つ。 叔父と姪が関係を持つ。 叔父と姪の性関係は、二十世紀の日本では禁忌である。 仲の良い叔父と姪。 殺人犯の叔父が、姪を殺そうとする。 甥がおば(伯母または叔母)を捨てる。 姪がおば(伯母または叔母)を捨てる。 甥が伯父を救う。 叔父と甥が戦う。 おば(伯母または叔母)の身代わりとしての姪。 叔母への慕情。 【夫】 働かぬ夫。 夫になることさえ面倒がる怠け者。 まぬけな夫。 自慢の夫。 夫さがし。 夫の真の姿。 夫の弱点・秘密を、妻や愛人が敵に教える。敵にあたるのが、妻のもとの夫・あるいは新しい夫、というばあいもある。 夫が告白した悪事を、妻が別の人に語る。 夫の秘密。重婚。 夫の秘密。妻以外のもう一人の女。 夫の秘密。物乞い。 夫の帰還・生還。 夫の愛情を試す。 天国の神を、夫とする。 【夫殺し】 女が愛人と共謀して、自分の夫を殺す。 女が、三人の夫を死にいたらしめる。 夫殺しの未遂。失敗。 女が、夫のみならず、夫との間に生まれた子供までも殺す。 【落とし穴】 落とし穴を掘って、敵対する人物を落とし入れる。 落とし穴に落ちない。 自分が掘った落とし穴に、自分が落ちる。 【踊り】 やめられない踊り。 踊りの褒美。 猫の踊り。 踊る猫が魔力を用いて、主人に福をもたらす。 雀の踊り。 死体の踊り。 天人の舞い。 カーニバルの踊り。 踊り子との恋。 【鬼】 人を喰う鬼。 女を喰う鬼。 女が鬼と化す。 僧が鬼と化す。 鬼と戦う。鬼を退治する。 鬼退治の供。 鬼が美女に化ける。 鬼の面をかぶって人を脅す。 百鬼夜行。 心の優しい鬼。 【斧】 斧を水中へ落とす。 水中へ落とした斧を探して、死者と出会う。 水中へ落とした斧を、神様が拾ってくれる。 水中へ落とした斧が浮かび上がる。 斧男。 【親孝行】 老父・老母に孝行を尽くす。 親の罪を訴える孝行息子。親の罪を隠す孝行息子。 罪を得た親を、子供が命を捨てても救おうとする。 究極の親孝行。 【親捨て】 老親を山へ捨てる。 老親を野へ追い遣る。 老親を老人ホームへ入れる。 老親が子供たちに冷たくされ、自ら家を出る。 『リア王』の日本版。 『リア王』の二十世紀庶民版。 息子が反省して老親を連れ帰る。 棄老国で孝行息子が老親をかくまう。  親を売る。 【泳ぎ】 風呂で泳ぐ人。 プールで泳ぐ老人。 いくつものプールを泳いで家へ帰る。 泳ぎの名手。 【恩返し】 人間に救われた動物が後に恩返しする。 命の恩人への償い。 【恩知らず】 動物が、人間から受けた恩を仇で返す。 人間が、動物から受けた恩を仇で返す。 動物の、動物に対する忘恩。  人間の、人間に対する忘恩。 恩知らずのように見えて、実は恩返しをしていた。 恩返しの心が、やがて恩知らずの心に変わる。 【温泉】 温泉発見。鳥獣に教えられたり、夢告を得たりして温泉を見出す。 温泉の功徳。温泉に入って死者が蘇生する・病者が回復する。 湯治しても、病気が治らない。 温泉地で、生と死について考える。 温泉治療で、心機一転をはかる。 温泉の楽しみ。 温泉に入って死ぬ。 温泉と男女。 温泉の起源。 【貝】 貝の中から美女が現れる。 貝が動物に転生し、さらに人間に転生する。 貝から他の生類に転生できるかと期待したが、できなくなった。 螺(ほら)貝が龍になる。 貝が気を吹き出す。 珍しい貝。 猿が、貝に手をはさまれる。 猿田毘古神(サルタビコノカミ)が、貝に手をはさまれる。 人が、貝に指をはさまれる。 【開眼】 唾による開眼。 尿による開眼。 歌の徳で開眼。 仏の力で開眼。 天使の教えにより開眼。 宝珠などの呪具で開眼。 手術による開眼。 開眼手術後の幻滅。 【怪物退治】 英雄が怪物を退治する。 女が怪物を退治する。 二十世紀の怪物退治。飛行機から銃撃する。 二十世紀の怪物退治。化学兵器を用いる。 二十世紀の怪物退治。爆発物を呑み込ませる。 幽霊退治。  乱暴者が三つの怪物を退治に出かけるが、三つめの怪物は彼自身だった。 怪獣 対 怪獣。 【蛙】 蛙婿。 蛙女房。 王子が蛙を妻としたが、その正体は人間だった。 蛙と月。 蛙の行動を見て、悟りを得る。 毛の生えた蛙が家に現れたら、誰かが死ぬ。 蛙の形をした霊・魂。 蛙の形をした子供。 愚かな蛙。 巨大なガマガエル。 巨大になろうとするヒキガエル。  【顔】 醜貌の神。 醜貌の男。 醜貌の女。 醜貌ゆえ帰される花嫁。 女性の美しい顔に傷がつく。 顔を傷つけ、人相をわからなくする。 動物の顔に人間の身体。 顔の取り替え。 死顔。 目・耳・鼻・口のない顔。のっぺらぼう。 【鏡】 鏡に映るのが自分の姿と悟らない。 逆に、鏡に映る姿を見て、真の自分の姿を悟る。 複数の人間が一つの鏡に各自の姿を映しつつ、それを他人だと思う。 自分の姿を鏡に映して見てはいけない。  遠くて見えないものも、手もとの鏡に映しとれば見ることができる(実際には、不可能なことである)。 直接見てはいけないものを、鏡に映して見る。 鏡が将来を映す。 鏡が真の姿・隠れた姿を映す。 鏡が真実を告げる。  鏡が偽りを映し出す。 鏡が醜いものを強調して映す。 鏡が鬼を退治する。 地獄の審判の鏡。 鏡は異郷への入り口である。 鏡が、遠くの国にいる人の姿を映し出す。 鏡が、はるかな天界や地獄界の有様を映し出す。 鏡を水中に沈める。 鏡が割れる。 鏡に映らない。 鏡面に文字を書く。 半鏡。鏡を二つに割って、夫婦が半分ずつ持つ。 合わせ鏡。 鏡の反射。 鏡に執念が残る。 【書き間違い】 人名を書き間違えて、不幸を招く。 外来語を書き間違えて、不幸を招く。 思いがけない事故で、書いた文字が別の字になってしまう。 心の中の思いが、書き間違いとしてあらわれる。 活字の誤植。 文字を知らないので、当て字を書いてしまう。 書き落とした点を、あとから書き足す。 【架空の人物】 現実には存在しない人物を設定する。 空想家が出会う現実の女性。 【隠れ身】 術を使って姿を消す。 頭巾・蓑・扇などの呪具を身につけて、姿を消す。 薬を飲んで姿を消す。 保護色の衣裳を身につけて、姿を消す。 人から「見えない」と言われてそれを信じ、隠れ身になったと思い込む。 姿を見えなくされ、声も出せなくされてしまう。 隠れている場所をわからないようにする。 【影】 影が身体から独立する。 影が、身体とは異なった形に変ずる。 身体から独立した影、と思ったら、それは他の人間が影のふりをしていたのだった。 身体から影を奪われる。 霊体には影がない。 仙人には影がない。 影を持たない存在が、影を得ようとする。 影から逃れられない人。 影取り沼。 ふかに影を呑まれる。 影を踏まれる。 影で居場所がわかる。 影が財宝のありかを示す。 影となった女。姿は目に見えるが実体がなく、手でとらえることはできない。 【駆け落ち】 結婚を許されぬ男女が、一緒に逃げる。 駆け落ちの未遂。 「駆け落ち」と言って娘をだまし、誘拐する。  【賭け事】 鬼と賭け事をして勝つ。 死神と賭け事をして負ける。 死神と賭け事をして勝つ。 賭け事に負けて王国を失う。 賭け事に負けて財産を失う。身代をつぶす。 魔術など超自然的方法で賭け事に勝とうとする。 賭け事に絶対負けぬ法。 勝っても負けても結果は同じ賭け事。 【影武者】 武将の身代わりとなって、敵の目をあざむく。 六人の影武者。 死んだのは影武者で、本物は生きているかもしれぬ、との期待。 二十世紀の政治家にも、影武者が用いられることがある。 【過去】 過去を隠す・消す。 油断・慢心などにより、ついうっかりと過去の悪事を語る。 改心して過去の悪事を白状する。 乱心して過去の悪事を白状する。 過去の悪事が露見したと思いこみ、問われもせぬのに白状する。 過去の犯罪行為の経験が、現在の問題解決に役立つ。 現在の問題解決が、過去の犯罪行為の経験にもとづくことが露見する。 【笠(傘)】 雨に濡れる人に、笠を与える。 雨や雪に濡れる仏像に、笠をかぶせる。 女に傘を貸す。 傘に入って来る女。 傘に入って来る死者。 傘をさして空を飛ぶ。 古い傘から発生する妖怪。 傘を知らぬ里。 【重ね着】 鎧の上に衣を着る。 逆に、法衣の上に鎧を着る。 死装束の上に羽織を着る。 重ね着が喪服のごとく見える。 他国の軍服の下に、自国の軍服を着る。 青色の軍服の上を、灰色の土埃がおおう。 【火事】 大火事。 愛人に逢うために、自分の家に火をつける。 詩作のために、火事を起こす。 不滅の美である金閣寺を焼いて、世界を変えようとする。 「神は愛なり」の教えは嘘だと言って、教会に放火する。 放火によって寺は焼けたが、仏の画像は無事だった。 厩(うまや)の火事。 ビル火災。 火事を喜ぶ人。 火事を予言する。 火事の前兆の、赤い着物・赤い旗。 【風】 風の神。 神が風を起こす。 人が術を用いて風を起こす。 狐が風を起こす。 風を静める。 竜巻で、吹き飛ばされる家。 暴風にも、びくともしない塔。 風と風邪。 風邪の神。  風邪の用心。 風を受けて妊娠する。 風の吹く日に男女が契りを結ぶ。 【仮想世界】 自分が生まれなかった世界。 現実世界の歴史と仮想世界の歴史。 【片足】 片足・一本足の神。 一本足の人形。 傷を負って片足になった人。 片足が動物の脚。 片足の登山。  片足に靴をはき、片足は裸足の男。 【片腕】 怪物の片腕(前足)を取る。 怪物が、取られた片腕を取り返しに来る。 片腕を取られる人。 片腕を取られたので、銀の腕をつける。 片腕を取られたので、鉄の鉤(かぎ)をつける。 片腕に鉤手(フック)をつけた殺人鬼。 若い女の片腕。 自らの臂を切り落とす。 子供たちの片腕を切り落とす。 【片目】 片目を射る。左目を射る・射られるという物語が多い。 片目を抉る。 自らの片目をくり抜く。 片目が抜け出る。 神像の目を取る。 二人の片目を足し合わせれば一人の両眼と等しい、という計算。 片目の魚。 【語り手】 信頼できない語り手。語り手が必ずしも事実を語らない。 越境する語り手。物語の語り手(あるいは作者)と作中人物が交渉する。メタ・フィクション。 語り手である「筆者」と、作中人物「医師リウー」が、同一人物であることが最後に明かされる。 語り手の「わたし」が、物語に登場する人物「ムーン」であることが、最後に明かされる。 語り手が死んでしまうが、また生き返る。 語り手が死者である。 語り手が犯罪者であることが、最後に明かされる。 語り手が遠い昔に殺人を犯したことが、最後に明かされる。 【河童】 河童婿。 河童駒引き。 河童の詫び証文。 相撲をとる河童。 厠にひそむ河童。 河童が命を棄てて、雨を降らせる。 河童の皿。 河童の教え。 河童の変形の「ガッパ」。 河童の世界のアダムとエバ(=イヴ)。 【蟹】 蟹が蛇を殺す。 蟹が蛇を殺して、人を救う。 蟹が蛇を殺して、娘を救う。 蟹が蛇に味方する。 悪人は死後、蟹に生まれ変わる。 平家蟹。 島村蟹。 毛蟹。 蟹缶詰の「献上品」。 【金】 金が人の手から手へ巡る。 金(あるいは宝物)が夫・妻・および第三者の間を巡る。 金の使いこみとその穴埋め。 借金とその返済。 金を落とす・拾う。 不正直な落とし主。 大金を拾うが、それを届けず自分のものにしてしまう。 金を落とした人と拾った人の縁組み。 金を払わずに、その音だけを聞かせる。 「金を与える」という言葉だけを聞かせる。 金(かね)が蛇に変じ、蛇が金(かね)に変ずる。 金(かね)を蛇とすりかえる。 宗教者にとって、金銭は毒蛇同然のものである。 乗り物の代金。 にせ金。 使えないお金。 せんべいのお金。 賞金稼ぎ。 金が金を呼ぶ。 【鐘】 水底の鐘。 鐘の中に入る・隠れる。 鐘をついて時を知らせる。 鐘をつかない。 無間(むげん)の鐘。 【金貸し】 冷酷な金貸し。 金貸し殺し。 金貸しの妾。 金貸しは、死後地獄へ堕ちる。 【壁】 壁を通り抜ける。 壁を通り抜けて、少し過去へ戻る。 壁に穴を開ける。 人間が壁に変身する。 人間が壁にはりついて一体化する。 行く手をふさぐ壁。 外地で出会った「塗り壁」。 【鎌】 人の命を奪う鎌。 鎌では切れぬ不死身の身体。 鎌で風を切る。 【神】 デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)。苦境にある作中人物の所へ現れて、一瞬のうちにすべてを解決してくれる神。 苦境にある作中人物に救いの手を差しのべる、貴人・超人など神のごとき存在。 神が祭りを要求する。 神が苦を訴える。 神の姿を見たために、罰せられる・死ぬ。 選ばれた人だけが神の姿を見、言葉を聞く。 二つの神を一所に置く。 二人の神。隣りの宇宙の神が、この宇宙の神に会いに来る。 人間が神の扮装をする。 人間が「神」と呼ばれ、共同体を支配する。  人間が神を傷つける。 人間が神を助ける。 人間の夫婦が、後年(または死後)に神や仏となって、祀られる。 帝王の父親は、神でなければならない。 御神体。 神の存在を信じるか否か? すべてが神。 唯一絶対神。 【髪】 髪や髭には不思議な呪力があり、その主の生命を保障する。 いったん切り落とされ、剃り落とされた髪も、時間がたてばまたもとどおりに伸びる。 髪が伸びることを利用して、秘密の通信をする。 髪を剃れば通信文があらわれるのではないか、と疑う。 美しい髪を手に入れ、その主である女をさがす。 女の長い髪。 女の長い髪が蛇に変わる・蛇に見える。 神が、女の髪を蛇に変える。 不義をはたらいたため、髪を切られる。片側の髪だけ切られることがある。 人に魔法をかけるために、その髪の毛を用いる。 髪が逆立つ。 女の髪を売る。 死んだ女の髪を売ろうとする。 金髪。 緑色の髪。 赤毛。 辮髪(べんぱつ)。 【神がかり】 神が人間の口を通して様々なことを告げる。 神がかりによって、死者がでる。 いつわりの神がかり。  いつわりの神がかりのつもりが、本当の神が乗り移る。 子供に神がかりする理由。 神がかりになった巫女の思い。 【神隠し】 神・魔物などが人を連れ去る。 【雷】 人間が雷に化す。 雷と性交。雷雨は天と地の性交であり、それに促されて男女も契りを交わす。 雷の嫁になる。 武器としての雷。 作り物の雷。にせの雷。 雷雨で占う。 【亀】 亀を放生すると、後に恩を返してくれる。 亡き母の霊が亀と化して子を救う。 亀の甲羅は有用なものである。 亀の寿命は一万年。 世界を支える亀。 「世界を支える亀」を支えるものは何か? 【蚊帳】 蚊帳の中の男女。 蚊帳つり狸。 蚊帳を知らない人。 魔を追い払う蚊帳。 【烏(鴉)】 烏(鴉)の色が黒くなったわけ。 白い烏(鴉)。 烏(鴉)からさまざまな情報を得る。  烏(鴉)が、人の死を知らせる。 烏(鴉)が、死体のありかを教える。 逆に、烏(鴉)が死体の匿(かく)し方を教える。 烏(鴉)が、軍勢を導く。 人間が烏(鴉)になる。 烏(鴉)と太陽。 【川】 神が矢となって川を流れ下り、女と結婚する。 川を流れ下る木の枝が女に変じ、漁夫の男と結婚する。 神の子が川を流れ下り、人間に育てられる。 神々の世界の情報が川を通じて知られる。 男女をへだてる川。 川を流れ下るさまざまなもの。 川をさかのぼるもの。 川を流れ下る物を見て、その上流を尋ねる。 川に合図の物を流す。 冥府の川。 川の向こうの死者。 霊界にある忘却の川。 現世にある忘却の川。 川の水を飲んだために、妻に逢えなくなる。 天界の河が地上に降下する。 【厠】 厠へ流れ入る矢。 厠にかけた弓矢。 厠に出る幽霊。 厠に出る妖怪。 厠に住む鬼。 厠から手が出て、尻をなでる。 厠から手が出て、人を引きずりこむ。 厠にいる人が、天狗にさらわれる。 厠にいる人を襲って殺す。 厠にいる人を覗き見る。 厠へ流し捨てる。 【観相】 人相を見てその将来を卜する・非凡な相を見抜く。 死相を見る。 【観法】 水想観。心の中に水を観じ、自身とその周囲をすべて水にしてしまう。 柏の木を観想すれば、柏の木が現れる。 次の例は、禅師が「無」を観じていたために、その姿が見えなかったのであろう。 食物も、その本体は不浄のものである。 【木】 矢・槍・櫛などが地面に根づいて、木になる。 髭や毛が、木になるばあいもある。 木を植える。 切れぬ木。 切れぬ木を切り倒す。 切ってはならぬ木を切ったために、死ぬ。 役立たずゆえ切られない木。散木。 移転・移植できぬ木。 切り倒しても動かぬ木。 人間が木に変わる。 愛し合う男女が、ともに木に変わる 自殺者が、地獄に堕ちて木に変わる。 人間が、生きた木ではなく、棒に変わる。 神が、木から人間を造る。 神が、木を人間の背骨にする。 木の精。木の化身。 形を変えて生き続ける木。 木の上には神仏が現れる。 木の股。 木にはさまれる。 木の下に埋まっている死体。 世界をささえる木。 生命に関わる木。 遠くからは見えるが、近寄ると見えなくなる木。 縁結びの木。 木につかまる人との問答。 【記憶】 失われた過去の記憶がよみがえる。 戦争による記憶喪失。 戦争による記憶喪失+交通事故による記憶喪失。 交通事故による記憶喪失。 記憶と前世。 記憶力の弱い人。 他人の記憶の侵入。 未来の記憶が過去に逆行する。 記憶を持つ人と持たぬ人。 誕生以来のすべての記憶を持つ人。 生前および死後のあらゆる記憶を保持する人。 擬似記憶。 【聞き違い】 死に瀕した人間の苦悶の声音を、鼾声や風音と聞き違える。 ある語を、発音の類似した別の語に聞き違える。 葉が風に吹かれる音を、羽ばたきと聞き違える。 聞き違いから新しい文学作品を創造する。 【偽死】 身を守るため・極秘の活動をするために、死んだと見せかけて姿を隠す。 仮死状態になる薬を飲む。 実際に死んでしまい、そのあと薬で蘇生させるものもある。 戦場で死体のふりをして、身の安全をはかる。 路傍で死体のふりをして、旅人を襲う。 死んだふりをして、葬儀費用を得る。 死んだふりをして、家族の反応を見る。 はじめ他殺死体のふりをしておいて、後に自殺する。 【貴種流離】 高貴な生まれの人が、青年期に達してから肉親と別れ辺境をさすらう。 インドには夫婦ともに流離する物語がある。 【傷あと】 愛のあかしの傷あと。 イエス・キリストの聖痕(スティグマ)。 同一人・同一存在である証拠としての傷あと。 仏像に残る証拠の傷あと。 犯人の身体に残る証拠の傷あと。 柱に残る証拠の傷あと。 刀傷と鉄砲傷。 女性器を見て、傷あと・傷口と思う。 殺された人のそばに、その殺害者が近寄ると、死体の傷口から血が流れ出る。 優れた騎士が触れると、それまで治らなかった傷口がふさがる。 冥府で受けた傷が、蘇生後の身体に残る。 【犠牲】 一人が犠牲になって、大勢の人々を救う。 神の子が犠牲になって、全人類を救う。 ロボットが犠牲になって、地球人類を救う。 動物が自分の身を犠牲にして、人間を救う。  人間が自分の身を犠牲にして、動物を救う。 動物が自分の身を犠牲にして、仲間の獣たちを救う。 自分の安全のために、他人を犠牲にする。 【狐】 狐が、友人・知人などに化ける。 雄狐が姫君を恋し、女に化けて近づく。 狐が化ける現場を、人間が目撃する。 人間なのに、狐が化けたもの、と見なす。 人間が狐を化かす。 人間が狐に化ける。 狐が人を助ける。 狐の教え。 狐に生まれ変わる。 虎の威を借る狐。  狐火。 【狐女房】 狐女房。『鶴女房』など一般の異類婚姻譚と異なり、夫の「のぞき見」による破局ではなく、犬のために女房が去ることが多い。 人間の妻が、狐になってしまう。 人間に害をなす妖狐。 【きのこ】 笑い茸(たけ)。 毒きのこ。 毒きのこを食べて死ぬ人と、死なない人。 言葉を発し、動き回るきのこ。 きのこ人間。 きのこに転生する法師。 紫色のきのこ。 【器物霊】 古い器物や金銀などが、動き出したり物を言ったりする。人間の形をとることもある。 甕(かめ)の変化(へんげ)。 傘の変化(へんげ)。 箒の変化(へんげ)。 器物霊が人にとりつく。  器物霊が、自分の素性を知らない。  【偽名】 名前を偽る。 有名作家の名前を借りる。 【肝だめし】 男たちが集まり、魔物がいるかもしれぬ場所まで一人で行けるか、肝だめしをする。雨の夜に行なわれることが多い。  女たちの間で肝だめしが行なわれることもある。 肝だめしに出かけた男が、何でもないことにおびえて死んでしまう。 三階の窓に腰掛けて酒が飲めるか、賭けをする。 【吸血鬼】 男の吸血鬼。 女の吸血鬼。 吸血鬼たちが、ただ一人残った人間を殺す。 吸血鬼たちが、ただ一人残った人間をそのまま生かしておく。 美女の血をしぼって飲む。  酒呑童子の化身である蚊が、人の血を吸う。 恙(つつが)虫は、人の血を吸って殺す。 【九十九】 九十九夜、男が女のもとへ通う。 九十九夜、人を雇って通わせる。 九十九夜、女が男のもとへ通う。 銭九十九文。 九十九の首。 九十九の谷。 九十九対一。 【九百九十九】 千人を目指す企ての、九百九十九人までが済み、千人目に特別な人物と出会う。 九百九十九足のぞうり。 九百九十九対一。 【経】 経が人を救う。 経のおかげで寿命が延びる。 経の功徳で蘇生する。 前世で経典の文字を喰ったり焼いたりした報いを、現世で受ける。 経文を聞かせて蛇を改心させる。 経文を誦して開かぬ掌を開く。 経文を唱えて身投げする。 経文の読誦で犬の獣欲を鎮める。 生臭い魚が、清浄な経典に変わる。 文字のない経典。 【狂気】 狂気に陥る英雄。 自らの身を守るため、あるいは本心を隠すため、狂人のふりをする。 神罰による狂気。 狂気に陥る女。 狂人として隔離される男。 狂気から正気に戻って死ぬ男。 狂人に仕立て上げられる人。  【競走】 他者の力を利用して、先に目的地に着く。 計略を使って、競走相手を遅れさせる。 わざと競走に負ける。 古代の戦車競走。 二十世紀の自動車競走。 速く走る者が、ゆっくり歩く者に追いつけない。 言葉のトリックによって、速く走る者がゆっくり歩く者に追いつけない。 追いつくだけで良いのに、追い越してしまう。 【兄弟】 兄弟が争う。対立する。 母親が、二人の息子のうち、兄よりも弟の方をかわいがる。 逆に、母親が兄をかわいがり、弟につらく当たる。 兄弟が殺し合う。 誤解により、兄弟の一方がもう一方を殺す、あるいは殺そうとするが、誤解が解け和解する。 兄弟と一人の女。 兄弟が、不和の原因である女を殺す。 弟に及ばぬ兄。 浦島の弟。 【兄妹】 血のつながらぬ兄妹。 異母兄妹。 異母兄妹の双方と関係を持つ女。 兄妹同然に育った、仲の良い男女。 「兄妹である」と称して、実は夫婦。 婚約者を「兄」と呼ぶ。 【兄妹婚】 神々はしばしば兄妹(姉弟)で結婚する。 人間の兄妹間の結婚。 孤島に漂着した兄妹の結婚。 片方あるいは双方が、兄妹であることを知らずに結婚する。 兄が結婚を望むが、妹が拒否する。 想像上の兄妹婚。 姉弟婚。 男女の双子の結婚。 異父兄妹・姉弟の結婚。 異母兄弟・姉妹の結婚。 一人の姫君が、異母兄および異父兄から思慕される。 【凶兆】 誕生時の凶兆。 結婚に関する凶兆。 不倫の恋に関する凶兆。 外出に関する凶兆。 軍事行動に関する凶兆。 凶兆を認めず無視するのが、賢明な判断。 凶兆だと思ったら、ただの取り越し苦労だった。 【共謀】 二人以上が共謀して、対立や争いの演技をする。 二人が共謀して、欲深な人間から金をだまし取る。 殺す側と殺される側が共謀し、暗殺事件を作り上げる。 十二人が共謀して演技をする。 茶番。仲間同士が示し合わせ、大勢の人がいる所で仇討ちや身投げなどの騒ぎを起こし、最後にオチをつけて、「何だ。芝居だったのか」と皆を驚かせ面白がらせる趣向。江戸時代後期に流行した。 仇討ちの茶番を利用して、人を殺す。 【巨人】 英雄が巨人と一騎討ちする。 巨人の国を訪れる。 城に住む巨人。 巨人の身体から世界ができる。 巨人の身体の破片が害虫や雑草になる。 日本古代の巨人。 巨人(=神)が地形を変える。 人を驚かす大入道。 【去勢】 自らを去勢する。  父親が、息子の手で去勢される。  敵によって去勢される。  刑罰としての去勢。 カストラート(去勢歌手)。 【金(きん)】 動物が黄金を排泄する。 「金を排泄する」と称する馬。 人間の身体が黄金のかたまりに変ずる。 金鉱探し。 金粉を女の全身に塗る。 金箔を女の全身に貼る。 金箔を男の全身に貼る。 【金貨】 動物が金貨を排泄する。 鳥が金貨を産む。 人間の口から金貨が出る。 全身で金貨に触れる。 金貨だと思ったら、黄色の銅貨にすぎなかった。 【禁忌】 秘密を言ってはならない禁忌。 一言も口をきいてはいけない禁忌。 問うてはならない禁忌。 ふりかえってはならない禁忌。 見るなの禁忌。 「見るな」ではなく、「見せるな」の禁忌。 聞いてはいけない禁忌。 最後まで聞くと死ぬので、途中で逃げる。 一定期間(七日間)待たねばならない禁忌。 一定期間(三年間)待たねばならない禁忌。 一定期間(千日間)待たねばならない禁忌。 伝統的な物語では、禁忌は侵すべからざるもので、侵せば不幸な運命に陥る。しかし禁忌そのものが虚構で、これを侵しても無事な人間たちの物語が、やがて出てくる。 【禁制】 禁漁。 鹿の殺生禁断。 女人禁制の寺。 女人禁制の山。 女人禁制の島。 花見の禁制。 帯剣の禁制。 禁酒法。 切支丹の禁制。 敵性音楽の禁制。 神父は、罪を犯した人の懺悔を聞いても、その内容を他言してはならない。 【空間】 小さな口の中に大空間がある。 ポケットの中に大空間がある。 小さな球体の中に宇宙空間がある。 遠く離れた空間に瞬時に移動する。テレポーテーション。大阪から九州まで行く、という物語がある。 江戸から九州へ空間移動する。 縮地法。 電気装置を用いて、物質を瞬時に遠方へ送る。 ワームホール(=時空のトンネル)を通り抜ける。 この宇宙から、他の宇宙へ飛ばされる。 空間の移動と思っていたら、時間の移動だった。 空間と時間とは別のものではない。 時空間を見る。 劇が演ぜられる舞台上では、空間と時間は自在に転換する。 空間の起源。 【空襲】 空襲で家を焼かれる。 空襲の夜の男女の出会い。 女を連れて空襲から逃げる。 天から降って来て、町を焼き滅ぼす火。 大空襲に遭った経験を小説にする。 【偶然】 偶然に、だれが泥棒かを言い当てる。 偶然に、泥棒の行動を言い当てる。 偶然、同時刻に二つのことがらが起こる。 近代の小説は、事件の必然的な展開を重視するので、一般に、偶然のできごとを避ける傾向がある。しかし、次のような例もある。 近代以前の物語では、偶然というより、神仏の不思議なはからい、として語られる。 深い縁のある人と偶然出会う。 仕組まれた偶然。 【空想】 自分が住みたい家について、あれこれ空想するが、実現できない。 将来開きたい店について、あれこれ空想する。 犯罪を空想するが、実行せずにおく。 犯罪の空想があまりに真実に近づいた結果、ほんとうに実行してしまう。 犯罪を空想しただけなのに、自首する。 空想にのめりこみ、現実と区別がつかなくなる。 空想にのめりこんで、大事なものをこわしてしまう。 一方的な思い込み。 殺されるのではないか、との思い込み。 【盟神探湯(くかたち)】 真実を述べていれば、熱湯に手を入れる・熱鉄を手に握るなどしても火傷をしない。 【草葉】 草は、傷ついたものを回復させ、死んだものを蘇生させる力を持つ。 草は消化剤や下剤となる。 逆に、草が生命を奪う話もある。 忘れ草と忘れな草。 【くじ】 くじを引いて神意を問う。 くじを引いて、犠牲になるべき人間を選ぶ。 毎年一度、くじを引いて、死ぬべき人を選ぶ風習。 くじを引くと、「当選者なし」が神意であったことがわかる。 神意を問う「くじ」ではなく、民意を問う「入れ札(=投票)」。 宝くじ。 富札(とみふだ)。 宝くじに当選したことによって、性格が変わる女。 当たりくじを見せびらかす。 赤ん坊の名前をくじで決める。 【薬】 媚薬を、葡萄酒と間違えて飲む。 葡萄酒を、「媚薬だ」と偽って売りつける。 【口】 口に何かが入って妊娠する。 口に何かが入る、と夢見て妊娠する。 口に何かが入り才能を発揮する。 口に何かが入ると夢見て才能を発揮する。 口から食物を出す。 死者の口から花が咲く。 口から、良いもの悪いもの、いろいろなものが出てくる。 口は魂の出入りするところである。 他人の魂を、口から飲みこんでしまうこともある。 「真実の口」に片手を入れる。 海鼠(なまこ)の口の起源。 【唇】 唇の動きを見て、言葉を読み取る。読唇術。 コンピューターが、人間の唇の動きを読み取る。 二つ折りの半紙を女性にくわえさせ、唇の形を写し取る。唇紋。 百唇譜に唇紋を収集し、女たちから金をゆすり取る。 【口封じ】 重要な秘密が外部にもれないように、その秘密を知る人物を殺す、または殺そうとする。 AがBから貴重な情報を聞き出す。Aはその情報を独占しようと考え、Bが他の人物に情報を教えぬよう、Bを殺して口を封じる。 妻が、自首しようとする夫を殺して、その口を封じる。  口止め料。 【靴(履・沓・鞋)】 遠くへ行ける靴。飛行靴。 いくらでも金貨が入る底なしの靴。 人の形見や身代わりとしての靴。 下駄も、人間の身代わりと認められた。 王が、靴の持ち主の女を捜して、妻とする。 靴の持ち主の女を捜すと、豚だった。 靴の持ち主を捜されると困るので、他人の靴と取り替える。 焼けた鉄靴をはかされて、踊り狂う。 意志にかかわらず、踊り続ける靴。 靴をきっかけに、親交を結ぶ。 【国見】 神が、天上から地表の国土を見下ろす。 天皇が、山などの高所から国土を望見する。 神の国見と天皇の国見。 国見をして、特定の家に目を止める。 国見をして、住むべき土地を決める。 帝王ではなく大泥棒が、山ではなく楼上から、都の春景色を眺める。 宇宙の高みから、地球を見下ろす。 宇宙の高みから下界を見下ろすと、青く見える。 【首】 身代わりのにせ首。 首(頭部)をつけかえる。 脳髄の半分をつけかえる。 男の首と女。 女の首と男。 首提灯。 首を胴体から切り離して復活を防ぐ。 胴体から離れても、動き・飛び・噛みつく首。 胴体から離れても、ものを言う首。 首を切断して持ち去り、死体の身元がわからないようにする。 AがBを殺して首を切断し、Bの死体にAの衣服を着せて、殺されたのはAであるかのように見せかける。 AがBを殺して首を切断し、Cが殺されたかのように見せかける。 首なしの人。 首が、鏡や水に映らない。 竹のこぎりで首をひき切る。 首と西瓜。 首売り。 【首くくり】 首くくりの松。  首をくくった人間のその後。 幽霊が人を首くくりに導く。 縊死するまでの時間。 絞首台にぶら下がる死体。 【熊】 神の化身の熊。 熊が人を助ける。 牡熊と人間の娘の間に生まれた子供。 牝熊と人間の男との結婚。 熊の化身の女と、天帝の子との結婚。 熊の皮を着た男。 熊の皮を着た女。 【雲】 雲に乗って空を飛ぶ。 雲の上の天上世界へ行く。 池に映った雲の上に乗る。 縄で雲を引き寄せる。 大蛇の上にある雲。 天子たるべき人の上にある雲。 紫の雲。 雲が乙女を隠す。 雲が都市を隠す。 雲の起源。 八色の雲。 原子雲。 雲を見て占う。 【蜘蛛】 蜘蛛の糸が人の身体を引き上げる・引きずりこむ。 蜘蛛に化す。 蜘蛛の教え。 人間の髪の中に、蜘蛛が卵を産みつける。 人間の皮膚に、蜘蛛が卵を産みつける。 【繰り返し】 同じ仕事をいつまでも繰り返し、終わる時がない。 繰り返し苦を受ける。 繰り返しの生と死。 繰り返し同一事を主張する。 旧世代が新世代に追われ、新世代はまた、新々世代に追われる。世代交代の繰り返し。 【クリスマス】 クリスマスの前夜に、霊的な存在が訪れる。 クリスマスの前夜に、宇宙人が訪れる。 クリスマスの日の出来事。 クリスマス・イヴの死。 クリスマス前後の物語。 クリスマス・プレゼント。 クリスマス・プレゼントの起源。 【系図】 近親婚などにより、複雑な系図が発生する。 奇妙な家族関係・複雑な系図が近親婚の結果であることを、賢者が察知する。 前世から現世にまたがる系図。前世の母子が現世で夫婦になる。 息子が、「転生した父」の母と関係を持つ。これは、孫と祖母が夫婦関係を結んだ、と見ることができる。 現実では夫婦だが、夢の中では母子になっている。 複雑な系図に関する難問の答えがわからない。 「姉」とも「叔母」とも呼ばれる人。 少年が自家の系図を見て、祖先の名をはずかしめぬよう発奮し、努力する。 【契約】 延寿・不死など、死を遠ざける契約とその盲点。 金銀・財産などの獲得、あるいは賭けなどに関わる契約と、その盲点。 いったん契約どおりにした後、その契約を無化するようなことをする。 【けがれ】 死者の国を訪れた後には、水でけがれを洗い落とさねばならない。 穢(きたな)いことを聞いた後には、水で耳を洗う。 「罪」も、けがれと同様に、水で浄化されると考えられていた。 死のけがれを恐れて、死体のそばに近寄らない。 死者のけがれにふれた時には、身を慎まねばならない。 産のけがれ。 犬の出産も、けがれになる。 【下宿】 青年が、下宿先の娘や人妻に恋をする。 青年が、親類・縁者の家に寄宿し、その家の娘に恋をする。 青年が、寄宿先の娘と性関係を持つ。 殺人者かもしれぬ青年下宿人。 近世の、商家に住みこみで働く男が主人の妹や娘と恋仲になる物語が、下宿の恋の原型であろう。 厄介な下宿人たち。 下宿の主人夫婦。 【結婚】 相手の財産を目当てに結婚する。 財産目当てに結婚しようとするが、それを見抜かれる。 財産目当ての結婚と思われるのがいやで、求婚しない。 相手が財産家であることを知らずに結婚する。 相手が財産家だと思って結婚したら、そうではなかった。 結婚の障害。敵対する二つの家族(あるいは二つの集団)に属する男と女。 結婚の障害。宗教の相違。 結婚の障害。人種の違い。  結婚の障害。病気。 結婚の策略。自分が目当ての人と結婚するために、その妨げとなり得る人をまず結婚させてしまう。 結婚の策略。娘を結婚させるために、寡夫の父親が、自分も再婚すると嘘をつく。 結婚の策略。偽装結婚。 結婚の策略。両親が息子をあざむき、息子の望む花嫁とは別の女性と結婚させる。 結婚の妨害。娘が父と再婚相手の仲を裂くため、策略を用いて、父の心を別の女に向けさせる。 A家の息子とB家の娘が結婚することによって、A・B二つの家系が一つに結び合わされる。 娘の結婚を機に、大家族が解体する。 結婚の無効。 期限つきの結婚。 【月食】 鬼が月を食べると、月食(月蝕)になる。 巨人が月を呑むと、月食になる。 月と太陽が交合すると、月食になる。 【決闘】 銃による決闘。 剣や槍による決闘。 拳銃と刃物の決闘。 毒杯を飲む決闘。 相手が肉親や親友と知らずに決闘する。 決闘ののち、親友・主従になる。 戦場での一騎討ちと和解。 決闘を取りやめて仲直りする。 三人で行なう決闘。 六人対四人の決闘。 四人対三人の決闘。 【仮病】 病気のふりをして、他人の家へ泊り込む。 病気のふりをして、家に居残る。 病気のふりをして、夫を遠方へ追いやる。 瀕死の病人のふりをして、不実な男に結婚を承知させる。 瀕死の病人のふりをして、殺人犯を油断させる。 病気による意識朦朧をよそおって、殺人を犯す。 病気のように見せかける薬。 【剣】 剣を手に入れ、一人前の英雄としての資格を得る。 一人の英雄だけが、石や木から剣を引き抜くことができる。 少年または青年が、父の残した剣を手に入れる。 剣を失い、英雄としての生命力を失う。 剣の由来・その流伝。 抜けない剣を用意しておいて、真剣と取り替える。 毒剣と普通の剣とが入れ替わる。 切れぬ剣。 ただ一度だけ使える剣。 自ら動く剣。 【幻視】  死を知らせる幻像を見る。 火事の幻視と、本物の火事。 翌日の火事を、前もって幻視する。 自分の網膜にある血管が見え、赤い炎を幻視する発作が起こる。 【原水爆】 原爆投下。 原爆の恐怖。 原水爆実験の影響で、怪獣が現れる。 原爆爆発の衝撃で、怪獣が現れる。 被爆による白血病。 被爆による性的不能症。 【恋文】 恋文が第三者の手に入る。 にせの恋文を出して、人をからかったり試したりする。 いつわりの恋文を受け取った人が、差し出した人に好意を持つ。 生前にもらった恋文が気がかりで、幽霊が成仏できない。 女郎が、「あなたと夫婦になります」との起請文を、三人の客に与える。 自分自身に宛てて恋文を書く。 知らずして、自分宛ての恋文を書く。 恋文の返事。  【恋わずらい】 男が一目見た女に恋して、病臥する。  男が夢で見た女に恋して、病臥する。 男が恋わずらいのあげく、死んでしまう。 恋わずらいして死んだ男が、神になる。 娘が恋わずらいして、死ぬ。 娘が恋わずらいして、熱病になる。 対象不定の恋わずらい。  【交換】 衣服を交換する。 仕事の道具を交換する。 握り飯を果実の種と交換する。 影あるいは魂と交換に、富を得る。 耳と交換に、金を得ようとする。 舌と交換に、人魚が脚を得る。 目と交換に、食べ物を得る。 片目と交換に、貴重な情報を得る。 身体(=命)と交換に、貴重な情報を得る。 自分の子供の身体と交換に、天下を取ることを願う。 交換を繰り返して、だんだん価値の高い物を手に入れる。 交換を繰り返して、だんだん価値の低い物と取り替えていく。 価値の低い物と交換したと思ったら、そうではなかった。 古い品を新品と交換する。 契りを交わした二人が互いの持ち物を交換する。 馬を交換する。 名前を交換する。 交換殺人。 【洪水】 大洪水のために世界が水没する。 大洪水で生き残った兄妹が夫婦になる。 洪水で流される人。 洪水で流される動物。 近代小説の中の洪水。 洪水の幻覚。 【声】 超自然的な声。神霊の声。 家族や恋人の呼び声。 持ち帰りを禁ずる声。 破壊的な叫び声。 声色を使う。 声の吹き替え。 かき消される声。 声の大きさと距離。 【古歌】 古歌を知らない。 古歌にある言葉。 【誤解】 ある語を、同音の別の語と誤解する。または、同語を別の意味に取り違える。 田舎の人が言葉を知らないために、誤解がおこる。 誤解して動物を殺す。 誤解により人を殺す。 「人を殺した」と誤解する。 誤解して自殺する。 誤解により心労死する。 誤解により戦争が起こる。 【五月】 五月生まれの人。 五月の節句。 五月の禁忌。 五月一日に見えるもの。 【心】 悪心から善心への転換。回心。 人為的に、悪心を改造して無害な人格にする。 改心するが、予期せぬ結果に終わる。 心の転換。悪人への変身。 心の転換。女が自らの本性に目覚める。 心の転換。禅の悟りを開く。 心の転換。瞬時に白けた気分になる。 緊張の後の気のゆるみ。油断。 他人の心を読み取る。  「さとりの化け物」とは逆に、自分の考えていることが、すべて他人に筒抜けになってしまう。 他人の心を鏡のように映す。 心は物理的制約を受けず、超スピードで移動することができる。 無心で行なったことが奇跡を起こす。 善悪がわからぬ幼児の心。 潜在意識の思いが、実体となって現れる。 【子殺し】 父親が、家のためあるいは使命のために、子を殺す。 主君の若君や主君の妻の身代わりとするために、家来が自分の子を殺す。 子が、わざと親から殺されるように仕向ける。 子を殺そうとして、天に助けられる。 神の命令によって父親が我が子を殺そうとする。 母親が子を殺す。 親が、自分の子と知らずに殺す。 芸術家である父親が、娘を見殺しにする。 【子捨て】 生まれてまもない嬰児を捨てる。 捨てられた子が、母と幸福な再会をする。 捨てられた子が母と再会し、父の霊と対面する。 捨てられた子が、霊となって母と再会する。 捨てられた子が、再び同じ両親のもとに生まれる。 少年を捨てる。 神が子を捨てる。 子供を捨てるか否かの選択。 錯覚して、あるいは判断力を失って、赤ん坊を川へ捨てる。 厄年に生まれた子を捨てるならわし。 【琴】 琴は神を招く道具である。 琴の奇瑞。 心乱れれば琴も乱れる。 琴の音で異変を知る。 琴の音が声をかき消す・声が琴の音をかき消す。 西洋の琴の起源。 大樹から琴を作る。 船から琴を作る。 【言挙げ】 神をないがしろにする言葉を発して、神の怒りをかう。 妖怪・幽霊の類も、侮ることはできない。 言挙げして殺される。 言挙げして悪魔に呪われる。 神や霊などの問いかけに対し、「やれるものならやってみろ」と答えるのも、言挙げの一種であろう。 問いかけに怖れて逃げた人は無事で、「やれるものならやってみろ」と挑戦した人は刺された。 【言忌み】 特定の言葉を嫌い、使わないようにする。 特定の言葉を嫌い、他の言葉で言い換える。 特定の言葉を口にしたら、罰金を取られる。 逆に、特定の字を口にしたら田楽が食える、という話もある。 特定の言葉を口にしなければ、大金を得られる。 特定の言葉を口にして、出入り差し止めになる。 特定の言葉を口にすると、死ぬ。 正月一日に念仏を唱えるのは、慎むべきである。 【言霊】 威力ある言葉。 たとえ話をして相手から言質を取る。 嘘の話をして相手から言質を取る。 取り消された言葉。 取り消せぬ言葉。 出まかせに言ったり書いたりした言葉が、現実のものになる。 事実と反する嘘を言うと、その言葉が本当になってしまう。 妖怪を話題にすると、妖怪が現れる。 冗談で言った言葉を相手が真にうけ、重大な結果をもたらす。 【五人兄弟】 五人兄弟の物語。 五人の兄弟分。五人組。 太陽・月・火・風・霧の五兄弟。 【五人姉妹】 五人姉妹の物語。 仲の良い五人の少女たち。 【小人】 小さな身体の男が物語の主人公になり活躍する。 小さな身体の娘が物語の主人公になる。 小人の国。 森に住む小人たち。 夜のうちに仕事をしてくれる小人。 夜のうちに魚を届けてくれる小人。 夜中に歌い踊る小人たち。 海から来る小人。 【殺し屋】 殺し屋に仕事を依頼したことを後悔する。 殺し屋に追われる人。 足を洗おうとする殺し屋は、殺される。 【再会】 夫婦が別れ別れになり、何年かののちに再会する。 戦乱で別れた夫婦・恋人が再会する。 慕い合う男女が思いがけぬ所で再会する。 再会した時、夫が零落している。 再会した時、妻が零落している。 賊によって海に沈められた人物が無事に陸に上がり、賊と再会する。 男が、水死したはずの女と再会する。 男が、死んだはずの恋人その他の人物たちと、再会する。 父と子が再会する。 母と子が再会する。 敵にあたる人と再会する。 再会・対面を拒否する。再会しても、すぐに姿をくらます。 過去を知る人と再会し、その人を殺す。 母親が、再会した息子を殺す。 【さいころ】 二つのさいころに六の目を出す。 三つのさいころに六の目を出す。 五つのさいころに一の目を出す。 さいころ賭博。  さいころを、わざと壺皿の外へ転がし、しかもそれに気づかないふりをする。 【最初の人】 最初に見る人・出会う人が深い縁のある人である。 最初に行く人・来る人が、犠牲になって死ぬ。 神の慈悲で、最初に来る人が死なずにすむ。 人間を犠牲にせぬよう、動物を最初に行かせる。 最初に手にする物が幸運のきっかけになる。 生まれて最初に出会うもの。 最初の人になろうとして失敗する。 【裁判】 名裁判。 不可解な裁判・信頼できぬ裁判。 珍判決。 かつて関わりのあった男女の一方が裁く人、他方が被告となって、法廷で再会する。 裁く人自身の悪事が明らかになる。 魔女裁判。 陪審員たち。 友人間の紛争の裁きと、敵同士の争いの裁き。 【催眠術】 女性に催眠術をかけていたずらをする。 催眠術にかかったふりをする。 相手を見つめて催眠状態に陥れ、死に追い込む。 催眠攻撃とその撃退。 夢遊病者に暗示をかける。 催眠をほどこして病気を治療する。 催眠状態から死にいたる。 催眠状態が死後も続く。 催眠状態で前世を思い出す。 催眠状態で、UFOに誘拐された体験を思い出す。 【坂】 二人の人物が坂で出会う。 坂で怪事に遇う。 坂でころぶ。 冥界への出入口は、坂道である。 胸坂(むなさか)。 海にも坂がある(「さかいめ」・「境界」の意味であるという)。 坂道で敵を防ぐ。 【逆さまの世界】 金銀が嫌われ、いやしめられる世界。 時間が逆転する世界。 昼と夜、覚醒と夢が逆転する世界。 美醜の基準が逆の世界。 親子関係が逆転する世界。 逆さまに見る世界。 動物が人間を支配する世界。 前後さかさまに着せられた衣服。 逆立ちの死体。 逆立ちの刑罰。 逆さまの柱。 逆さまの屏風。 【作中人物】 戯曲の登場人物が、「自分たちは作者によって創り出された存在だ」と自覚している。 小説の登場人物が、「自分たちは作者によって創り出された存在だ」と自覚している。 マンガの登場人物が、「自分たちは作者によって創り出された存在だ」と自覚している。 舞台上で死んだ作中人物も、劇が終われば元気な姿で観客に挨拶する。 物語を読む少年が、その物語の作中人物になる。 自分の行動の記録が他者の手で物語として記されたため、物語中の人物になったことを知る。 作中人物が作者に憑依する。 作中人物が作者のもとから逃げ出す。 作中人物が作者を叱る。 作中人物たちが、現実世界を批判する。 小説の作中人物(「男」)が、その小説を読んでいる読者(「彼」)をナイフで殺す。 小説の作中人物(実は実在人物である「わたし」)が、その小説を読んでいる読者(「あなた」)をナイフで殺す。 読者が小説家に、作中人物の死の取り消しを要求する。 【桜】 人間の祈りによって、桜の花の寿命が延びる。 人間が命を捨てて、桜の木の寿命を延ばす。 身代わりに死んだ人の形見の桜。 お姫様が首をつった桜。 桜の樹の下の屍体。 桜は人の心を狂わせる。  桜の化身。 【酒】 酒を用いて怪物を倒す。 酒宴の席で敵を倒す。 酒を用いて人間を堕落させる。 酒が国を亡ぼす。 水が酒に変る。 酒に水をまぜて売る。 水に酒をまぜて売る。 酒の起源。 酒は情欲をかきたてる。 大酒飲み。どれだけ酒が飲めるか試す。 千日の酒。 アルコール依存症。 酔っぱらい。 酒の上の争い。 【さすらい】 一箇所にとどまれず、諸方をさすらう人。 神や悪魔の呪いを受けたために、永遠にさすらいを続けねばならない人。 さすらいの旅人が、立ち寄った土地の悪人たちを退治して、去って行く。 【猿】 猿が人間を助け、怪物と闘う。 猿婿。 猿神退治。 猿女房。 猿が、網を打とうとして失敗する。 猿が、男根を亀に噛まれる。 猿が、陰嚢を木にはさまれる。 ずる賢い猿。 猿が人間に転生する。 人間が猿に転生する。 人間が猿化する。 猿は人間の前段階の存在。 猿のたたり。 【三者択一】 三つの人生の中から一つを選ぶ。 三人の女神の中から、もっとも美しい一人を選ぶ。 三つの箱の中から一つを選ぶ。 三人の男の中から、本物を一人見分ける。 三人の女の中から、本物を一人見分ける。 三人の中から、身分高い大名を一人を見分ける。 大勢の中から、身分高い奥様を一人見分ける。 三つの指輪のうち、どれが本物かわからない。 三人の子供のうち、誰が自分の子かわからない。 【残像・残存】 殺人の被害者が最後に見た光景が、網膜や角膜に残像として保存される。 生きている人間の網膜にも、目に見た光景が焼きつけられることがある。 美しい景色を網膜に保存しようと思う。 鏡に映した美人の像が残る。 声の残存。 笑いの残存。 【三度目】 三度目にはじめて成功する・願いが叶うなど、前二回とは異なった状況になる。 三度目も、一度目・二度目と同様に不運が続く。 一度目はうまく行く。二度目は失敗する。三度目に意外な結末をむかえる。 弟子が師を三度裏切る。 【三人兄弟】 三人兄弟の末子が成功する。王になる。 三人兄弟も父親も死ぬ悲劇。 二十世紀の三人兄弟譚。 三つ子の兄弟。 三人の義兄弟。 三匹の動物兄弟。 【三人姉妹】 三人姉妹の末子が物語の主人公となり活躍する。あるいは末子が幸福になる。 三人姉妹も父親も死ぬ悲劇。 近代劇の三人姉妹。 生者と死者に分かたれた三人姉妹。 【三人の魔女・魔物】 三人の魔女や女神は、一般に姉妹と考えられているが、原典では必ずしも明確に姉妹と記されないものもある。 口裂け女も、三人姉妹だと言われることがある。 三人一組の神や妖怪。 三人一組の神や妖怪。 【三人目】  三人目に出会う人。 三人から嘘を言われると、それを本当と思ってしまう。 三人から「お前は病気だ」と言われると、「自分は病気だ」と思ってしまう。死んでしまうことさえある。 【死】 離れた所にいる家族や親友の死の知らせ。 差し迫った死の知らせ。 死の誤報による悲劇。 死の誤報による運命のいたずら。 死の誤報を利用し、過去と縁を切って新たな生活を始める二人。 自分が死んだことに気づかない。 「お前は自分が死んだのに気づかないのだ」と言われて、「自分はもう死んでいるのかもしれない」と思う。 生きている人間は本当は死んでいて、死んだ人間が本当は生きているのかもしれない。 死の起源。 自ら望まぬ限り死なない。 立往生。 一日おきに死んで無になる男。 【死因】 瀕死の人に手を加えて、真の死因を隠す。 自殺を殺人に見せかける。 自殺を決心した妻が、「夫の手にかかって死のう」と考える。 殺人を自殺に見せかける。 「何者かに殺された」と思われる死体があったが、それは人為的に引き起こされた死ではなく、自然のいたずらによるものだった。  殺人事件と思われたが、実は、性の戯れのあげくの死であった。 事故死を「殺人だ」と思い込む。 病死と見えたものが、その裏に配偶者の殺意があった。 病死をよそおった他殺と見せかけて、実は本当の病死。 事故死か自殺かわからない。 死に方によって、死後行く場所が異なる。 【塩】 食物の味付けに必要な塩。 塩を運ぶ。 塩で水を清める。 「塩」という言葉を嫌う。 【鹿】 鹿から人間の娘が生まれる。 鹿の死体を隠しておいたら、横取りされた。 銭を隠しておいたら、鹿の死体に変わっていた。 白鹿は神の化身。 白鹿と思ったら白い石だった。 鹿の内臓には、解毒作用がある。 子鹿の成長物語。 【仕返し】 相手から受けた仕打ちと同様のことをやり返す。 相手から批判された言葉をそのまま投げ返す。 通常とは異なる仕返しのやり方。 【時間】 異郷で短期間を過ごしてから帰ると、現世では、異郷での十倍・百倍あるいはそれ以上の年月が経過していた。 現世にありながら、ある人物が二十年ほど歳をとる間に、その人物をとりまく環境は三百年以上経過する。 逆に、異郷で長い時間を過ごしたと思っても、現世ではわずかな時間しかたっていなかったというばあいもある。 不死の神々の住む異郷では、人間世界とは時間のあり方が異なる。 夜なのに明るくして時間をごまかす。 時間の経過が、意識の中では実際よりもはるかに短く感じられる。 時間を貯蓄する。 時間を止める。 超高速で思考・行動したために、時間が止まったように見える。 心の中の時間が止まる。 【時間旅行】 未来へ旅行する。 近未来へのタイム・リープ。 タイム・スリップして、過去の世界へ行く。 自ら願って、過去の世界へ移り住む。 過去を変えるために、未来からやって来る。 変わりそうな過去を、変わらないように元に戻す。 一匹の蝶の死という些細な出来事が、その後の歴史を大きく変える。 組織的に過去を改造する。 痙攣(けいれん)的時間旅行者。 【死期】 自分の死期を前もって知り、予言する。 自分の死期を予言するが、その一日前に死ぬ。 釈迦如来入滅の日である二月十五日に死にたい、と願う。 聖徳太子薨去の日である二月五日に死ぬだろう、と予言する。 自分の死期を、死神や神霊などから知らされる。 他人の死期を知り、それにあわせて行動する。 【識別力】 嗅覚。 触覚。 聴覚。 味覚。 聞き酒。 視覚。わずかな差異を見分ける。 一目見るだけで、多くの物の数がわかる。 五官によらぬ識別。 一切を識別しない。達人の一つの姿。 【地獄】 地獄で繰り返し責め苦を受ける。 西欧世界の地獄でも同様に、繰り返しの責め苦がある。 地獄の責め苦から救われる。 現世にある地獄。 地獄を造る。 亡者が地獄へ来てくれない。 地獄絵を描いた後に死ぬ。 肉体は現世にとどまっているが、魂は一足先に地獄に堕ちている。  【自己視】 自己像を見る。 老いた自己の姿を見る。 若かった頃の自己の姿を見る。 自分の死体を見る。 自分の死体を見て、その中に入ろうとするが、なかなか入れない。 成長し変身した魂が、ぬけがらとなった自分の身体を見る。 死に近づいた人が、屋根の上から自分の姿を見下ろす。 死んだ人が、屋根の上から市中の人々を見下ろす。 上から自分の姿を見下ろしても、まったく無事であったということもある。 「自分の姿を見た」と思い込み、死が近いことを覚悟する。 【自殺願望】 自殺を手伝ってくれる人を捜す。 毎日自殺しようとしては、思いとどまる。 望ましい環境に早く生まれ変わろうと考え、自殺を試みる。 自殺願望の少年が、重病の少女に出会う。 【自傷行為】 兵役を逃れるために、自らの身体を傷つける。 殺人犯が、自分も被害者であるように見せかけるため、死なない程度に自らの身体を傷つけたり、毒を飲んだりする。 死なない程度に自らの身体を傷つけるつもりが、手元が狂って死んでしまう。 死なない程度の毒を飲むつもりが、飲みすぎて死んでしまう。 当たり屋。走っている自動車にわざと接触して、軽い怪我をする。「示談にしよう」と持ちかけ、自動車の運転者から金を得る。 貴族社会から逃れて法師になるために、身体を醜く傷つけようと思う。 美女が、自分の顔を焼いて醜くする。 悪人が乱心し、自分の身体を刀で切り刻む。 悪霊にとりつかれた人が、自分の身体を歯で噛みちぎる。 【自縄自縛】 自分の作った縄で自分が縛られる。 知らずして自分自身に死の宣告をする。 自分の受けるべき罰を自分で決める。 自分の作った法律で自分自身や家族が裁かれる。 自らの用意した殺人具にかかって死ぬ。 【地震】 大地震。 吉事・奇瑞としての地震。 誕生・臨終時の地震。 地震の原因。 地震の恐怖。 さしせまった地震の予知。 翌日の地震の夢告。 三日後の地震の予言。 地震を防ぐ石。 「地震だ」と思ったら、動物の背中に上陸していたのだった。 「地震だ」と思ったら、動物の上に寝ていたのだった。 【神仏援助】 神が人を助ける。 観音が人を助ける。 人間の手助けを観音の援助と思う。 地蔵が人を助ける。 吉祥天女が人を助ける。 吉祥天女が男の淫欲を満たす。 【舌】 人の死後、舌だけが生前のままの状態で残る。 獣や龍の舌を切り取って持ち、自分がその獣や龍を退治した証拠とする。 人間の舌を切り取って、しゃべれなくする。 雀の舌を切る。 他人の舌を噛み切る。 自分の舌を噛み切る。 地獄で舌を抜かれる。 【死体】 死体が黄金など価値あるものに変化する。 死体が黄金に変り、また死体にもどる。 死体から黄金を取り出す。 死体から金歯などを取る。 神の死体から食物が生ずる。 人の死体からたばこが生ずる。 動物の死体から食物が生ずる。 葬ったはずの死体が、墓や棺の中から消える。 死に近づいた人が姿を消す・行方知れずになるなどして、死体を残さない。 たとえ埋葬された遺体があっても、それが当人のものだという証拠はない。 動かせない死体。 死体が動く。 屍体翻弄。 死体を見に行く。  死者に逢いに行く。 一つの死体を見た複数の人間が、それぞれ自分が殺したと思いこんで、死体の処理に苦慮する。 複数の死体を一つだと思って処理する一人の男。 一つの死体を処理する一人の人間。 殺人犯が、自分が殺した人間以外の死体も処理せねばならなくなる。 管理された死体。 死体を損壊・陵辱する。 死体をきちんと葬らないと、死者の霊は鎮まらない。 放置された死体を供養・埋葬する。後に死体がその恩を返す。 天人が自らの前世の死体を供養する。 身代わりの死体。 死体と一緒に暮らす人。 死体との交わり。 【死体変相】 死体が腐敗し、その相(すがた)がしだいに変わっていく。 死体の変わり行く過程を見る。不浄観。 死体変相の過程を絵巻物にする。 聖者の死体は腐敗しない。 聖者の死体でも腐敗することがある。 人間に化けた狐が、死体となってから正体をあらわす。 人間に化けた狸が、死体となってから正体をあらわす。 人間に化けた猫が、死体となってから正体をあらわす。 透明人間が、死体となってから姿をあらわす。 【七人・七匹】 七人の英雄。 七人の小人。 七人の天使・妖精・霊。 七人の兄弟姉妹。 六人の兄と一人の妹。 【自転車】 仕事に必要な自転車を盗まれる。 女性の自転車乗り。  夏目漱石はロンドン留学中に、自転車に乗る稽古をした。 空飛ぶ自転車。 夜の自転車。 【死神】 現世の人間のもとを訪れ、冥府まで連れて行く。日本固有の死神の物語はなかなか確認できない。 歌舞伎作品の中には、死神が現れるものがある。 死の女神。 冥府の使いの鬼なども死神の一種であろうが、人間から饗応を受けたために、その人間を放免してしまうことが多い。 死神を避けて遠方へ逃げる。 死神のような男。 病気の子供を死の世界に誘うかのごとく現れる少年。 死神と思ったら、愛の神だった。 「死神」といっても、特定の魔物が存在するわけではない。 【芝居】 芝居を現実と混同する。 現実を芝居と錯覚する。 現実の殺人事件を芝居の形で再現し、犯人に見せる。 戯曲の筋書きを現実化し、その後に、戯曲を舞台で上演する。 素人芝居を利用して、人を殺す。 芝居の作中人物のみならず、作者や観客たちも登場する芝居。 【紙幣】 紙幣のナンバーが記録されている。  同じナンバーの紙幣。  紙幣に目印がある。 高額紙幣が役に立たない。 【島】 孤島での生活。 孤島の少年たち。 陸の孤島の少年たち。 女護が島。 死者の行く島、死者のいる島。 空飛ぶ島。 別世界の楽園。理想郷。 怪物が住む島。 恐竜が住む島。 怪人が住む島。 【姉妹】 容貌が大きく異なる姉妹。 性質・性格が大きく異なる姉妹。 一人の男が姉妹の双方と関わりを持つ。 姉妹の一方が、他方の幸福を思って身を引く。 姉妹が、不和の原因である男を殺す。 姉妹と二人の男の関わり。 【死夢】 自らの死を予示する不吉な夢を見る。 家族や友人の死を予示する不吉な夢を見る。 友人や知人の死を知らせる夢を見る。 親友が夢に現れて、別れを告げる。 死後またこの世に転生する運命の人が、転生後の人生で体験することを、前もって夢に見る。 【弱点】 超人や怪物などにも、苦手なもの・恐ろしいものがある。 身体の一ヵ所に残る弱点。 身体の一ヵ所にある、触れてはならない部分(これも、ただ一ヵ所の弱点・急所の一種であろう)。 【写真】 男が女を恨み、女の写真を傷つける。 旧知の人の写真を見て、その所在を知る。 追写真。没後長年月を経た人の、生前の姿を写生する。 心霊写真らしきもの。 瀕死の人の写真を撮影すると、生命力を与えることができる。 三人で写真をとると、真ん中の人が早死にする。  愛する人の写真。 不倫の証拠写真。 恋人と並んで映っている写真を二つに切って、恋人の写真と自分の写真を別々にする。 見えぬ目で見る写真。 フィルムのすりかえ。 【銃】 盗まれた銃。 名銃を巡る争い。 警官隊や軍隊が、無数の銃弾を浴びせてアウトロー二人を殺す。 遠方からの狙撃。 誤射。刑事や探偵が、ねらった相手とは別の人物を銃撃してしまう。 戦場での誤射。 射撃の名手。  自分を射撃の名手だと思いこむ男。 銃弾を防ぐ盾。  銃弾を防ぐ一枚の銀貨。  銃弾を防ぐ多くのバラ銭。 銃弾の転生。 【十五歳】  十五歳の娘が、死や恋に直面する。  【十三歳】  十三歳の少女が、旅に出る・男と出会う・死に直面するなど、人生の転機をむかえる。 十三歳の少女とは結婚できない。 十三歳の少年が女と出会う。 十三歳の少年たちが大人を殺す。 【十字架】 イエス・キリストをつるした十字架。 十字架の力。 聖者の口から十字架が出る。 空に浮かぶ十字架。 【手術】 脳を手術して、知能を高める。 ロボトミー手術。精神病患者の前頭葉白質を切除して、人格を変えてしまう。 麻酔なしで手術する。 自分の身体を手術する。 手術の失敗。 手術不能。 生体実験手術。 【入水】 複数の男から求婚された女が、入水して死ぬ。 夫や兄が討死したり捕らわれたりしたため、その妻や妹が入水して死ぬ。 入水する女が、救助されてしまうこともある。 海の神への捧げ物として、女が入水する。 夫や子と別れた女が入水する。 いつわりの入水。 政治的な理由による入水。 入水往生。 いつわりの入水往生。  全国民の、あるいは全人類の集団入水。 バケツの水で、入水自殺を試みる。 【出産】 石を産む。 河童を産む。 玉を産む。 卵を産む。 手を産む。 肉塊を産む。 水を産む。 蓮花を産む。 尻尾のある子を産む。 国土を産む。 アダムとイヴ(エヴァ)の物語を、イザナキ・イザナミ神話の訛伝と見なす。 山中で出産する。 自ら望んで私生児を産む。 高齢出産。 にせの高齢出産。 死体が出産する。 【出生】 出生を隠す。 出生をいつわり、他人になりすます。 生まれ年をいつわる。 真の父母が別にいることを知らされる。 真の父が別にいることを知らされる。 祖父と母の間に生まれた子供。 祖父と母の間の子供か、と疑われたが、父と母の間の子であった。 真の母が別にいることを知らされる。 身分ある人の子であることがわかる。 みにくいアヒルの子が、美しい白鳥の子だったことがわかる。 身分高い人の子として育てられたが、実はそうではなかったことがわかる。 母親の身分が低かったことを知らされる。 最高権力者の出生の秘密。 【寿命】 寿命は生まれた時に決まっている。 死すべきはずの人の寿命が延びる。 来世で授かる寿命のうちの何年かを借りて、現世の寿命を延ばす。 動物の寿命を譲り受けて寿命を延ばす。 余命を計る指標。ろばの皮。 余命を計る指標。酒や食べ物。 余命を計る指標。札束や宝石。 あまりに恵まれた人は、長生きできない。 【殉死】 明治天皇の死と乃木大将の殉死。 天皇や王のあとを追って、多くの人々が殉死する。あるいは殉死させられる。 インディアンの首長が死ぬと、黒人奴隷が一人殉死させられる。 妻への殉死。夫への殉死。 殉死を許可されなかった人。 殉教。キリスト教の信仰をつらぬいて命を捨てる。 【乗客】 汽車に乗り合わせた男から、物語を聞く。 汽車に乗り合わせた娘を見る。 汽車に乗り合わせた人妻と話をする。 死者と生者が同じ汽車に乗る。 乗客たちの命が、危険にさらされる。 乗客の一人を犠牲にする。 消えた乗客。 消えるヒッチハイカー。 消された乗客。 長距離列車に乗り合わせた人々の人生模様。 無賃乗船。 無賃乗車。 【肖像画】 男が、美女の肖像画を見て恋する。 青年が美女の肖像画に恋するが、彼女はすでにこの世の人ではなかった。 美女がよりいっそう美しく絵に描かれる物語と、美女なのに醜く描かれる物語。 肖像画の完成と同時に、そのモデルが死ぬ。 肖像画に描かれたモデルが、三年ほどして死ぬ。 モデルは中年になったが、肖像画は若い顔のまま。 モデルは若い顔のままで、肖像画が老いてゆく。 肖像画を傷つけると、モデルが病気になる。  男の肖像画を見て、そのモデルの妻になろうと考える。 死者の霊であるのに、生きた人間だと思ってその肖像画を描く。 怪物の肖像画を見て、本物だと思う。 【昇天】 人間が、仙人となって昇天する。 狐が龍となって昇天する。 神の国(あるいは死の世界)へ引き上げられる 月世界へ昇天する。 宇宙空間へ昇り、また地上へ帰還する 【娼婦】 娼婦を愛する。 娼婦と結婚する。 終戦直後の娼婦たち。 貴族に変装して娼婦に逢う。 老いた娼婦と、若い美青年。 娼婦と僧。 娼婦との結婚を批判される。 娼婦が、前途ある青年のことを思って、身を引く。 『椿姫』の二十世紀版。 一人の娼婦を巡る争いで、四人の男が死ぬ。 売春禁止法成立間際の娼館と娼婦。 【成仏】 この世から離れられず、さまよっている幽霊を救い、苦しみのない世界へ送る。 餓鬼道に堕ちた霊を救い、苦しみのない世界へ送る。 死後の行き先が決まらず、落ち着くべき世界へ行けない。 【食物】 異郷の食物を口にすると、現世に戻れなくなる。 異郷の食物を、食べずにいる。 神の国の食物を口にすれば神の仲間になる。 死者が人間界の食物を食べる。 死者が人間界の食物を食べない。 食物を呪う。 食物を祝福する。 食物を多くの人に与える。 食物を、食べる以外の用途に使う。 逆に、糞尿など本来食物ではないものを食べる。 目の前にありながら食べられない食物。 自分に合う食物が見つからない。 【処刑】 はりつけ。 絞首刑。 火刑。 釜ゆで。 ギロチン。 フランスでは、二十世紀の半ばを過ぎてもなお、ギロチンによる処刑が行なわれていた。 銃殺刑。 言葉による処刑。 私刑(リンチ)。 処刑執行から絶命までの一瞬の間に、意識の中では長い時間が経過する。 【処女】 処女懐胎。 処女懐胎を疑う女。 花嫁がすでに処女でない。 夫の意志で、妻を処女のままにしておく。 妻の意志で、処女のままでいる。 夫が実は女であったばあい、妻は当然処女のままである。 性戯にふけりながらも、処女を守る。 若い娘を見て、処女か否かを見抜く。 非処女かと疑われるが、後に処女であることがわかる。 赤ん坊を産んだ後、処女を回復する。 繰り返し、処女を回復する。 【女装】 英雄・豪傑の女装。 貴人の女装。 少年の女装。 恋しい女の形見の服を着る。 女装の男に求婚する。 男児を女装で育てると健康に成長する、との俗信があった。 歌舞伎の女形。 女装した将軍を、臣下がそれと知らず斬り殺す。 【女中】 雇い主が小間使いと結婚し、正妻にする。 雇い主が家政婦と性関係を結ぶ。 「夫が女中を妊娠させたのではないか」と、妻が疑う。 雇い主が家政婦を殺す。 【初夜】 新婚初夜の怪。 新婚二夜目の怪。 新婚初夜の殺人。 新婚初夜をのぞき見る。 第二の初夜。 【虱】 眠る龍の頭の虱を取る。  虱と思ったら、呉公(むかで)だった。 虱の仇討ち。 虱を飼う人と、虱を食う人。 魂が虱の体へ入る。 虱を見る。 【心中】 心中から始まる物語。 心中で終わる物語。 夫婦の心中。 うその心中。 男女三人の心中。 後追い心中。 無理心中。 殺人を無理心中に見せかける。  失恋の結果自殺しようと思う男と女が、共謀して一緒に死に、心中のように世間に見せかける。 心中をはかって、生き残る男。 心中をはかって、生き残る女。 心中するカップルと、心中をとりやめるカップル。 心中をとりやめるカップルと、心中の名所で事故死するカップル。 心中した男女の身体を引き離す。 【心臓】 龍の心臓。 魚の心臓。 恋人の心臓。 心臓を傷つける。 心臓の鼓動を調べる。 死者の心臓の鼓動が聞こえる。 【人造人間】 現実の人間そっくりの人造人間。 死体から造られた人間。 死人の骨から造られた人間。 植物から造られた人間。 土から造られた人間。  【人肉食】 人肉食嗜好。 屍肉を食う僧。 死体処理方法としての人肉食。 父親が、知らずに我が子の肉を食う。 父親が、我が子の肉と知りつつ、食う。 山羊が、我が子の身代わりになって食われる。 母親が、知らずに我が子の肉を食う。 夫(爺)が、知らずに妻(婆)の肉を食う。 夫が愛妻の死を悲しみ、妻の肉を食べる。 夫が妻の肉を、客に食べさせる。 自分自身の肉を食う。 人肉を食う社会。制度。 【人面瘡(人面疽)】 人の顔の形をした腫れ物。腕・肩・膝などにできることが多い。 母親の胎内に双子ABがあったが、誕生以前に、Aの体内にBが吸収されてしまい、Aだけがこの世に生まれる。二十数年後、Bは人面瘡となって、Aの身体に現れる。 人間の口の形をした出来物。 猫面瘡。 【水没】 村や町が水没する。 大陸が水没する。 日本列島が水没する。 全世界が水没する。 水没した町の中で暮らす。 【水浴】 水浴する天女などの衣を隠す。 温浴する女妖の衣を奪う。 人妻の水浴を見る。 女神の水浴を不用意に見てしまうと罰せられる。 行水する女を見る。水浴する女とそれを見た男が性関係を結ぶ物語の変型。 行水する女の物語を、俳句的世界へ転換する。 行水する母親が変身する。 水浴びする男を見る。 海岸の少女を、中年男が見る。 【すりかえ】 金と石のすりかえ。 手紙のすりかえ。 剣のすりかえ。 平中説話には、香を排泄物にすりかえる話と、逆に、排泄物を香にすりかえる話の両方がある。どちらか一方の話がまずあって、それを変形させてもう一方の話が出来上がったのであろう。 水と墨とのすりかえ。 酒と毒のすりかえ。毒と酒のすりかえ。 文書のすりかえ。 貴重な品などを、悪人が別のものとすりかえる。 【すれ違い】 慕い合う二人あるいは敵同士が、お互いを目前にしながら会えない。 一瞬のすれ違い。 【寸断】 殺した怪物の蘇生・復活を防ぐため、死体を寸断して、諸方に分葬する。 以下の例も、復活を防ぐために死体を寸断した可能性がある。 死体処理法としての寸断。バラバラ殺人の極端な形態。 返り血のついた衣服の処理法としての寸断。細かく切り刻んで捨てる。 女神の死体が寸断され、そこから食物が生ずる。 子供の死体が寸断され、そこから食物が生ずる。 【精液】 神・人間・動物が精液を飲み込んで、子供を産む。 精液が大地・樹・岩にかかり、そこから子供が生まれる。 生命を与える精液は、また生命を奪う毒にもなる。 精液が尽きれば、生命も尽きる。 夢精。 精液を地面へ放出して無駄にする。 女性の手によって射精する。 【性器】 女性器を露出して神にはたらきかける。 女性器を露出して敵や魔物に対抗する、あるいは追い払う。 貞操を守る紐も、女性器同様に、化け物を退治する力を持つ。 女であることを示すために性器をあらわす。 歯牙のある女性器。ヴァギナ・デンタータ。 女性器と口。 男性器を露出する。 男性器が見えていることに気づかない。 女性器を傷つける 男性器を失う・傷つける。 にせの男性器を切り取る。 男性器を「悪魔」、女性器を「地獄」と言う。.性器を隠す。 性器を隠す。 【性交】 初めての性体験。 性交の方法を知らない男女。 性交を拒否する女。 性交を嫌悪し、男を嫌悪する女。 女と一夜をともに過ごしながらも、性交をせぬ男。 男が性交に及ぼうとするのではないか、と女が警戒するが、男は空腹で、食べ物が欲しいだけだった。 性関係のない夫婦。 性交によらぬ遺伝・妊娠。 異類との性交が死をもたらす。 禁じられた、あるいは呪われた性交が、死をもたらす。 禁欲期間後の性交が死をもたらす。 性交の過多が死をもたらす。 性交過多による死を回避する。 性病の男が、自ら性交を禁ずる。 医者が、肺病の男に性交を禁ずる。 性交によってAからBに病気をうつす。その結果Aの病気が治る。 病気治療と称して性交する医者。 性交による若返り。 性交の喜び。 一人の男がある家を訪れ、一家全員(男も女も)と性関係を持つ。 さまざまな性体験。 天人の交わり。 子供が、父母の性交現場を目撃する。 子供が、父と芸者の性交現場を目撃する。 子供が、母と愛人の性交現場を目撃する。 【生死不明】 物語の最後で主人公が生死不明の状態になる。 重病で死を目前にした主人公が、あるいは持ち直すかもしれない、というところで物語が終わる。 物語の最後で生死不明だった主人公が、その続編で、健在であることが示される。 今の自分が、生きているのか死んでいるのか、判断できない。 殺したはずの男に似た人物が、追いかけて来る。男は生きていたのか、それとも良く似た別人なのか、わからない。 【成長】 神の子、あるいは神的な性質を持つ子は、きわめて成長が速い。 子供が速く成長したと錯覚する愚者。 成長の速い動物。 成長が遅い子。後に立派な仕事をなしとげるばあいがある。 まったく成長せず、母親を苦しめる子。 植物が一夜のうちに生じ、成長する。 成長を自らの意志で止め、また再開する。 不幸な事故のために、成長が止まる。 ロボットは成長しない。 【性転換】 男から女へ性転換する人。 女から男へ性転換する人。 男から女に変わり、また男にもどる人。 性転換する動物。 母親の胎内にいるうちに性転換し、女子を男子に変えて誕生させる。 性転換手術。 放射能の影響による性転換。 【切腹】 武士・軍人の切腹。 女性の切腹。 立ち腹。立ったままの姿勢で切腹する。 切腹できない臆病者。 理想的な死に方としての切腹。 腹に墨で線を引き、切るべき場所を示す。 【接吻】 接吻は、超自然的な力を持つ。 接吻で人の命を救う。 問いかけに対する答えとしての接吻。 合図としての接吻。 大地への接吻。 窓ガラスをへだてての接吻。 映画の接吻シーンの検閲。 接吻の人違い。 天女の接吻。 悪魔の接吻。 生まれて初めての接吻。 【背中】 男が背負った子供や僧が、次第にあるいは急に、重くなる。 男が背負った僧や老人が、強い力で男を苦しめる。 男が女を背負って、遠方へ連れて行く。 男が老女を背負って、山を登る。 背負われることを拒む女。 死体を背負う。 逆に、死体の背中に生きた人間が乗る。 生きた人間が、死体に乗って(背中に乗ったか、あるいは腹部に乗ったか、不明である)蘇生させる。 重い荷物を背負う。 背負う者と背負われる者の交替。 【千】 千人。 千日。 千年を経た古狐と古木。 千年が一つの区切り目。 千本の手。 千本の卒塔婆。 千の性器。 千人針。千人の女性が一針ずつ、縫い玉を縫いつけた晒し布。出征兵士がこれを腹にまけば、弾丸よけになると言われた。 【前世】 自分の前世を教えられる。 自分の前世と前々世を教えられる。 前世を映す皿。 偽りの前世を教えられてそれを信じる。 特別の存在である天皇に対しては、その前世にも関心が寄せられる。前世は僧だった、とする話が多い。 天皇が、前世も皇族だった場合もある。 天皇の前世が大蛇だった、ということもある。 前世の骸骨を見る。 自らの前世を語る。 幼い頃は前世を覚えているが、成長すると忘れてしまう。 自らの前世を、動物だと考える。 自らの前世を、犬かもしれないと空想する。 自らの前世を語ることの禁忌。 前世で殺生したために、現世で殺される。 人間には前世が必要である。 【戦争】 第二次世界大戦。 朝鮮戦争。 ベトナム戦争。 ベトナム戦争の帰還兵。 核戦争。 一人の男の狂気が核戦争を引き起こす。 核戦争への恐怖で一人の男が発狂する。 来たるべき核戦争への、心の準備。 核爆弾テロ。 核戦争後の世界。 戦争の記憶・記録を消去することの是非。 【千里眼】 遠方の光景を見る。 遠方の火事を見る。 遠方の火事を察知したふりをする。 遠方の火事を知って、これを消す。 天眼通。 水の中に顔を入れ、何百里も離れた場所を見る。 月面の井戸の中から鏡を通して、遠い地球の町や家を見る。 【僧】  僧と后・姫君。 僧と遊女。 僧と金銭。 悪僧。 【象】 空飛ぶ象。  象を働かせる。 象の恩返し。 象の頭を持つ神。 象人間。 大象が狭い窓から出る。 大象が小さな門を通れない。 象の夢。 【像】 像を夫や妻のごとく愛する。神が像に生命を与える。 像が生きた仏となる。 夫が死んだので、夫の像を作って交わる。 美女の像に心をうばわれ、そのモデルの王女を妻とする。 像を傷つける。 人間が像のふりをする。 像が人間の身代わりになる。 像の中に物を隠す。 宝石や金で飾られた像。 像の背丈が伸びる。 像を食事に招待する。 像と結婚の約束をする。  像を作るのではなく、木の中から像を掘り出す。 土で造った像に生命が宿り、動き出して暴れる。 動物の像。 【葬儀】 通夜から告別式・火葬までのさまざまな手続き。 葬儀の焼香。 通夜や葬儀の場に、死者と瓜二つの人がやって来る。 通夜の家に雨宿りする無法者たち。 仏(=釈迦)の火葬。 火葬の煙。 【装身具】 姦通の証拠となる装身具。性交の際、装身具をはずす・忘れるなどして、それが夫などの手に入る。 姦通の証拠となる装身具。夫が妻に贈った装身具を、妻が愛人に与える。 装身具が悪事の証拠となる。 装身具が、人と会った証拠になる。 【蘇生】 神または神に等しい人が蘇生する。 人間が生き返る・人間を生き返らせる。 生者が死者とともに寝ることによって、蘇生させる方法がある。 墓に土葬された人間が生き返る。 男が、死んだ女を蘇生させ、結婚する。 男が、死んだ女を一時的に蘇生させるだけで、結婚はできない。 にせの蘇生。 蘇生後、障害が残る。 動物を生き返らせる。 蘇生して冥府のさまを語る。 【体外離脱】 体外離脱して、霊界へ行く。 体外離脱して、他の天体へ行く。 体外離脱して、空高く上昇する。 離脱した魂と身体を結ぶ銀色の紐。 体外離脱して、極小世界と極大世界の両方を訪れる。 【太陽】 日光感精。 太陽神によって子を得る。 太陽から、人類の最初の男女が発生する。 太陽の夢を見て懐妊する。 十個の太陽。 十個の太陽を矢で射る。 九つの太陽と十個の月を、矢で射る。 二つの太陽のうちの一つを、矢で射る。 太陽神に矢を向ける。 太陽を飲み込む。 太陽を吐き出す。 西へ沈む太陽を、扇などで招き返す。 神に祈って大陽を中天にとどまらせる。 太陽が東へ沈む。 太陽神が昼は西へ進み、夜は東へ戻る。 人間が太陽を追いかける。 円筒形の太陽。 太陽と目。 太陽が人間に及ぼす力。 太陽と月の近親婚。 【鷹】 鷹を逃がしてしまう。 男が鷹を追って、女と出会う。 鷹が来るのは、瑞祥である。 主人に忠義を尽くす鷹。 人が鷹を食べる。 鷹が人を襲う。 鷹が、雀や鳩を追う。 人間が鷹に変わる。 鷹を飼育した人の晩年。 鷹狩りをした人の末路。 【宝】 宝探しとその発見。 失った・あるいは奪われた宝を、取り戻す・捜し求める。 失った身体の諸器官を、取り戻す。 家宝などを割る。 家宝を盗んだとの濡れ衣。 宝を守る龍や蛇。 宝石のように美しい蛇。 宝くらべ。 傷ついた動物が、治療してくれた人間に宝をもたらす。 身体から出る宝。 水に沈む宝。 水に沈めた大金が浮かび上がる。 宝が人の手から手へ巡る。 ある人にとっては貴重な宝も、別の人の手に渡れば、無価値なものとして扱われる。 宝の持ち主がその存在・その価値を知らない。 宝の持ち主がその価値を知らないように見えたが、実は知っていた。 賊が、人の宝を奪い取るが、その価値を知らず捨ててしまう。 宝の持ち主が、それを失うことを恐れる。  宝の持ち主が、宝を失うのではないかと心配し続け、失ってかえって安堵する。 宝の持ち主が、宝を失うのではないかと心配し続け、失って嘆き悲しむ。 宝のごとく大切な若妻を失うのではないかと心配し続け、失ってかえって安堵する。 宝石のごとき女性を失う。 【蛸】 婆が蛸の足を七本食べ、その後、海へ引きずりこまれる。 猫が蛸の足を七本食べ、八本目は食べない。 蛸が自分自身の足を食べ、身体を食べる。 蛸の八本の足を二本切って、六本足にする。 蛸の八本の足を六本切って、二本足にする。 蛸の十本の足を二本切って、八本足にする。 精進すべき日に蛸を食べる。 蛸を食べて死ぬ。 蛸が経に変わる。 毛の生えた蛸。 【堕胎】 堕胎手術の結果、女が死ぬ。 堕胎手術後、女が出家する。 間引き。堕胎手術ができなかった時代は、出産するまで待って子供を殺した。 母体に衝撃を与えて、子供を堕そうと試みる。 【たたり】 人を殺したため、たたりを受ける。 蛇を殺したり傷つけたりしたため、たたりを受ける。 たたりのある場所。 刀剣のたたり。 【立ち聞き(盗み聞き)】 神々など超自然的存在が問答するのを聞く。 重要な情報を偶然に耳にする。 たまたま出会った人などのささいな一言から、難問解決のヒントを得ることがある。 必要な情報を得るために盗み聞きをする。 盗聴器。 不十分な情報しか得られぬ立ち聞き。 鳥の話を人間が立ち聞きする。 逆に、人間の話を鳥が立ち聞きする。 わざと立ち聞きさせる。 【脱走】 捕虜収容所からの脱走。 刑務所・牢獄からの脱走。脱獄。 脱獄に成功した男と、失敗した男との友情。 脱獄した夫の代わりに、妻を牢に入れる。 【狸】 狸婿。 狸女房。 狸が人に化ける。 狸が茶釜に化ける。 狸が汽車に化ける。 狸が八畳敷きの座敷に化ける。 父親を、狸が化けたものと誤解して殺す。 狸の恩返し。 狸のいたずら。 狸囃子(たぬきばやし)。 盗賊一味が狸囃子を奏して、人々を惑わせる。 【旅】 主人公たちが果てしない旅をする。 神が身をやつして旅をする。 王族・貴族・領主などが、身分を隠して旅をする。 王女が身分を隠して町に出る。 星界への旅。 天界への旅。 旅する動物・異類。 世界一周の旅。 貴重な情報を求めての旅。 破滅する世界の救いを求めての旅。 失われた宝を求めての旅。 宝を廃棄するための旅。 聖杯探求の旅。 自由を求めての旅。 ロマンスを求めての旅。 亡き妻の生まれ変わりを探す旅。 二人旅。 女の長旅。 一家あげての長旅。 【旅立ち】 主人公が新天地を求めて旅立つところで、物語が終わる。 【玉(珠)】 つねに身につけている玉(珠)。 自分が宝玉を身につけていることを知らない。 二つの玉(珠)。 傷ついた動物が、治療してくれた人間に玉(珠)をもたらす。 龍が守護する玉(珠)。 【卵】 卵の中に魂を隠す。 金の卵を産む。 卵から、幼い子が生まれる。 卵から、創造神が生まれる。 卵から、天地が生まれる。 人が卵を産む。その卵から一人あるいは多数の子供が生まれる。 卵を食べた罪。 【魂】 体外の魂。生命の根源が、身体から離れたところにあるので、身体をいくら攻撃されても無事である。しかし、体外にある魂が損傷すれば、身体は倒れる。 生命の根源である心臓を、肉体から取り出して木の上に置く。 窓外に見える葉を、自分の生命と同一視する。 体外の魂との問答。 眠っている間に、動物の形をした魂が、身体から出たり入ったりする。 魂が体外に出ているうちに身体を動かすと、魂はもとの身体に戻れない。 身体を動かすことによって、生死を左右できる。 魂(心)を別人の身体に入れる。 火葬にすると、魂の帰るべき身体は失われる。 火葬しなくても遺体は腐敗する。 遺体の代わりに得た新しい身体が不満、というばあいもある。 瀕死の人の肉体から魂が抜け出、平生と変わらぬ姿で現れる。 死んだ人が、その時刻に遠方で、平生と同じ姿で目撃される。 悪魔や死神が、死者の魂を取ろうとする。 天使などが、死者の魂を天国に運ぼうとしてもできない。 魂を遠方へ送るために、肉体を殺す。 横たわる肉体から、魂が抜け出て遠方へ行く。 人間の身体に宿る魂は、一つではない。 生きた人間の身体には、三魂七魄(さんこんしちはく)がある。 魂を持たぬ存在。 魂と類似するが、異なるところも多い宇宙生命(コスモゾーン)。 宇宙生命と同様、「道」もあらゆるところにある。 【樽】 大きな樽の中に人間が隠れる。 樽の中に人間を閉じ込める。 樽の中に人間を入れて、海へ捨てる。 死体を樽の中に入れる。 破砕された死体が、セメント樽に詰められる。 刑罰として、人間を樽の中に入れる。 樽を住居とする。 【誕生】 植物から生まれる。 卵から生まれる。 石から生まれる。 頭から生まれる。 赤ん坊が、母親の脇腹から誕生する。 母親の腹を刃物で切り裂き、赤ん坊を取り出す。 母胎に長期間いた後に誕生する。 同日に生まれた二人は、強い運命の絆で結ばれる。 仇敵の子に生まれ変わる。 魚から生まれる。 山犬から生まれる。 火の中で誕生する。 誕生時の奇瑞。 誕生を拒否する子供。 誕生以前の子供たち。 【男性遍歴】 数名あるいはそれ以上の男たちと関係を持ち、成長する、または破滅する女。 【男装】 女神が男装する。神は完全な存在だから、男女両方の性質をあわせ持つことをあらわす。 女神アマテラスの子孫である神功皇后も、戦いに臨んで男装をした。 男装しているために、女に子を産ませた・女を犯そうとした、との濡れ衣を着せられる。 仇を討つために男装する。 身の安全のために男装する。 男装して、苦境にある夫や恋人などを救う。 男装して夫や恋人に会い、後に正体を明かす。 親しい男に女性であると見破られ、犯される。 男色の男に近づくために男装する。 恋しい男の形見の衣を着る。 姫宮を男宮として育てる。 集団の男装。 【血】 血から誕生する・生ずる。 血の力で誕生した人を血の力で倒す。 血の力で開眼する。 血の力で病気が治る。 血の力で不死身となる。 血の力で蘇生する。 処刑された人の血が、無実であることを示す。 殺人犯の衣類に残る、被害者の血痕。 拭いても拭き取れぬ血。 拭き取れぬ血を作る困難。 災いを招く・あるいは退ける目印としての血。 血の味。 河の水が血に染まる。 淵の水が血の色に濁る。 【知恵比べ】 外国と日本の知恵比べ。 【誓い】 いかさまの誓い。不義の人妻が潔白を主張し、夫をあざむく。 いかさまの誓い。不義の人妻が潔白を主張するが、夫が嘘を見抜く。 いかさまの誓い。王女の潔白を誓う。 いかさまの誓い。返さぬ金を「返した」と言う。 【力くらべ】 引っ張り合い。 女どうしの力くらべ。 神々の力くらべ。我慢くらべ。 相撲の起源。 【地球】 地球の自転を停止させる。 地球の自転が遅くなり、つねに同じ面を太陽に向けて公転する。 地球を逆回転させる。 地球に接近し、衝突する恐れのある天体。 地球の中心を通り抜ける。 第二の地球。 地球は生きている。 【地図】 原寸大の地図。 地図上の距離と実際の距離の混同。 地図に似た田虫の形状。 地図にも載らぬ島。 【父子関係】 父親のわからない子。 真の父子かどうかの判定。 異類・異族である父親の性質・体質を受け継ぐ子。 父が子供と対面するが、親であると名乗らず別れる。 【父殺し】 息子が父親を殺す。 息子が、継父になろうとする男を殺す。 【父さがし】 父を捜し尋ねる息子。 証拠の品を持って父のもとへ来る息子。 証拠の品を持って父のもとへ来るにせ息子。 父と別れて育ちながらも、父が誰かを知っている息子。 父を捜し尋ねる娘。 【父と息子】 父と息子とが、同じ一人の女と関わりを持つ。 父に及ばぬ息子。 父を尊敬し、慕う息子。 父が、自分の果たせなかった夢を、息子に託す。 父の世界と息子の世界。 息子が父に反逆する。 父が敵となって、息子の前に立ちはだかる。 互いに父であり息子であると知らずに戦う。 養父と息子。 【父と娘】 父が娘を溺愛する。 娘の結婚による父との別れ。 嫁に行く娘と行かない娘の対比。 いつわりの父と娘。 娘が、父と敵対する立場の青年を、夫や恋人にする。 娘が父を裏切り、夫を助ける。 【父の霊】 父の霊。 父祖の霊。 【父娘婚】 互いに父であり娘であることを知らずに、性関係を結ぶ。 娘が自分の正体を隠して、父と交わる。 娘二人が、父を眠らせて交わる。 父が、眠る娘を犯す。 父娘相姦の噂。 父が娘との結婚を望む。 【乳房】 人間が乳房に変身する。  乳房を露出して、敵を追い払う。 乳房を恐れる。 乳房を握って安らぎを感じる。 乳房をつかんだ手が離れない。 乳房を手術する。 乳房榎。 【地名】 地名の起源。 呪力を持つ地名。 不吉な地名。 近代の地名。 地名が人の心に及ぼす力。 【仲介者】 仲介者が君臣・父子などの仲を隔てる。 仲介者が男女の仲を裂く。 結婚の使者。 【蝶】 蝶は死者の魂、もしくは死者の化身である。 亡魂が、蝶の前段階の毛虫になるばあいもある。 夢を見る人と蝶。 人の死と蝶。 蝶の精。 【長者】 貧しい男が長者になる。 石油成金。 長者の家が没落する。 子を授かることと引き換えに、長者が財を失う。 第二次世界大戦後の農地改革で、長者が没落する。 長者の財力。 長者が、広い土地に黄金を敷きつめる。 長者が、遠い町まで小判を並べる。 【長寿】  百年〜数百年以上生きる長寿の男。 一千年以上生きる長寿の男。 二百年生きる長寿の女。 一千年生きる長寿の女。 長寿をもたらす食物。 【追放】 実の親が、息子を追放する。 実の親が、娘を追放する。 育ての親が、娘を追放する。 伯父が甥を追放する。 王が臣下を追放する。 【通訳】 通訳をしつつ、他の人間にはわからないように情報の交換をする。 正しく通訳したのに、「誤訳」と発表される。 怪獣語を通訳する。 【杖】 杖から芽や葉が生じたり、根づいたりする。 杖から鳩が出る。 杖を用いて水を出す。 杖が蛇に化す。 魔法の杖。魔法の棒。 【月】 月旅行。 月への逃亡。 十二個の月。 月の異変。人間の思いが月を曇らせる。 月の光が、人間に大きな影響を与える。 月を見ること・月の光に照らされることは、不吉であると考えられた。 月を長く見ていると、命が縮まる。 月から手紙をもらう。 月と太陽が離れた起源。 月は、もとは太陽だった。 月面の模様。 罰として、月へ連れて行かれた人。 湖水に映る月を見て、「月が湖の中にある」と思う。 水に映る月を取ろうとする。 空の月を取る。 空の月に追いかけられる。 【辻占】 将来の運命を知るために、辻に立つ。道行く人が、将来の予言をしてくれる。 通りかかる人の日常の普通の会話や独り言を、当面の自分の境遇にあてはめて解釈し、吉凶を占う。 近くにいる人の日常の普通の会話を、当面の自分の問題にあてはめて解釈し、行動の指針とする。 拾ったものを、当面の自分の問題にあてはめて解釈し、行動の指針とする。 人の言葉を不吉な辻占と受け取って心配するが、取り越し苦労だった。 【土】 土は人間を造る材料になる。 土と接触するとエネルギーが補給される。 土と接触すると、地上のルールに従うことになる。 土中から生まれる。 大地が裂けて中に陥る。極悪人の最後。 地の底へ沈む。 地面から出現する。 【唾】 唾を吐いて呪う。 唾を吐いて相手を倒す・傷つける。 唾を吐いて相手の姿を消す。 相手に唾を吐かせる。 吐き出された唾が、黄金に化す。 唾をつける。 【壺】 壺の中の赤ん坊。 壺の中の大空間。 壺の中に閉じ込める。  壺むすこ。 【妻】 妻の愚行が大勢に不幸をもたらす。 妻の愚行が夫に不幸や死をもたらす。 妻が夫の宝を焼く。 妻が夫を待ち続けたあげくに、病死する。あるいは自殺する。 妻が夫を待ちつづけるが、夫は妻を忘れる・あるいは捨てる。 妻が夫を待ち続け、帰還した夫と再会する。 妻が夫の帰還を待ちきれず、他の男に心を移す。 妻の貞節を試す。 愛人の貞節を試すために心中を迫る。 夫が別人に変身して、妻を試す・誘惑する。 夫が別人に変装して、強引に妻を犯す。 妻が、誘惑者の正体が夫だと見抜きながら、気づかぬふりをする。 妻の欲心。 自分の妻と知らずに口説く。 恐妻家たち。 【妻争い】 複数の男が、一人の女を得ようとして争う。女は男たちの内の一人と結婚する。 複数の男が、一人の女を得ようとして争う。女は誰とも結婚せずに、遠い世界へ去る。 大勢の男が、一人の女に求婚して争う。女は誰とも結婚せずに死に、男たちは諦める。 【妻殺し】 男が自分の妻を殺す。 男が何人もの女と結婚し、次々に殺す。 王が、大勢の妻を殺す。 夫が直接手を下すのではないが、妻を死に追い込む。 意図的に妻を殺したのか事故なのか、夫自身にもわからない。 妻殺しの真の動機が、夫自身にもわからない。 夫が妻を水死させようとして果たさず、後にその妻と再会し、ふたたび結婚する。 夫が妻をボートに乗せて湖を渡る。夫は、往路では妻を殺そうとし、復路では妻を助けようとする。 男が愛人を水死させ、死刑になる。 【釣り】 釣りをする男が怪異に遭う。 男が配偶者を釣り上げる。 男が釣針を捜して異郷へ行き、配偶者を得る。 釣り人と王。 釣り人と仏。 幻術師の釣り。 西洋人の釣り。 島を釣る。 【手】 手および腕を失う。 手や指を身体の中に入れる。 怪物の手。 怪人の手。 巨大な手。 麻痺した手。 手で女性器の形状をあらわす。魔を払う動作。 神に「マノ・フィカ」を向けるのは、涜神のふるまいである。 「手の指の間から子供がこぼれ落ちた」というのは、指の股から誕生したということであろう。 【手紙】 他人あての手紙を、勝手に開封して読む。 他人の手紙を手に入れ、当事者に売りつける。 手紙が運び手に危難をもたらす。 運び手に危難をもたらす手紙は、途中で書き換えられることがある。 「赤ん坊が生まれた」と知らせる手紙を、「鬼子を産んだ」「犬を産んだ」などと書き換える。 手紙を書き換えて、人の運命を変える。 手紙の入れ違い。 手紙の届け違い。 三人にあてた一通の手紙。 天界や水界にいる神や龍への手紙を託される。 にせの手紙を用いて、人をおびき寄せる。 にせの手紙を用いて、味方どうし・恋人どうしの仲を裂く。 開封されない手紙。読まれない手紙。 投函されなかった手紙。 死者からの手紙。 【手相】 手相を見て未来を知る。 手相が良くないので、何も言わない。 手相で過去を知る。 【掌】 掌に金貨を握って生まれる。 掌に珠を握って生まれる。 掌に、前世の夫や愛人に関わるものを握って生まれる。 掌に凝血を握って生まれる。 掌に、文字の書かれた紙を握って生まれる。 掌に文字がある。 仏の掌の中に世界がある。 【手毬唄】 手毬唄の歌詞。 【天狗】 天狗が人と争う。天狗が人を助ける。 天狗が人の運命を狂わせる。 天狗が人をさらう。神隠しにあったと見なされる。 天狗の託宣。 【転校生】 不思議な転校生。 転校生をいじめる。 転校生が学園を支配する。 【天国(極楽)】 死んで極楽に往生する。 生きた身で、天界を訪れる。 身体は現世にありながら、心は天界へ昇る。 極楽に行く夢を見る。 死者が、極楽に往生したことを、知人の夢にあらわれて教える。 いったん天に生まれても、その後に地獄へ堕ちることがある。  悪人も死後、天国(極楽)へ行くことができる。 死後、天に生まれる人は、ごく少数である。  金持ちが天国へ行くのは、きわめてまれである。 死後、天へ向かう人と、地上に転生する人。 使命を果たさず死んだため天国へ直行できず、天国と地獄の中間に留め置かれる。 心が悪ければ、天国へ行けない。 極楽へ往生せずに、俗世へ戻る。 極楽へ往生せずに、魔道へ入る。 【天使】  天使が降下して、人間の女と結ばれる。 翼を持たぬ二級天使。 神に反逆する天使。 【転生】 同じ名または類似した名で生まれ変わる。 女が死後に転生して、愛する男と結婚する。 愛し合う男女が、ともに転生する。 相思相愛の男女が結婚できなかった。その孫の世代の二人も、互いを慕いつつ結婚できなかった。 現世の悪行を、転生して償う。 死者が転生後も、現世に残した物に執着する。 男から女へ、性を変えて転生する。 女から男へ、性を変えて転生する。 性を変えて転生するのが、輪廻の法則。 転生後も前世の容貌や性質を受け継ぐ。 冥府で、次にどのような動物に転生するか、あるいは人間に転生するか、決める。 転生先を間違える。 霊界の神的存在が、転生すべき家を明確に指示する。 転生しかけて、またもとの身体に戻る。 転生して来世で何に生まれ変わるか、想像する。 過去世での転生をふりかえる。 何気ない一言や、死ぬ時に見たものによって、転生先が決まる。 死ぬ時の一念によって、転生先が決まる。 めぐり会った女性によって、転生先が決まる。 神や天人が悪魔と戦うために、人間となって地上に転生する。 仙境の存在が俗世間の生活に関心を持ち、人間となって下界に転生する。 恩人の家に転生する。 転生先を知らせる。 死後、地上に転生するかしないかの境目。 転生した男と、転生しなかった女。 転生して、来世で借金を払う。 死ぬと同時に転生する。 【天地】 天地が分かれる。 巨人の成長とともに、天地が分かれて行く。 巨人が天地を分ける。 天が傾く。 【天人降下】 人の琴や琵琶などの演奏に応じて、天人が舞う。 天女が羽衣を返してもらうことと引き換えに、舞いを見せる。 天人が、地上の人を天界へ連れて行こうとする。 天人がお告げや予言を与える。 天人が、地上の人間に転生して降下する。 天人が地上に生まれても、短期間で天に戻ってしまうことがある。 【天人女房】 天女が降下して地上の男と結婚し、後に天へ帰る。 天女の産んだ子が帝王になる。 妻の死が、天への帰還だったことが後にわかる。 天女が人間の男と結婚し、添い遂げる。 【電話】 電話のかけ間違え。 他人あての電話に出てしまう。 通じなかった電話。 死者からの電話。 電話を利用した殺人計画。 長電話をして、相手をその場から動かさない。 携帯電話。 【同一人物】 まったく無関係な別人であるはずの二人が、実は同一人物だったことがわかる。 叔母と亡父が同一人物であることに気づかない。 記憶喪失の夫が、かつての妻と現在の妻が同一人物であることに気づく。  同一人物である証拠の目印。 【同音異義】 同じ発音または類似した発音の言葉でありながら、意味内容が異なる。 同じ発音の語でありながらその意味するところが違うことを利用して、離れた所にいる人をだます。 同じ言葉で、正反対の二つの解釈ができるような物言いをする。 【盗作】 他人の著作物を盗む。 オリジナルの作品なのに、「盗作だ」と非難される。 知らずに、過去の大作家の作品を盗作してしまう。  【同日・同月】 同日に誕生する二人。 同日に誕生する人と馬。 同日に誕生する人間の子と悪魔の子。 同日に死ぬ二人。  同日に死ぬ大勢の人。 同月の死。 何年か後の同月同日、もしくは命日の死。 殺人者が、人を殺した翌年の同月同日に殺される。 殺人者が、人を殺してから七年目の同月同日に病死する、もしくは処刑される。 「同日に死のう」と誓う三人の義兄弟。  「同日に死にたい」と神に願う夫婦。 【投身自殺】 高所から地面へ身を投げて死ぬ。 深い谷底へ身を投げて死のうとするが、助かる。 投身自殺に見せかけて、人を高所から投げ落とす。 【同性愛】 男性が男性を愛する。 同性愛の現場を見られて自殺する。 女性が女性を愛する。 同性愛者だ、との噂。 【逃走】 ものを投げて逃げる。 神に祈って逃げる。 二千里駆ける車が逃げ、三千里駆ける車が追う。 集団の逃走。 逃げる必要もないのに誤解して逃走する。 襲われたと誤解して、腰を抜かす。 青年が、愛人である女から逃走する。 臆病者が、逃げ回りつつ敵を追い詰める。 【動物援助】 人間の仕事を、動物が手伝う。 人間に課せられた難題を、動物が解決する。 戦争の時、動物が一方に加勢する。 動物が、弱い娘を救う。 【動物音声】 犬や猫の鳴き声が、人間の言葉に聞こえる。 牛の鳴き声が、読経に聞こえる。 鳥の鳴き声が、人間の言葉に聞こえる。 人間の悲鳴が、鳥の鳴き声に聞こえる。 獣の声が外国語に聞こえる。 狐の鳴き声。 【動物教導】 何種類かの動物に教えられる。 動物が、犯罪・犯人をあばく。 【動物犯行】 人間が盗んだ、と思われたものが、実は動物の仕業だった。 人間の悪戯と思われたものが、実は動物の仕業だった。 人間の犯した殺人と思われていたものが、実は動物の仕業だった。 動物の仕業と思われていたものが、実は人間の犯行だった。 【動物傅育】 幼い王の子などを、動物が世話をして育てる。 【同名の人】 同名異人。 同名で瓜二つであるが、双子ではない。 神話伝説中の人物と同名の現代人。 「アドルフ」というファースト・ネームを持つ三人の男。 同名の人と動物。 同名の人と都市。 同じ名前の人がいれば、死すべき人の代わりに冥府へ送ることができる。 好きになった女性が、皆同じ名前。 【毒】 毒薬。 毒蛇。 毒蛇にも害されない人。 毒酒。 敵には毒酒、味方には薬酒となる、不思議な酒。 銚子に仕掛けをして、相手にだけ毒酒を飲ませる。 毒入りの菓子。 毒と薬。 毒が薬に変じる。 ふぐの毒見(毒味)。 きのこの毒見(毒味)。 【髑髏】 父親の髑髏。 旅人が無縁仏の髑髏を見る。 旅人が無縁仏の髑髏の苦を救い、供養をする。髑髏がその恩返しをする。 旅人が美女と語り明かすが、翌朝見ると、髑髏があるだけだった。 前世の髑髏。 前生の髑髏、前々生の髑髏、前々々生の髑髏。 無数の前世の無数の髑髏。  幼い頃の髑髏。 仏法を聞いた人の髑髏と、聞かなかった人の髑髏。 財宝の道しるべとしての髑髏。 髑髏の酒器。 【時計】 十二時を打つ時計。 正午なのに十三時を打つ時計。 六時なのに七時を打つ時計。 時計を遅らせて時間をごまかす。 日暮れを告げる寺の鐘を、日没以前に鳴らして時間をごまかす。 時計を止めて時間をごまかす。 進んだり遅れたりする時計。 異なった時刻を指す二つの時計。 不思議な砂時計。 何時かわからない時計。 【土地】 一日で歩ける範囲の土地を得る。 三歩で歩ける範囲の土地を得る。 自分の持っている土くれで、他人の広い土地をおおう。 動物の皮一枚を紐状に切って、広い土地を囲む。 土を得るのは、土地を手に入れることに通ずる。 泥を得るのは、国を得る予兆である。 土塊を得て、それが島になった。 国土を造成して広くする。 海の向こうの土地を引き寄せる。 海の底の泥から大地を造る。 土地を失う。 土地をめぐる争い。 生まれた土地に守られる人。 「無用」と見えて必要な土地。 【隣の爺】 幸運を得た爺の、隣に住む爺が真似をして失敗する。 婆が真似をして失敗する物語もある。 【扉】 扉を開く方法。 扉を開くことができるただ一人の人。 遠くの場所へ通じる扉。 異郷へ通ずる扉。 半開きの扉。 七番目の扉を開ける 十三番目の扉を開ける。 回転扉。   岩の扉を、天界から地上へ投げ落とす。 岩の扉を怪力で割る。 戸締りをする文明と戸締りをしない文明。 【妬婦】 嫉妬する妻が、夫のもう一人の妻を殺す。 妻が生霊・死霊となって、夫のもう一人の妻を取り殺す。 妻が死霊となって、夫のもう一人の妻を取り殺し、ついで夫の命をも奪う。 もとの妻が、新たな妻を迎えた夫を殺す。 嫉妬する妻が、死後多くの美女にたたる。 神々の妻の嫉妬。 后の嫉妬。 妹への嫉妬。 【ともし火】 ともし火は命の火でもある。ともし火が消えると人も死ぬ。 「世人が愚かだから」と言って、白昼に火をともす。 白昼に火をともして、人間を探す。 白昼に火をともして、神を探す。 白昼に火をともすのとは逆に、闇夜に灯を消して真っ暗にする。それで悟りを開いた人がいる。 闇夜のともし火を守る。  【虎】 虎退治。 絵の虎。 心身を病んだ人間が、虎に変わる。 虎に変身する術。 虎に自分の身体を食わせる。 【鳥】 鳥の行動に教えられる。 鳥の行動から、人生や男女関係についての教訓を得る。 鳥に導かれて移動する。 鳥が、死体のありかを教える。 鳥が、盗難を教える。 千鳥の香炉が、身の危険を教える。 鳥の言葉に教えられる。 何らかのきっかけで、鳥の言葉が理解できるようになる。 聖者が鳥に説教する。 人が死後に鳥に化す。 人が生きたまま鳥に化す。 鳥が飛び入る。 鳥が手紙を運ぶ。 鳥の大群が、不特定多数の人々を襲う。 一羽の鳥が、恨みのある人を襲う。 鳥を探す。 絵に描かれた鳥の不思議。 【取り合わせ】 本来無関係の男女が、隣り合って並んでいるために、夫婦・恋人と見なされる。 男女二人の死体が同じ所に並んでいれば、心中と見なされやすい。 A地点の住所と、それとは無関係なB地点の電話番号を、隣り合わせに並べて記す。 大きなものと小さなものの取り合わせ。 奇妙な取り合わせ。 いくつかの要素を取り合わせて物語を創作する。三題噺(話)。 食べ合わせ。 【取り替え子】 生まれたばかりの赤ん坊を、他人の子と取り替える。 生まれたばかりの赤ん坊を、猪の子とすりかえる。 生まれる前に取り替える。 幼い子を取り替える・取り違える。 子を取り替えて育てる。 悪魔や魔法使いなどが人間の赤ん坊をさらい、代わりに自分の子を置いておく。 ジプシーが美しい女児をさらい、代わりに化け物のような醜い男児を置いておく。 【取り違え】 白粉(おしろい)と眉墨を取り違える。 主人の着物と間男の着物を取り違える。 手拭いと越中ふんどしを取り違える。 出来の良い作品と悪い作品を取り違える。 蝸牛と山伏を取り違える。 あわて者が、あらゆるものを取り違える。 【取り違え花婿】 男が、女の居所近くにいたため、その愛人と間違えられる。 【取り違え花嫁】 男が、目当ての女性とは別の人を誤って連れ出す。 【取り違え夫婦】 手違いによって、夫婦交換をしてしまう。 【泥棒】 宝石泥棒。 金塊泥棒。 死体泥棒。人間や動物の死体だとは知らずに盗む。 【トンネル】 トンネルを抜けて異郷へ行く。 トンネルを抜けて死者の国へ行く。 銀行の地下金庫までトンネルを掘る。 愛人の住む城までトンネルを掘る。 トンネルを掘って脱獄をはかるが、失敗する。 壁のトンネルを、ポスターで隠す。 通行の難所にトンネルを掘る。 【菜】 菜を摘む女に、王が求婚する。 菜(あるいは桑)を摘む女が、王の后になる。 菜を摘む女に、蛇や霊が寄って来る。 男が桑を摘む女を見て、それが自分の妻と気づかず口説く。 【名当て】 未知の植物(煙草)の名を当てるための計略。 立ち聞きすることによって、鬼などの秘密の名前を言い当てる。 思わず口にした言葉が、秘密の名前を偶然言い当てる。 秘密の名前を言い当てることができない人に、正答を教える。 【泣き声】 泣き声を聞き分ける。 女の泣き声の中にある嘘を聞き取る。 同じ一人の女の、嘘泣きと本泣き。 【謎】 怪物が人間に、怪物の正体を問う謎を出す。 怪物が人間に、答えが「人間」である謎を出す。 謎の言葉を残して死ぬ。 謎のメッセージを残して死ぬ。 女が住居、逢い引きの日時などを謎の形で告げる。 歌の形の謎。 答えのない謎。解決のつかない物語。 AかBかという謎に対して、AでもBでもない第三の解答が示される。 Aグループの人からはBグループの一員と見なされ、Bグループの人からはAグループの一員と見なされる、謎の人物。 ある詩句や語句が、物語の登場人物の運命を大きく変える。しかし、詩句・語句の内容そのものは物語の中で明かされず、読者にとっては謎のままに、物語が終わる。 【名付け】 名付け親。 子供の名前をつけ間違える。 子供に名前をつけない。 ひ弱な子が健康に育つように、強い動物の名前をつける。 親から与えられた名前に、ふさわしくありたいと思う。 妻が、夫との間にできた子供に、かつて夫が愛した女性の名前をつける。 人妻が、愛人との間にできた子供に、愛人と同じ名前をつける。 自分の名前を敵に与えて死んでゆくのは、生まれてくる子供に愛する人の名前をつける物語と、関連があるであろう。 俗世を捨てる人に、新たな名前を与える。 次々に新たな呼び名がつけられる。 呼び名の表記と意味が変わる。 災いを避けるために、名前を変える。 良くないことが起こったために、名前を変える。 命名の起源。 誤解によって名前がつく。 【名前】 威力ある名前。 自分の名前を忘れる。 名前の呼び方の不審。 怪物などから名前を呼ばれる。 怪物などから名前を問われても教えない。 名前を秘密にする者に、その名前を言わせる。 名前と命。死に瀕する人の名前を呼んで、生の世界へ引き戻そうとする。魂呼ばい。 名前と命。長い名前を唱えている間に、子供が死んでしまう。 名前と命。誰が名前をつけるかによって、生まれた子供の生死が左右される。 あだ名。 珍しい姓。 【波】 大波が、陸地の奥にまで到る。 高波を幻視する。  浪の音で天候を予知する。 波を数える。 光り輝く波。 【涙】 涙の力で開眼する。 涙の力で蘇生する。 涙の力で本来の心を取り戻す。 涙が毒となって死をもたらす。 涙の海。 紅玉の涙。真珠の涙。 血の涙を流す。 涙が枯れるまで泣き続ける。  うその涙  【難題】 娘が難題を出して、求婚者たちを退ける。 娘が難題を出して、求婚者たちを殺す。 娘が、求婚者である父親から逃れようと、難題を出す。 娘の父親が、求婚者や婿に難題を出す。 息子の父親や母親が、嫁に難題を出す。 娘の親が、求婚する動物に難題を課す。 賢者が求婚者に難題を出す。 王などの権力者が部下の妻を奪おうとして、部下に難題を出す。 主が従者の智恵を試すために難題を出す。 后が老人に難題を出す。 難題を分割して解決する。 からまり合ったものを解け、との難題。 AであってもBであってもならない、という難題。 Aでありつつ同時にBでもあれ、という難題。 最強の物どうしがぶつかり合い、競い合ったらどうなるか、という難題。 天の助けによって、難題が解決する。 難題を、解かないことによって解く。 【難題問答】 難題に対して難題を返す。 難題に対して直接答えず、反問する。 鳥の生死を問う。 不可能問答。  【虹】 虹が、水・酒などを飲む。 虹が、口中へ入る。 虹が女に子を産ませる。 虹のごとき日の光が、女に子を産ませる。 虹は、神の娘の貞操帯からできた。 希望の象徴の虹。 武器の象徴の白い虹。 二・二六事件前日の白い虹。 虹の橋。 【二者択一】 二つのものの中から、一方を選ぶ。 二つの生き方・二つの方法の中から、一方を選ぶ。 二つのうちどちらを得ようか迷ったあげく、どちらも得られなくなる。 二つの選択肢のどちらでもない、第三の道を選ぶ。 究極の二者択一。 生死のかかった選択。二者ともに生きることは不可能。どちらかが死なねばならない。 二人の子供のうちのどちらを助けるか。 二人の子供のどちらが長子か見分ける。 二人の子供のどちらが自分の子か、わからない。 恩師と愛人の二人から、一人を選ぶ。 二人の罪人の中から、釈放すべき一人を選ぶ。 【二者同想】 愛し合う夫と妻が、ともに同じようなことを考え、行なう。 『賢者の贈り物』(O・ヘンリー)のパロディ。 兄弟が、ともに同じようなことを考え、行なう。 敵対するAとBが、ともに同じようなことを考え、行なう。 女性を獲得したいと望むAとBが、ともに同じようなことを考え、行なう。 貧しい男女が、それぞれ金持ちのふりをする。 二者同想と思っていたら、そうではなかった。 【にせ花婿】 別人の名をかたって女と関係を結ぶ。 魔法などを用いて、目ざす女の夫の姿に変身する。 近代小説の中のにせ花婿。 無力な本物の花婿を助けて結婚させる。 求婚者たちの中に、にせ者が一人いる。  【にせ花嫁】 別人になりかわって嫁入りする。 魔物・妖怪の類が花嫁に化ける。 男に魔法をかけ、にせ花嫁を与える。 雲から造られたにせ花嫁。 五十人の花嫁を、一人だと思いこむ。 【にせもの】 他人になりすます。 にせの美術品や宝物を偽造する。 美術品を盗み、そっくりのにせものを代わりに置いていく。 美術品や宝石がにせものであることが発覚しないように、それを盗んでしまう。 物語の最後で、宝物がにせものであったことが判明する。 にせの剣。竹光あるいは木刀。 にせの内臓や舌。 にせものと思ったら本物だった。 にせものと本物の鉢合わせ。 にせもの対にせもの。 【日食】 日食を知っている人が、知らない人たちを脅す。 「日食を知らない原住民たちを脅そう」と考えるが、彼らは日食を知っていた。 合戦中に起こった日食。 イエス=キリストが処刑された時に起こった日食。 卑弥呼の時代に皆既日食があり、それが変化してアマテラスの岩戸隠れ神話(*→〔扉〕1の『古事記』上巻)になった、という考え方もある。 日食と月食の起源。 悪神が、日の女神を幽閉する。 悪魔が、お日さまとお月さまを飲みこもうとする。 太陽と月を、山に閉じ込める。 太陽と月が、岩屋に隠れる。 太陽の精・月の精が、他国へ去る。 月ではなく、暗黒星雲が太陽を隠す。 【尿】 巨人の尿。 女が尿をする夢は、王を産むことを意味する。 花嫁が尿をして、石に化す。 花嫁が尿をして、島に化す。 修行者の尿をなめて、鹿が子を産む。 寝小便。 尿検査。他人の尿を提出する。 【鶏】 鶏が鳴いて、岩屋戸や地底にこもった太陽を招く。 鶏を夜明け前に鳴かせ、朝だと思わせる。 人間が鶏の鳴きまねをする。 妖怪が鶏の鳴き真似をする。 金鶏の声。 鶏石の声。 朝鳴くべき鶏が、夜に鳴く。 【人魚】 男が人魚と結婚するが、後に人魚は夫と別れて海へ帰る。  男が人魚と結婚し、一緒に人魚の世界へ行く。 男と人魚が結婚するが、二人とも死んでしまう。  人魚の娘が、人間の王子を恋する。  貴公子が人魚を買う。 人間の夫婦が、人魚の娘を育てる。 人間が、人魚の肉を食べる。  人魚が、人間を食べる。 人間の女が、変身して人魚となる。 人間の男が、変身して人魚となる。 【人形】 人形が人間になる。 人間そっくりの人形。人形を人間に見誤ったり、逆に、人間を人形に見誤ったりする。 人形を人間のごとく見せかけて人をあざむく。 男が、美女の人形と夜をともにする。 人形に魂が入って動き出す。 人形から魂が抜け出て幽霊となる。 殉死者の身代わりの人形。 【人間】 神が人間を造る。 神が、人間の形態を変える。 鬼が人を造る。 骨をつないで人を造る。 未来の新人類の誕生。 宇宙旅行用に人間を改造する。 人間の中に潜む獣性。 【妊娠】 処女に妊娠・受胎を告知する。 玉を得る夢を見て、妊娠・出産する。  玉を得そこなうが、妊娠・出産する。  男が妊娠する。 病気だと思ったら、妊娠だった。 常に妊娠し続ける。 妊娠時のアクシデント。 妊娠期間中のアクシデント。 避妊。 【人数】 十三人は不吉な人数である。 八人が不吉だ、という物語もある。 知らぬ間に人数が増えている。 知らぬ間に人数が減っている。 入場者の数と、使われた切符の数が一致しない。 船に乗れる人数。 宇宙船に乗れる人数。 人間の数と花の数。 鳥の数と枝の数。 死体の数と懸賞金の額。 死体の数が多い。 人数を減らしても、仕事はできる。 人数が増えても、苦労は同じ。 【濡れ衣】 盗みの濡れ衣を着せられる。 文字どおり、「濡れた衣を盗んだ」との濡れ衣を着せられる。 「食べてはいけないものを食べた」との濡れ衣を着せられる。 謀反の濡れ衣を着せられる。 妻殺しの濡れ衣を着せられる。 濡れ衣を着せられても、否定しない。 進んで他人の罪を引き受ける。 殺人犯が、他人にその罪を着せようかと考えるが、思いなおして自首する。 「銀の食器を盗んだ」との濡れ衣を着せられる物語と、逆に、盗んだにもかかわらず「あげたのだ」と言われる物語。 「甕を盗んだ」との濡れ衣。 濡れ衣を晴らす歌。濡れ衣を着せられて死んだ北野天神に訴える。 冤罪事件。 【願い事】 願いは一度口に出せば叶う。 三つの願い。願い事をする前と同じ状態に戻ってしまう。 二つ目の願いを、三つ目の願いで取り消す。 三つ目にようやく賢明な願い事をする。 愚かな願い事・誤った願い事をしたために、予想外の悪い状況におちいる。 【猫】 飼い主に富と地位をもたらす猫。 綱をつけて飼う猫。 猫を恐れる人。 老人と老猫。 猫の教え。 人間が猫に生まれ変わる。 猫が人間に生まれ変わる。 猫女房。 もの言う猫。 人間が猫に言葉を教える。 妖猫が人を喰い殺して、その人に化ける。 死体を残さぬ猫。 猫の名前。 猫にとってライオンは、神のごとき存在である。 夫と牝猫と妻の三角関係。 夫と雌猫と二人の妻の、複雑な関係。 【寝言】 寝言で正体がわかる。 寝言で愛人の名前を呼ぶ。 寝言で自分の情事を語る。 「寝言を言った」という嘘。 眠ったふりをして、わざと寝言を言う。 子供時代の寝言。 いびき。 【鼠】 鼠は魂と深い関係を持つ。 変事・凶事の発端としての鼠。 人間が鼠に変身する。 鼠が人間に生まれ変わる。 鼠の援助。弓の弦を喰い切る。 鼠の援助。矢を捜して来る。 鼠の恩返し。 猫を恐れる鼠。 猫と鼠が憎み合うようになった起源。 猫と互角に戦う鼠。 鼠婿。 【熱湯】 美女の身体を熱湯に浸す。 山姥の身体に熱湯を浴びせる。 敵軍の兵士たちに熱湯を浴びせる。 熱湯に身体を浸すと心地よい。熱湯から出ると熱くてたまらない。 身体にふれた水が、たちまち熱湯になる。 熱した油を用いて、妖怪や盗賊を殺す。 熱して溶かした鉛を注ぐこともある。 現世で犯した悪業の罰として、死後、熱湯・熱銅を飲まされる。 「死者が熱銅を飲む」のとは異なり、「生者が熱銅を飲む夢」を見る物語がある。夢の世界は冥界と同じ、ということであろうか。 地獄で、煮えたぎる血・瀝青の中に入れられる。【眠り】 【眠り】 眠る女が目覚めると、そこに夫となるべき男がいる。 眠る女が、自分の産んだ子によって目覚めさせられる。 女が目覚めるのが遅いと悲劇になる。 眠る女を捨てて去る。 眠る女の醜い姿。 老人は娘を目覚めさせられない。 娘が目覚めたとしても、相手が老人では、娘は逃げ出す。 男が目覚めて女を見出し、結婚する。 英雄は長い時間眠ることがある。 永遠の眠り。 数十年から数百年の眠り。 野山や森へ行き、二十年〜百年も眠ってしまったことに気づかず、家へ帰る。 人類の睡眠時間が、しだいに長くなる。 長く眠る怪物。 眠る怪物を退治する。 眠る怪物の宝物を盗んで逃げる。 眠る敵を討つ。 眠る夫を殺そうとする妻。 冷凍睡眠。 神の眠りと人間世界。 眠い町。 眠れぬ人。 眠ったふり。 【閨】 閨の怪。 愛人と寝ている閨へ、配偶者が乗り込む。 帝と妃の閨へ、家臣が参入する。 閨の隔て。剣。 閨の隔て。毛布や帯。 閨の隔てを取り除く。 他人の閨を遠方から盗み見る。 【のぞき見】 夫が妻の姿をのぞき見る。のぞかれた妻が夫を追う・襲う。 夫が妻をのぞき見る。正体を知られた妻が去る。 夫が妻をのぞき見て、罰を受ける。 夫が妻の様子をうかがって、妻の本心を知る。 人妻の姿をのぞき見る。 僧をのぞき見る。 のぞき見して異類の正体を知る。 のぞき見から情交・結婚にいたることが多い。 他人の部屋をのぞく。 他人の部屋をのぞき見て、殺人を犯す。 他人の部屋をのぞき見て、殺人事件を察知する。  他人の家をのぞき見て、殺人現場を目撃する。しかしそれは、殺人の真似事をしているだけだった。  【乗っ取り】 客として訪れた人物が、しだいに主人を圧迫し、最後には家を乗っ取る。 突然押しかけて来た訪問者(たち)が、たちまち家を乗っ取る。 魂が身体から離れたすきに、悪霊がその身体を乗っ取る。 死者の魂が、生者の身体から魂を追い出して、その身体を乗っ取る。 先に死んで葬られた死者Aの魂が、後に死んだ死者Bの身体に乗り移って蘇生する。その際、Bの身体を変形させて、Aの身体にしてしまう。 人面瘡(人面疽)が宿主に取って代わる。 【のりなおし】 悪事・凶兆と思われることがらを、善事・吉兆のように解釈しなおす。 凶夢と思われるものを吉夢と解釈して、良い運命をもたらす。 凶兆と知りつつ「吉夢」といつわり述べる話もある。 吉夢であったのに、悪く解釈したために運を取り逃がす。 【呪い】 言葉で呪う。 人形を刃物で切って呪う。 釘を打って呪う。 土器や石などの呪物を、ある特定の場所に置く。  呪いのビデオ。 家にこもって物忌みされると呪いが効かないので、相手を外へ出すことが必要である。 呪いが自分の身に返る。 期限つきの呪い。 家にまつわる呪いを消すため、嫁が命を捨てる。 いちじくの木を呪って枯らす。 子供たちを呪って死なせる。 【葉】 葉を用いて、傷を癒し死者を生き返らせる。 一枚の葉が、死の遠因になる。 死者の国へ入るために必要な、黄金の葉。 落ち散らぬ一枚の葉。 赤ん坊が葉に変ずる。 受け取った銭が、後に見ると葉になっている。 受け取った金貨を、枯れ葉とすりかえる。 葉に虫喰いの文字があらわれる。 葉に薬で文字を書き、虫喰いのように見せかける。 片葉。 葉に魂を入れて、魚を作る。 【歯】 歯の美しい天皇 歯がなかった皇后。  金(きん)を入れて歯を飾る。 金歯を売る。 歯形。 自分の歯が抜ける夢。 他人の歯が抜ける夢。 虫歯を抜く。一本で二文、二本だと三文。 歯痛。 【灰】  灰をまく。 死者を火葬にした灰。 不死身の怪人も、身体を焼いて灰にしてしまえば、生き返ることはできない。 灰にまみれて暮らす娘。 灰で縄をなう。 床に灰をまき、足跡を取る。 灰の上の足跡を消す。 【売買】 思いがけず高値で売れる物。 高値で売れた物が、さらに高い値段で転売される。 安茶碗を高価なものと早合点したことがきっかけで、本当に高価な茶碗になる。 無価値なものを高価なもののように思わせ、金をだまし取る。 貴重な物を、知らずに安い値段で売る。 福運をもたらすはずのものを、金に困って人に売る。 幸福をもたらす夢を売り買いする。 両人が承知で売り買いするのとは異なり、夢を見た当人の知らぬうちに、その夢が他人に取られる話もある。 一見、無価値と思われるものを買う。 だんだん安くなる物。 無意味な売買。 いかさまの売買。いったん買った商品をすぐ別の商品に買い換え、売り手を混乱させて、目的の商品を正価の半額で手に入れる。 上記と同様の方法を用い、商品を半額ではなく、無料で手に入れる。 単純なごまかしで、商品を安く買う。 売り手を錯覚させて、商品をただで手に入れる。 一つで二文、二つだと三文。 特殊な事情のために高値で売買される物。 同じ物を何度も売る。 【蝿】 人間が死後、蝿に転生する。 生きた人間の身体から抜け出た魂が、蝿に見える。 蝿と人間の合成。 蝿が馬車の屋根にとまる。 蝿が飛行機の中に入り込む。 蝿が建てた屋敷に、多くの動物が住む。 蝿斬りの剣(つるぎ)。 【墓】 夫婦・恋人の墓。 主人と忠犬の墓。 落武者の墓。 墓の中の人。 墓の中の財宝。 墓をあばく。 墓に咲く花。 自分の名前が書かれた墓石。  子供が、小動物の墓を作って遊ぶ。 他人の墓。 【白髪】 生まれながらに白髪の人。 白髪で生まれ、その後だんだん若返る。 子供の頃から、頭髪の半分が白髪。 黒髪が短時間のうちに白髪になる。 逆に、白髪が一晩のうちに黒髪になる。 白髪は老いのしるしである。 老いのしるしの白髪を黒く染める。 白髪は神性のしるしでもある。 【禿げ頭】 禿げ頭の男。 禿げ頭を隠すかつら。 禿げ頭を隠す月桂冠。 禿げ頭の女。 蛇に呑まれて禿げ頭になった人と、蛇を食べて禿げ頭になった人。 禿げ頭の目印。 禿げ頭と薬罐(やかん)。  禿げ頭と瓢箪(ひょうたん)。 円形禿げ。 禿げ頭の老兵たち。 【化け物屋敷】 化け物が出る宿を訪れる・泊まる。 【箱】 男が箱をあける。 男が開けてはいけない箱を開けたために、老衰する。 男が開けてはいけない箱を開けたために、鼻血が出る・死ぬ、などの目にあう。 箱を開けても、中のものを見なければ、無事でいられる。 女が箱をあける。 箱の中の男性器。 箱の中の男性器と眼球。 箱の中の宝物。 箱の中身を言い当てる。 入れ物の中身を偶然に言い当てる。 箱の中に入る人。 箱を頭からかぶる人。 箱の長さが伸びる。 【箱船(方舟)】 箱船を造って大洪水に備える。 二十世紀の箱船ともいうべき核シェルターにこもって、核戦争に備える。 女・赤ん坊・卵などを箱に入れて海に流す。 【橋】 橋は、神霊などからの情報を得る所である。 橋は、鬼や怪物など恐ろしい物と出会う所である。 橋は、生者と死者が出会う場所である。 橋は、男女が出会う場所でもある。 橋は現実世界と異郷を結ぶものである。 橋を架ける。 橋が落ちる。 橋を破壊する。 多くの動物が連なり並んで、橋を作る。 わらが横たわって橋になる。 「私」が横たわって橋になる。 橋から落として殺す。 【梯子】 天へ通ずる梯子。 神宝(=神)の所まで登るための梯子。 雲まで届く梯子。 梯子を外して、二階から降りられなくする。 梯子を外して、地上へ登れなくする。 二階から梯子を外すと、敵も登れないが自分たちも降りられない。 梯子の夢。 人間梯子。 【裸】 男の裸踊り。 女の裸踊り。 【八月十五夜】 陰暦八月十五夜の宴。 八月十五夜の思い。 八月十五夜の出会い・再会。 八月十五夜の契り。 八月十五夜のおば捨て。 八月十五夜の妖怪退治。 八月十五夜の怪異。 八月十五夜に月世界を訪れる。 八月十五夜に月世界へ帰る。 八月十五夜前後の死。 【八人・八体】 八人の男。 八人の乙女。 八人の美女と見えて実は一人。 一つの身体に付属する八つのもの。 【花】 花の精。 人が死に、その血を吸った地面から花が咲き出る。 女が百合の花に変身する。 殺した女を記念する花。 血染めの赤い花・茎・根。 夢に見た花。 悪の象徴である花。 天から花が降る。 絵に描かれた花。 花に託して、思いを述べる。 【鼻】 鼻がもとにもどる。 鼻が長くなる。 大きな鼻の人。 接吻の邪魔になる鼻。 鼻を斬り取る。 【母子婚】 互いに母であり息子であることを知らずに、性関係を結ぶ。 互いに母であり息子であることを知りつつ、性関係を結ぶ。 母親との性関係を夢想する。 母が、息子のみならず孫とも結婚する。 【母殺し】 子供が母を殺す。 母殺しの未遂。 母と知らずに殺す。 【母さがし】 母を捜し尋ね、再会する。 母を捜し尋ね、最後の別れをする。 母を捜し尋ねてようやく再会したが、母は冷淡だった。 【母と息子】 息子が亡母を恋う。 少年が、母に似た少女を恋し、母の幻影を見る。 【母と娘】 母と娘とが、同じ一人の男と関わりを持つ。 【母なるもの】 神託の「母」を、「大地」と解釈する。 夢に見た「母」を、「大地」と解釈する。  【母の霊】 母の霊が息子を救う。 母の霊が娘を救う。 【腹】 怪物・妖怪などの腹に呑みこまれる。 腹の中あるいは体内に入って病者を治療する。 腹を切り裂き、体内に貴重な品を入れて守る。 妊婦の腹を裂く。 腹中の蛇。 腹中の声。 【針】 針が蛇をしりぞける・退治する。 針と出産。 僧の誕生と針。 針の入った飯。 飲みこんだ針を体外に出す。 針の呑みくらべ。 人を生かす針。病気を治す針。 人を殺す針。 針の穴。 身体に針を刺して、文字を刻む。 身体に針を刺して、絵模様を彫る。 【反魂】 死者の魂を現世に呼び戻す。 魂を呼び戻す反魂香と間違えて、反魂丹(=解毒剤の一種)を炊き、煙だらけになる。 亡妻の魂が反魂丹に感応した、と思い込む。 【半死半生】 半死半生の人。 半死半生の動物・植物。 健康な人 ―― 半身不随の人 ―― 死んだ人。 【犯人さがし】 大勢の容疑者の中から犯人を見つけ出すさまざまな方法。 犯人さがしを命ずる人物が、やがて自分自身が犯人であったことを知る。 自分自身が犯人であることを知っている裁判官が、それを隠して裁判を行なう。  犯人を一人に絞り込めず、逆に、末広がりに広がって行く。 【火】 神々が人間世界に火をもたらす。そのため神が犠牲になることがある。 人間が死と引き換えに、火を得る。 神にも等しい偉大な王が、人間世界に火をもたらす。 動物が人間に火を与える。 神が火を降らせて、罪深い人々を滅ぼす。 火を乗り越えることによって、男は女を得ることができる。 火の中に入って無事であれば、身の潔白が証明される。 現世の物を火で焼くと、冥界へ送ることができる。 紙銭(しせん)。紙を銭の形に切って、金銀の箔を貼ったもの。これを火で焼くと、冥府の役人や亡者たちが受け取って使うことができる。 紙を着物の形に切って焼き、冥界の着物とする。 紙の旗や木刀を焼く。 【光】 身体から光を放つ人。 光を放つ神像・仏像。 光る樹木で仏像を造る。 光る剣。  光る鎧。 光る石。 光が口に入って懐妊。 光とともに誕生。 人の死に際して光が現れる。死に近い人が光に包まれる。 【飛行】 飛行能力を持つ超人。 修行して飛行術を身につけた人・身につけられなかった人。 飛行する男が、女の肌を見て墜落する。 人工の翼をつけて空を飛ぶ人。 気球に乗って空を飛ぶ人。 動物に乗って空を飛ぶ人。 空飛ぶ絨毯・トランク。 鳥によって飛行する。 物を飛ばす。 自ら飛ぶ鏡。 自ら飛ぶ梅の木。 【飛行機】 飛行機による郵便物の輸送。  飛行機事故。 爆発物を持って旅客機に搭乗する。 【美女奪還】 鬼にさらわれた美女を、英雄が取り戻す。 銀河帝国軍に捕らわれた姫君を、英雄が取り戻す。 怪物にさらわれた妻を、夫が取り戻す。 奪われた人妻を取り返そうと、戦争を始める。 怪物に奪われた美女を人間が奪い返すのとは逆に、人間に奪われた美女を、怪物が取り返しに来る。 【額】 特別な人物であることを示す印が、生まれつき額にある。 不死の印を額につけて生まれる。 神や神の使いなどが、人の額に印をつける。 悪魔の子ダミアンの「666」は、頭部にしるされている。 処罰として、額に傷をつける。 大勢と戦って、額に傷を負う。 少女を救って、額に傷を負う。 女に打たれて、額に傷を負う。 死者の額に文字を記す。 【棺】 自ら棺の中に入る人。 棺の中に自分と同じ人間がいる、との夢。 中空から自分の柩を見下ろす、との夢。 一つの棺に、二人の死体を入れる。 樽や桶の形をした棺を、駕籠のように二人でかつぐ。 早桶に、死体を上下逆さまに入れる。 棺を引きずって旅する男。 ガラスでできた棺。 「官(かん)」と「棺(かん)」。 【人買い】 人を買い、労働力として転売する。 養い親のもとから、子供を買う。 子供を、買うのではなく借りる。 【人質】 一人の賊が人質を取って小屋などに逃げ込む。 人質を取らず、空き家に立てこもる物語もある。 三人の脱獄囚が、一家四人を人質にする。 友人を人質にする。 大勢の人質。 人質の命を助けるために、あえて傷つける。 【人魂】 死の直前あるいは死の数日前に、人魂が身体から出て行く。 死の何ヵ月か前、時には一年以上も前に、人魂が身体から出て行くこともある。 多数の人魂が現れ、その後、大勢の人々が死ぬ。 死者を迎えに来る人魂。 にせの人魂。 【人違い】 人相・風体などにより、人違いする。 人違いを契機にして物語が始まる。 「あなたが捜しているのは私ではない。人違いだ」と言う。 「私が捜しているのはあなたではない。人違いだ」と言う。 人違いしたふりをして、情報を得る。 人違いしたふりをして、本人には言えないことを言う。 目指す本人なのに、人違いだと思う。 人違いであることを、相手に悟られないようにふるまう。 【一つ覚え】 一度うまくいったことに味をしめ、別の状況下でも一度目と同じことを言ったりしたりして、失敗する。 一つ覚えの言葉を、何度も繰り返す。 一つ覚えが、思いがけない形で功を奏する。 愚か者の一つ覚えではなく、悟達の境地ゆえに、異なる問いに同じ言葉で答えるばあいがある。 【人妻】 人妻を奪う。 他人の愛妾を奪う。 人妻を愛しながらも肉体的には結ばれない。 夫のもとへ戻る人妻。 人妻に言い寄る男。無力な夫。 人妻との恋を成就させる。 【一つ目】 一つ目の神・鬼・怪物。 一つ目小僧 一眼国。 三人が、たった一つの目を用いる。 五匹が、たった一つの目を用いる。 【人柱】 誰を人柱にしたらよいか、提案した人自身が人柱にされる。 提案者が、自らが人柱に選ばれるように細工をする。 誤解により、自ら人柱になるような行動をしてしまう。 人柱にされる人の身代わりに、別の人物が人柱となることを志願する。 落とし穴に落とされ、知らぬうちに人柱にされてしまう。 人柱にされた娘が大蛇に化す。 人柱にされた女性の泣き声が聞こえる。 人柱をやめて、代わりに石を埋める。 奈良の大仏建立の時の人柱。 【一夜妻】 男が女と一夜だけの契りを結んで別れる。 男は一夜だけの関係のつもりだったが、女はいつまでも男につきまとう。 【一夜孕み】 神は、ただ一度の交わりで子をなすことができる。 神の性質を受け継いだ人間も、一度の交わりで子をなすことがある。 神およびその直接の子孫でありながら、一夜で孕ませる力があることを忘れていることがある。 【一人三役】 一人が三人の人物を演じ分ける。 一人が事件の被害者・犯人・探偵の三役を演じる。 一人で三人の人物に扮しつつ、さらに架空の人物二人の話をして、合計五人いるように見せかける。 【一人二役】 一人二役を演じて二重の生活をする。 第一の人物を抹殺して、本来存在しない第二の人物になる。 第二の人物を造るが、後に抹殺する。 一人の人間が人格の分裂を起こし、無意識のうちに二役を演ずる。 正義の味方は、ふだんの顔と悪者と戦う時と二つの顔を持つ。 正義の味方が一人二役をしているように見えるが、実はそうではなかった。 犯人と警察官とが同一人物。 犯人と探偵とが同一人物。 善人・悪人の二役をする。 【秘密】 秘密の子(父が異なる)。 秘密の子(母が異なる)。夫が愛人に産ませた子を、妻が自分の子として育てる。 秘密の子(母が異なる二組の双子)。 秘密の子(父も母も異なる)。 秘密を語る(口論して)。 秘密を語る(主人に叱責されて)。 【百】 百日待つ。 百年待つ。 百年の眠り。 百年の死。 お百度参り。祈願成就のために、社寺の境内の一定距離を百回往復する。 百日参り。 百人の子供。 百枚の原稿用紙。 完全数としての百。 【百物語】 何人かが集まって怪談を語り合う。最後の百話目に到れば、幽霊や妖怪が出現するなどの怪異が起こるという。 百物語がだんだん進み、最後の百話目に近づくと、化け物の方でも「そろそろ出ようか」と準備をする。 百物語が終わりに近づくと、皆こわがって帰ってしまう。 百物語を録音する。 中・近世西欧の百物語。百は完璧数と見なされた。 【憑依】 生者・死者の霊魂が他者にとりつき、様々な行動をさせる。 生者・死者の霊魂が、重要な情報を告げるために、人に憑依する。 AがBを殺す。殺されたBの霊魂が、Aにとりついて復讐する。 夫を残して死んだ妻が、夫の新しい妻となるべき女に憑依する。 悪魔・悪霊がとりつく。 「だり仏」・「ひだる神」がとりつく。 狐がとりつく。 狐が人にとりつくやり方。 狐は、生きた人間ばかりではなく、死者にもとりつくことがある。 狐がとりついて、昔の合戦の物語をする。 憑依による物語か、空想の物語か、区別がつかない。 死んだ恋人の声なのか、生者が意図的にあるいは無意識に死者の声色をつかったのか、区別がつかない。 次の例は、蛇が人間に憑依し、人間の声帯を借りて、怒りの声を発したのであろう。 【病院】 異郷から帰って来た男が、精神病院に収容される。 社会の通念と異なる考えを持つ男が、精神病院に収容される。 凶悪な犯罪者が、精神病院に収容される。 病状の変化とともに、患者を上階・下階に移動させる病院。 【病気】 結核。 白血病。 癌。 癌への恐れ。 ハンセン病。 流行性感冒(インフルエンザ)。 腸チフス。 破傷風。 筋萎縮性側索硬化症。 病気と階級。 病気を治してくれる神や仏。 病気を、他人にうつして治す。 病気は治ったが、死んでしまった。 「重病だ」との、医師の誤診や患者の誤解。 いつも「自分は病気である」と思っている男。 善意で病人の世話をするが、恩を仇で返される。 伝染病のために人類が死滅する。 【瓶(びん)】 不思議な生き物の入った瓶(びん)。 瓶(びん)の中の手紙。 罎(びん)に映る顔。 【貧乏神】 貧乏神を祀る。 貧乏神を追い出す。 凶夢を、貧乏神を追い出す歌に転換する。 貧乏神を追い出すことに失敗する。 貧乏神から逃れられない。 【封印】 魔物や怪物を、地中あるいは深淵に封ずる。 瓶など小さな容器に封ずる。 封印を解く。 効力のない封印。 【笛】 さまざまな笛の呪力・奇瑞。 神や霊を呼び寄せる笛。 笛の音をほめる声。 持ち主に祟る笛。 名笛と贋笛。 口笛。 【福の神】 福の神が家から出て行く。 福の神たちの競争。 富をもたらす化け物キジムナー。 家の中で目撃される、ざしきぼっこ・ざしきわらし。 ざしきぼっこ・ざしきわらしが家から出て行く。 【袋】 開けてはならぬ袋。 いくらでも米や金が出てくる袋。 さまざまなものを吸い込む袋。 危急の時に開ける袋。 命の入った袋。 多くの目玉の入った袋。 袋に生命が宿り、人間の形になる。 大きな袋には、人間が入る。 【不死】 不死者。 不死ではあるが、老衰する。 不老ではあるが、死んでしまった。 不死を求める人。 不死性を他にゆずる。 不死をもたらす河と死をもたらす河。 不死の薬を得る。 【双面(ふたおもて)】 死霊Aが生者Bにとりつく。さらに死霊Aは、生者Bとそっくり同じ姿で出現して、AとBが同じ振りで舞う。 死霊Aと死霊Bが合わさって一体になる。死霊(A+B)は、生者Cとそっくり同じ姿で出現し、(A+B)とCが同じ振りで踊る。 【双子】 瓜二つのため、間違えられる。 名前まで同じの双子。 双子の一方が善良、他方が邪悪。 男女の双子。 親が、双子の一人を残し一人を捨てたため、双子が互いを知ることなく別々に育つ。 両親が離婚する時、双子を分けたため、双子が互いを知ることなく別々に育つ。 親が双子の一方を捨てるが、後に取り戻す。 双子の一方が、地下世界へ行ってしまう。 胴体部分が癒着した双子。シャム双生児。 人工的にシャム双生児を造る。 胴体部分が癒着した三つ子。 双子の一方が畸形嚢腫。 父親の異なる双子。 父親の異なる二組の双子(あるいは四つ子)。 双子の起源。 双子が生まれた時の父親の言動。 胎内にいる時から争う双子。 【二つの宝】 二ふりの剣。 剣と折紙(=鑑定書)。 槍と杯。 二つの指輪。 二つの宝を手放すと死ぬ。 【二人夫】 二人の男が一人の女を愛し、女はどちらを選ぶこともできず自死する。 二人の男が一人の女を愛し、女はどちらを選ぶこともできず自死しようとするが、死にきれない。 二人の男が一人の女を愛し、男が二人とも自殺する。 二人の男が一人の女を愛し、女が一方の男を殺す。 二人の男が一人の女を愛し、一方の男が女を殺す。 二人の男が一人の女を愛し、一方の男が他方の男を殺す。 二人の男が一人の女を愛し、一方の男が女への恋をあきらめて身を引く。 一人の男との関係が終わった後に、別の男に愛される。後の男が帝や関白の子などで、最初の男よりもはるかに身分が高く、女が幸福な生活に入る。 二人の天皇を夫とする。 最初の夫も、次の夫も死に、女も自殺する。 夫の死後、その夫を殺した男と恋愛関係になる。 二人の男と一人の女、合計三人が仲良く暮らす。 現世の夫と来世の夫。 【二人妻】 男がもとの妻のほかに愛人を作るが、やがて、もとの妻の美質に目覚める。 一ヵ月を十五日ずつに分けて、二人の妻の所へ通う。 妻と妾が一日交替で、夫とベッドを共にする。 二人の妻を平等に愛そうとして、盲目になる。 想像上の二人妻。 二人の妻が夫を譲り合う。 二人の妻のために禿げ頭になり、捨てられる。 妻妾同居。夫と妻二人、合計三人が仲良く暮らす。 妻妾対立。互いに相手を呪い殺そうとする。 夫が新しい女に心を移したので、もとの妻が怒って家を出る。 二人の妻の死。 狐妻と幽霊妻。 現世の妻と来世の妻。 二人妻の一方がにせもの。 二人妻が両方とも本物。 【二人同夢】  二人の人間が同じ夢を見る。 夫婦恋人が、お互い相手を夢に見る。 二人の僧が、お互い相手のことを夢に見る。 二人が、それぞれ相手の見るべき夢を見る。 三人同夢。 五人同夢。 多人同夢。 【二人一役】 二人が協力して、一人ではできないことをする。 Aは殺人を考えるだけで実行はしない。Bは、Aの考えを十分に理解できないものの、それに従って殺人を実行に移す。 一人の盗賊の奇妙な仕業と思われたことが、意図を異にする二人の人物の行ないであった。 死者二人の霊が合体して、一人の生者の姿になる。 【仏舎利】 釈迦の遺骨である仏舎利は、白い玉であり、傷つくことも砕けることもない。 掌に仏舎利を握って生まれる。 仏像から仏舎利を取ることができるか。 【舞踏会】 貴族あるいは上流社会の生活様式としての舞踏会。 男女の出会いの場としての舞踏会。 舞踏会の夜の事件。 仮面舞踏会の扮装。 【船】 船が氷山と衝突する。 船が大津波を受けて転覆する。  船が台風で転覆・沈没する。 乗組員のストライキ。反乱。 船の発明。 たらい舟。 ヨットに乗る男二人と女一人。 救命ボートに乗る男三人。 船の中の一人が、海に入る。 船の中から一人を選んで、海に入れる。船の外へ追いやる。 沈んだ舟と沈まなかった舟。 【不能】 戦傷によって、性的不能になる男。 生まれつき・あるいは病気などによって、性的不能になる男。 死んだ妻の呪いによって、夫が性的不能になる。 不能者の暴行。 【不倫】 夫の不倫の結果、妻が心を病む。 夫の不倫の結果、妻が死ぬ。 夫の不倫相手の女が自殺する。 夫の不倫の結果、妻が夫を殺す。 妻と情婦が手を組んで夫を殺す、と見せかけ、実は夫と情婦が共謀して、妻を死に追いやる。 不倫願望 上司の不倫。 【風呂】 玄関で風呂に入る。 五右衛門風呂(=風呂の底が釜になっており、下から直に湯を沸かす)の入り方。 銭湯の男湯と女湯。 入浴中の妻が、夫の危難を救うため、裸のまま出て来る。 風呂場で丸腰でいるところを、襲って殺す。 風呂場なら丸腰だろうと思って襲い、失敗する。 風呂場に閉じ込めて蒸し殺す。 妻が夫を風呂に入れて殺そうとするが、失敗する。 銭湯での殺人事件。 【分身】 自分の分身が、方々で知人たちに目撃される。 自分の分身が知人たちに目撃され、やがて自分もその分身を見る。 一人の人物が、同時に二ヵ所で目撃される。 一人の人物が、同時に二つの窓を通り抜ける。 家へ帰って来た自分と、床に臥していた自分。 現在の自分と未来の自分の対面・対話。 現在の自分と過去の自分の対面・対話。 自分の心が生み出した幻覚との対面・対話。 多数の分身。 剣で縦に斬られて、一人の人間が二人になる。 大砲に吹き飛ばされて、身体が左半身と右半身に分かれる。 股裂きの刑を受けて、身体が左半身と右半身に分かれる。 身体が、上半身と下半身に分かれる。 他者を殺したつもりで、実は自分自身を殺す。 【兵役】 兵役によって、夫婦や恋人が引き裂かれる。 兵役によって引き裂かれた夫婦が、再び結ばれる。 兵役を免除される。 兵役を逃れるために、狂人のふりをする。 兵役を忌避して隠れる・逃げる。 兵役を喜び、「ずっと軍隊にいたい」と願う。 有力者の子弟が兵役を免除され、その代わりに、別の人物が不当に徴兵されることがあった。 兵役により、野球選手としての一生を台なしにされる。 兵役による戦傷。両手を失う。 兵役による戦傷。四肢を失う。 兵役を志願し、戦死する。 兵卒が、戦犯として処刑される。 戦場へ行く女学生たち。 戦地から復員した将校。 【蛇】 蛇と剣は深い関わりを持つ。 蛇と酒。 蛇と食物。 蛇を食べる。 人が死後に蛇に化す。 恨みを抱いて死んだ女が、蛇となって仏壇に現れる。 仏壇に蛇が現れても、それは死者と関連があるとは限らない。 蛇が死者の魂と見なされることを利用して、殺人を死霊の祟りのように見せかける。 人の臨終の前後に現れる蛇。 死後蛇に化した、あるいは、魂が蛇の形で現れたように、人々に思わせる。 人が生きたまま蛇に化す。 人の両肩から蛇が生え出る。 蛇の身を捨てて、人や天人の姿になる。 双頭の蛇を見ると、死ぬ。 蛇の化身の女児を見ると、死ぬ。 蛇に追われる。 蛇の作り物。 【蛇退治】  神や英雄が大蛇を退治する。 英雄は、赤ん坊の時でさえ、蛇を退治することがある。  近代の英雄が蛇を退治する。 女が蛇を退治する 蛇が道をふさぐが、英雄は恐れず通る。 開墾の妨げをする蛇を追い払う。 【蛇女房】 男が美しい女と結婚するが、女の正体は蛇だった。 半人半蛇の女と交わる。 蛇が男性器をくわえる。 【蛇婿】 蛇が人間の男に化けて、女と交わる。 蛇体の神が人間の女と交わる。 蛇が人間の女に巻きつく。 女神が蛇と結婚する。 蛇婿の本体は、美青年であった。 蛇婿と人間の女との間に生まれた子供の身体的特徴。 蛇が女性器をねらう。 【蛇息子】 人間の女が小蛇を産み、育てる。蛇は成長後、昇天しようとして失敗する。 人間の夫婦が小蛇を育てる。蛇は成長後、昇天する。 独身者が小蛇を育てる。蛇は成長後、馬や人を呑み、町を水没させる。 【部屋】 四季の部屋。 一年十二ヵ月の部屋。 見ることを禁じられた、四季の部屋・十二ヵ月の部屋。 人体の血や油(脂)をしぼり取る部屋。纐纈城。 多くの死体がある部屋。 見ることを禁じられた、多くの死体のある部屋。 子供を部屋から外にださないようにして保護する。 自ら部屋に閉じこもる。引きこもり。 蛇の室。 小さな部屋の中の大空間。 小さな部屋での怪事。 【変身】 人間が、魔法などによって動物に変身させられたり、醜い姿にされたりする。後に、もとの姿に戻れることもある。 美女が動物の皮をかぶって変身する。皮を脱げばまた美しい姿にもどる。 博士が薬を飲んで別人に変身し、薬を飲んでまたもとにもどる。しかし次第にもとの姿にもどりにくくなる。 日本人が四年周期で変身し、西洋風の華やかな歓楽を享受する。しかしやがて日本の暮らしに心の落ち着きを感じるようになる。 魔法がとけて、動物が人間に変わる。 蛇や田螺が人間に変わる。「魔法がとけた」とは明示されない。 明確な理由なく、一人の人間が動物に変身する。 明確な理由なく、大勢の人間が動物に変身し、一人だけ人間のまま取り残される。 計略を用いて怪物を小さく変身させる。 身体が大きくなったり小さくなったりする。 変身を重ねる。次々といろいろなものに変身する。 醜貌・奇形から美貌に変身する。 動物や怪物が、母・伯母などに変身して訪れる。 狐が、伯父に化けて訪れる。 鬼が、弟に化けて訪れる。 身体全体ではなく、手足だけを変身させる。 男女二人が協力して、一まとまりの物に変身する。 【返答】 魔や霊などの問いかけに、返事をしてはいけない。 問いかけに返事をして、福運を授かることもある。 返答するはずのない杭が返答する。 返答するはずのない鴛鴦が返答する。 返答するはずのない死体が返答する。 返答するはずのない米が返答する。 鸚鵡返しの返答。 鸚鵡返しの返歌。 返歌すべきところを、せずにすます。 無心の返答。 【忘却】 すべてを忘れる。 王が愛人を忘れたまま、長年月が経過する。 王が愛人を忘れ、愛人は死ぬ。 男が薬を飲まされて、妻を忘れる。 男が呪いによって、妻を忘れる。 男が、年月の経過につれて、しだいに恋人のことを忘れる。 男が、恋人と結婚したことを忘れてしまう。 王子が恋人を忘れるが、恋人が王子に自分を思い出させる。 自分のした行動を忘れ、それを誰か他の人間のやったことだと思う。 自分の考えたアイデアを忘れ、それを他人に教えてもらおうとする。 重要な言葉やことがらを忘れる。 長期間に渡る習慣ゆえに、その習慣が期限つきであることを忘れる。 願望を意識下に抑圧したために起こる忘却。 忘却の国。 異世界へ帰る人は、現世の人間への感情を忘れてしまう。 死後の世界へ行った人は、現世に生きていた時の心を忘れてしまう。 【暴行】 処女が自分の純潔を犠牲にして、肉親の敵(かたき)である男を暴行犯に仕立て上げる。  異物を用いての暴行。 「黒人が、白人女性を暴行した」との訴え。 暴行犯との、思いがけぬ再会。 夫の目の前で、妻が悪人に暴行される。その後の妻の言葉。 『今昔物語集』巻29−23にもとづく『藪の中』(芥川龍之介)では、若い男(盗賊多襄丸)、夫(金沢武弘)、妻(真砂)の言い分が食い違う。 『藪の中』(芥川龍之介)にもとづく『羅生門』(黒澤明)では、事件を目撃した木こりが最後に「真相」を語る。 暴行された人妻が、そのことを夫に知られたくない、と思うこともある。 【帽子】 権力の象徴である帽子。 学生の象徴である制帽。 帽子一つからわかること。 帽子の絵。 魔法の帽子。 いろいろなものが出てくる奇術師の帽子。 【坊主頭】 眠っている人の髪を剃って、坊主頭にする。 眠っている間に坊主頭にされたため、それが自分だと認識できない人。 狐にだまされて坊主頭になる。 【ボクシング】 貧しい少年や青年が、ボクサーになる。 無名のボクサーの大抜擢。 引退したボクサー。 八百長試合。 女性ボクサー。 古代のボクシング。 【ほくろ】 同一人である証拠のほくろ。 同一人が転生した証拠のほくろ。 足の裏につけた墨が、転生後、ほくろとして現れる。 身体の同じ部位にほくろのある二人。 人妻のほくろの位置を、夫以外の男が知る。 后のほくろ。 ほくろでなく、灸点という形もある。 ほくろを消す。 【星】 人の誕生と星。 人の死と星。 地上の人間が天へ昇って、星に化す。 人間が一時的に天界を訪れる。地上から見ると、新しい星が現れたように見える。 宇宙飛行士が、宇宙空間から地球の大気圏へ落下する。地上からは流れ星に見える。 神あるいは聖人の魂が星になる。 英雄の無念の思いが星になる。 鳥が星になる。 冠が星になる。 首飾りが星になる。 星が銀貨に化す。 星が人間の姿をして、地上に現れる。 星が、人間の男の妻になる。 地上に降りた星を捕らえる。 空の星を落とそうとする。 帝王をあらわす星。 多くの星が動き、都が移る。 昼間に星が見える。 惑星の破壊・滅亡。 木星が太陽になる。 木星の太陽化中止および爆破。 星々の性交。 彗星が地球をかすめる。 隕石が地上へ落ちる。 【蛍】 蛍の光。 多数の亡魂が多数の蛍になる。 生きた女の身体から抜け出た魂かもしれぬ蛍。 死んだ女の身体から抜け出た魂かもしれぬ蛍。 禿げ頭を、蛍の光に見立てる。 【発心】 人の死・動物の死に接して現世の無常を観じ、発心して仏道へ入る。 桜花を見、稲穂を見て、無常を観ずる。 仏の教えを聞く・すぐれた僧に出会うなどして、発心し仏道に入る。 【ホテル】 多くの客が宿泊する都会の大ホテル。 孤独を求めて都会のホテルにこもる。 高級ホテルではなく、貧しい人々の寝泊りする木賃宿。 性交のためのホテル。 人を狂わせ、殺すホテル。 ホテルの経営者が、自分の息子を殺す。 ホテルの部屋のマジック・ミラー。 【仏】 僧・女・子供などが、仏の姿を現す。 仏が訪れるとの夢告。 仏像が苦痛を訴える。 にせの仏。 二人の仏。遠い仏国土の如来が訪れて、釈迦如来と対面する。 【骨】 骨は人を作る材料になる。 骨で笛を作る。 武器としての骨。 人間の骨の代わりに動物の骨。 火葬後の骨が蛇に変わる。 火葬後の骨が原形をとどめない。 聖者の遺骨。 親友二人の骨を混ぜる。 骸骨を抱きしめる骸骨。 生きた人間を見ても、「髑髏」や「白骨」に見えてしまう。不浄観。 【本】 本による占い。 焚書。 不思議な本。 眠るための本。  本を読んで眠り、その本の影響を受けた夢を見る。 本を読んで眠ったが、本の内容とは全然関係のない夢を見る。 本のページに毒を塗る。 書物を食べる。 本の中に入る。 本の世界に入り込んで、現実に戻れない。 本の中から美女が出て来る。 本の冊数が減って行く。 冊数が減っても、本の値段が変わらない。 売った時の倍の値段で、本を買い戻す。 【迷子】 迷子の世話をする。 「まいご」と「まごい」。 【枕】 膝枕を通して、神からのお告げを聞き、夢を見る。 木を枕に寝て、神々の問答を聞く。 石を枕に寝て、神のお告げを聞く。 枕の穴が異郷への入口。 枕の場所を変える(*枕に乗っている頭部の位置も変わる)と、体外に出ていた魂が身体に戻れなくなる。 枕返し。眠っている人の枕をひっくり返す。 枕の下から金貨。 枕の下に宝船の絵。 古い枕が妖怪化する。 【待ち合わせ】 男女が待ち合わせるが、女が来ない。 男女が待ち合わせるが、男が来ない。 友人どうしが待ち合わせる。 謎の人物と待ち合わせる。 誰を待っているのか、何を待っているのか、答えられないこともある。 待ち伏せ。 【末子】 六人きょうだいの末子。 七人きょうだいの末子。 八人きょうだいの末子。 【真似】 幸運を得た人の隣人が、真似をして失敗する。 幸運を得た人の兄弟姉妹が、真似をして失敗する。 動物相互の真似。 共鳴動作。Aの動作を、Bが無意識のうちに真似して、同じように動く。 Aが笑い、それにつられてBも笑い出す。 【継子】 継母が継娘をいじめる。 継子が男であるばあい、継母が継子を恋することが多い。 権力者の妻が、夫の部下など年少の男に恋する物語が、古代の文献にいくつか見られる。これらが、継母の邪恋の物語の古形であろう。 継母が継子を殺そうとする、もしくは殺してしまう。 本妻の子の乳母が、継子を殺そうとする物語もある。 継母にそそのかされて父も子を殺そうとする。 息子が継母に孝行を尽くす。 継母と娘が和解する。 継子ではなく、実の子をいじめる。 【守り札】 守り札の奇瑞。 守り札が人間の身代わりになって割れる。 守り札が死霊の侵入を防ぐ。 霊の侵入を防ぐ守り札をはがす。 お守り紐。 護符の効力を示すための芝居。 【麻薬】 麻薬中毒。 コカインの使用。 阿片常用者。 麻薬による死。 麻薬と犯罪組織。 麻薬を人形の中に隠して運ぶ。 麻薬を赤ん坊の体内に隠して運ぶ。 【眉毛・睫毛】 眉毛をかざして見ると正体がわかる。 眉毛に唾をつけるのは、狐に化かされないためのまじないである。 長い眉毛は長命の相である。 白い眉。 巨人の睫毛。 睫毛を射切る。 【身売り】 金のない夫のため・親のために、女が遊里へ身を売る。 母親が娘を遊郭に売ろうとするが、思いとどまる。 身売りする娘を買い戻す。 亡父・亡母の追善供養のため、子供が人買いに身を売る。 貧しい飼い主を助けるため、猫が身売りする。 【身代わり】 夫や恋人の身代わりに女が死ぬ。 主君の身代わりになって家来が死ぬ・苦を受ける。 病者の身代わりに、その肉親や弟子などが死のうとする。しかし、神の恵みなどによって死なずにすむ。 病者の命を救い、その代わりに死んでゆく。 身代わりの死が不可能なばあいもある。 仏・菩薩などが、殺されるはずの人間に代わって刃や矢を受け、人間の命を救う。 仏・菩薩などが、傷や苦を受ける人間の身代わりになる。 二重の身代わり。AとBが出会うかわりに、Aの身代わりとBの身代わりが、お互い相手を本物のBでありAであると思って出会う。 Aの身代わりにBがなり、さらにBの身代わりにCがなる。 主君や義理ある人を救うため、家族を身代わりにする。 友人の身代わりになる。 人間の身代わりの饅頭。 人間の身代わりの衣服。 首の代わりの頭髻(たぶさ)。 【水】 水のない所に水を出す。 血が水に変って、大勢のかわきをいやす。 水が血に変わって、飲めなくなる。 水が目前にあっても飲めない。 水をしりぞける。 水の上に水を積み重ねる。 水上に座す。水上を歩く。 水の力で、死者が生き返る。 水の力で、傷つき病む人が回復する。 水と化す異類の男。 水と化す異類の女。 液体人間。 水に吸い込まれる女。 女の身体のあった場所から泉が湧き出る。 【湖】 陸地が湖になる。湖の起源。 湖が陸地になる。 湖面を歩く。 湖が、前世・現世・来世を映す。 【水鏡】 動物が自分の姿を水に映す。 美少年が自分の姿を泉に映す。 泉を見る美少年の瞳に映る泉。 女が、変わりはてた姿を水に映す。 水に映る黄金を、そこに実在するものと思う。 酒に映る美女を、そこに実在するものと思う。 酒に映る縄や弓を、蛇だと思う。 将来の自分の姿が、水に映る。 将来の夫の顔が、水に映る。 未来の妻の姿が、水に映る。 自分の顔が、水に映らない。 水鏡に本性が映し出される。 水鏡を見て、人や鳥の所在を知る。 他人の姿が水に映るのを、自分が映っていると誤解する。 【見立て】 目の前にある物を、それと形状の類似した別の物と見なす。 育ちが良いために、日用の卑俗な物品を、風雅な飾り物に見立ててしまう。 無間(むげん)の鐘に見立てた、泥の鐘や石の鉢。 人間の一生(嬰児期・成年期・老年期)を、一日(朝・昼・晩)に見立てる。 【道】 どの道を行くか選ぶ。 冥府の分かれ道。 二つの散歩道。 どの海路を行くか選ぶ。 道で女に出会う。 長い道のりを縮める方法。 【道しるべ】 豆や石など小さなものを道すじに落として、道しるべとする。 草花の種をまいて、道しるべとする。 枝を折って、道しるべとする。 奇矯なふるまいをし、その痕跡を残して道しるべとする。 役に立たなかった道しるべ。 【道連れ】 旅の男が、妖怪や幽霊などと道連れになる。 死者の埋葬をした男が、死者の霊と道連れになり、恩返しされる。 死者の埋葬をした男の息子が、天使と道連れになり、恩恵を受ける。 旅の若者が、女と道連れになる。 旅人が、道連れになった男に脅される。 敵を道連れにして死ぬ。 死んだ夫が、妻も一緒に死の世界へ連れて行く。 【密会】 男女の密会中に事件が起こる。 【密室】 近代の推理小説では、人間の侵入不可能な密室の中で、殺人が行なわれる。 被害者が一人で部屋にこもって鍵をかけ、その後に倒れる。「出入り不可能な密室に、被害者だけがいて犯人の姿がない」、という状況ができ上がる。 次の物語は、密室から死体が消えるという展開で、近代の推理小説のような印象を受ける。 密室にこもって、魂を遠方に送る。 小さな密室に入って姿を消す。 エレベーターも密室の一種である。どこかの階に止まらなければ、外へ出られない。 【密通】 人妻が愛人と密通する物語は、外国には古代からある。 「妻に裏切られたのは自分だけではない」と知って、夫の心が慰められる。 夫が旅に出ている留守に密通する。 夫の旅中に密通する物語の変型。 二世代にわたり繰り返される密通。 欧米の近代小説で名作と言われるものの中には、人妻の密通をテーマとするものが目立つ。 妻の不貞に夫が気づかない。 夫の目の前で、妻が情夫と交わる。 妻が犯されたことを、夫が知る。 姦通を指摘された妻が、開き直る。 もののはずみ・偶発的な事故がきっかけで、男女が不義密通の関係になる。 不義密通のでっちあげ。 【三つの宝】 三種の神器。 根の堅州国の三つの宝。 三種の家宝。 御伽話の三つの宝。  三つの宝を横取りして逃げる。  【三つ目】 三つの目を持つ神や人。 「人間の両目」に「馬の片目」を足して三つ目。 【身投げ】 川へ身投げする人と、それを止める人。 川へ身投げする人と、それを救う人との縁組み。 身投げする女を救った男が、後にその女に命を救われる。 大勢の身投げ者を救っていた人が、後に自分も身投げをする。 身投げの失敗。 集団の身投げ。 愛をつらぬくための身投げ。 身投げするふりをして、金をだまし取る。 毎晩の身投げ。 身投げする人と、それを受け入れる手。 【身分】 王族・貴族の青年と町娘・村娘との、身分違いの恋。 裕福な家庭の青年と女中との、身分違いの恋。 男性貴族と海女の、身分違いの契り。 上流貴族の男と中流貴族の女の契り。 大金持ちの男と町娘の、身分違いの恋。 逆に、良い家柄の・身分ある男だと思ったら、そうではなかった。 斜陽貴族の青年と、新興ブルジョアジーである村長の娘が、身分差を越えて結婚する。 王族の娘と男性取材記者の、身分違いの恋。 伯爵未亡人とセールスマンの結婚。彼らの飼い犬どうしの結婚。 将校の未亡人を思慕する、無学な人力車夫。 身分・境遇の異なる双子。 貴族にあこがれる、成金の町人。 【未亡人】 未亡人と独身青年の恋。 未亡人が独身青年を誘惑し、もてあそぶ。 未亡人の再婚話。  未亡人と寡夫の恋。 未亡人と妻帯者の恋。 社交界で何人もの男をあやつる未亡人。 亡夫の莫大な遺産を得た未亡人。再婚すれば、その遺産を失う。 【見間違い】 身体の一部分を、金や貴重品などと見間違う。 異様な姿のものを化け物と見誤る。 猟師などが、人を獲物や魔物と見誤って鉄砲で撃つ。 親孝行な息子が、獲物と間違われて殺される。あるいは、殺されそうになる。 逆に、息子が獲物と間違えて母親を弓で射殺す。 息子が、熊を母親の化身と知らず、殺そうとするが未遂に終わる。 意図的に、鹿と間違えられ射られようとする。 人の行動を見て、その意図するところを取り違える。 自殺しようとする人を見るが、遠方からなので、そのことがわからない。 大勢が、目前で起こっていることの意味を取り違える。 【耳】 敵の耳を切り取る。 職人の耳を切り取る。 手柄の証拠として耳を切り取る。 自分の耳を切って与える。 耳をもぎとる・食い切る。 耳からさまざまなものが出る。 耳から誕生する。 耳の穴を抜けて別世界へ行く。 耳が聞こえないと、思索や瞑想に好都合な場合がある。 耳が聞こえないゆえの悲劇。 【未来記】 未来に起こることを文字で記した書物。 未来の新聞。 未来記の、実現した所までを読み、あとは見ずにおく。 未来が記してあるかもしれないページを開くと、すべてが消え失せる。 未来の予見とその対策。 未来に起こることを描く幻像や絵画。 宇宙の過去から未来まで、風景を見るように、すべて一望できる。どのようにしても、いささかもそれらを変えることはできない。 未来が見えるテレビ。 【百足】 百足が蛇を殺す。 百足と蛇が戦い、人間が蛇の見方をする。 百足の多くの足。  百足が人を殺す。 大百足が家の中に現れる。 【無限】  無限に小さくなるが、ゼロにはならない。 無限に近い膨大な情報を、一つの刻み目に収める。 無限に近い広大な海を、一本の髪の毛が呑みこむ。 無限の情報を、一巻の書物に収める。 無限の時間。無限の繰り返し。 無限の極小世界と無限の極大世界。 無限数の宇宙が同時に存在している。 【婿選び】 大勢の男を集め、理想の婿を選ぶ。 【夢告】 夢の中に神仏などが現れ、直接言葉で意志を伝え、指示を与える。したがって夢解きをする必要がない。 複数の人間が同じ夢告を得る。 いつわりの夢告。 【無言】 無言の行。 二人〜三人が、無言の行くらべをする。 無言のまま、なしとげねばならぬ仕事。 妻が無言のまま試練に耐え抜く。  無言でいなければならない妻が、声を発してしまう。  声が出ない妻。 無言の人。  無言の霊。対話不可の霊。  対話不可の人。 【虫】 虫が身体から出る。 人間が死んで、一匹の虫に生まれ変わる。 人間が死んで、多くの虫に化す。 人間の死体に多くの蛆がわく。 虫好きの人。 虫の生態を見て、人間存在について考える。 【無尽蔵】 食物・宝物などがいくらでも出てきて、尽きることがない。 無限に出て来る食物の、とめ方を知らない。 酒をどれだけ飲んでも減らない。 着物の布が限りなく出てくる。 無限に物が湧き出ると思ったら、それはよそから取って来たのだった。 無限にお金が湧き出ると思ったら、それはよそから取って来たのだった。 無限にお金が湧き出ると思ったら、それは未来から借りて来たのだった。 【胸騒ぎ】 親子の間に起こる精神感応。 【夢遊病】 婚約者が夢遊病であることがわかったので、結婚をとりやめる。 婚約者が夢遊病であることがわかったので、結婚する。 事故死した人を見て、夢遊病者が「自分が殺した」と思い込む。 夢遊病者に、殺人・傷害の罪を着せる。 AがBを夢遊病者に仕立て上げる。Aは殺人を犯し、その罪をBに着せる。  身体は眠っており、その人物と同じ姿をした魂が、身体から抜け出て外をさまよう。このような場合は、夢遊病と区別し難いことがある。 【目】 目の呪力。 蛇ににらまれると、動けなくなる。 英雄と怪物のにらみ合い。 異郷へ行くには目を閉じる必要がある。 死ぬ時も目を閉じる。 自らの両目を抜き取って、他の人や子供に与える。 蛇が自らの両目をくりぬく。 男が蛇の両目をくりぬく。 子供の目玉を抜き取る。 両眼が抜け出た夢を見る。 目と鏡は、密接な関係がある。 左目を洗うと(あるいは左手に鏡を持つと)太陽神が生まれ、右目を洗うと(あるいは右手に鏡を持つと)月神が生まれた。 左目が太陽となり、右目が月となる。 義眼。 【冥界行】 地下の冥界へ下る。 六道を見る。 船で冥界へ行く。 冥界の父に会いに行く。 冥界の母に会いに行く。 冥界の妻に会いに行く。 現世の人を眠らせ、「冥界で目覚めた」と思いこませる。 現世(=娑婆)にいるのに、「ここは冥界だ」と強弁する。 心中をはかり、「冥界へ来た」と思い込む。 冥界での時間経過。冥界の一日が、人間界の一年に相当する、と語られることが多い。 地獄で苦を受ける時間の長さ。 冥界の時間経過だけ述べて、人間界の時間経過には言及しないこともある。 冥界へ到る途中の道。 身体は現世にありつつも、夜、眠っている間に魂は冥界を訪れている。しかし当人はそれに気づかない。 【冥婚】 人間の男と冥界の女との結婚。 人間界の男が、冥界の女を生き返らせようと試みるが、できなかった。 人間界の夫が、幽霊になった妻との共寝を恐れて逃げる。 人間の男が冥界の女と結婚しようとするが、失敗する。 現世の男と冥界の女が、ともに転生することによって結婚が可能になる。 人間の女が死んで、冥界の男と結婚する。 冥界の男神と現世の女神との結婚。 死者の霊が生者の夢にあらわれて、情交を求める。 【迷路】 複雑な迷路とその脱出法。 迷路から出られなくなって、死んでしまう人。 惑わし神や狐などのために、道に迷う。 目隠しをして俥に乗せられ、迷宮の中を行くごとく、方々へ引き回される。  門も壁も階段もない迷路・迷宮。 多くの鏡を用いて作られた迷路の部屋。 都市の地下に広がる迷路のような下水道。 【目印】 神が人々に災いを与えるが、助けるべき人間には目印をつける。 病気などの災いから救う家の戸口に、目印をつける。 逆に、病気の災いを与える家に、目印をつける。 病人の出た家に目印をつける。 特定の人の身体や衣服に目印をつけておき、後にその人をさがす。 犯罪者の身体や衣服に目印をつけて、捕らえる。 特定の物に目印をつけておき、後に、その物に関わる人物をつきとめる。 ある人物の衣服や持ち物の特徴を目印にして、その人を捜す。 特定の人や場所に目印をつけるが、同じ印を多くの人・場所にもつけ、本来の目印がどれなのか、わからなくする。 目印を消そうとする。 無意味な目印。 船に目印をつける。 船に目印をつけても安心できない。 身を守るための目印が、敵にとっては、ねらうべき目印になる。 宇宙空間につけた目印。 【面】 美しい顔を隠す仮面。 醜い顔を隠す仮面。 醜い顔を面で隠していることを利用して、別人とすりかわる。 泣き顔を隠す面。 国王と同じ顔を隠す仮面。 面を取っても、自分の本当の顔が現れるとは限らない。 肉づきの面。 人肉の面。 愚かな動物が、面をつけた役者を見て、「上手に化けるものだ」と感心する。 凶相の面。 仮面の女が自分の妻であると気づかずに、口説いてしまう。 覆面を捨てて、自分の正体を隠す。 【申し子】 神仏に祈って子を得る。日本では中世の物語に多く見られる。 外国にも、古くから、神などに祈って子を得る物語がある。 本来授かるべき子種がないが、神仏の特別のはからいで、子が生まれる。 「子を授けないと大変なことになるぞ」と言って、神仏を脅す。 【盲点】 すぐ目の前にあっても気づかれぬ物。 犯行現場にいても疑われない人。 あまりに身近にいる男性なので、好きだということに気づかない。 盲点に入ったかのごとく、目前のものが見えなくなる症状。欠視症。 人間の姿全体が、盲点に入って見えなくなる。 闇の中で明かりを持つ人は、かえってその姿が見えにくい。 【盲目】 敵のために眼をつぶされる。 自らの手で眼を突き刺す、または、抉る。 男が、神聖な女性の裸体を見たために、罰を受けて盲目になる。 男が女神の姿を見たために、斜視になる。 男が、女性の犯されるありさまを見たために、仕返しに目をえぐられる。 神意により盲目になる。 仏罰を受けて盲目になる。 生前の嫉妬の罪により、死後盲目になる。 盲目ゆえ誤解する。 盲人をだます。 盲人のふりをする。 男が、盲目になった愛人と再会する。 女が、盲目になった愛人を訪れる。 盲目になった父母や夫と再会し、開眼させる。 盲目の夫と苦労をともにする妻。 盲人国。 盲目の旅人。彼は剣の使い手でもある。 【木馬】 空飛ぶ木馬。 大勢の兵士が入った巨大な木馬。 回転木馬。 【文字】 虫喰いによる文字。 神力や妖術などによって、文字が消える。 烏賊墨で書いた文字は、時間がたつと消えてしまう。 消えぬ文字を消す方法。 漢字・漢語の解釈。 文字の読み方。 文字の力。 特定の文字の力。 血文字で辞世の和歌を記す。 血文字で、強い怒り・恨みの心を表す。 墨がないので血で長大な文章を記す。 空に書く文字。川に書く文字。 形が類似した文字。 筆跡。 文字の起源。 【餅】 餅が鳥に変わる。 鳥が餅に変わる。 餅から血が出る。 餅に血が混じる。 雑煮を食べない。 餅と石。 餅と運命。 【物語】 雨の日・雨の夜に、女性の話や恋の話をする。 爺婆が雨の夜に恐ろしいものの話をする。 自分が本当は好きなもの・欲しいものを「嫌い」・「こわい」と言って、仲間たちをだます。 自分が本当は好きなもの・欲しいものを「嫌い」・「こわい」と言って、幽霊や化け物をだます。 知的な会話・哲学的な議論の物語。 未知の物語を求める・聞く。 一人が・あるいは何人かが、次々と様々な物語を語る。 延命のために、様々な物語を語り続ける。 演説終了とともに議員を罷免されるので、議員の地位を保持するためにいつまでも演説をし続ける。 物語の中の物語。 物語が途中で中断されたため、聞き手が怒る。 物語がいつまでも続くので、聞き手が飽きる。 虚構の物語と、現実の事件との偶然の符合。 小説のストーリーとそっくりの殺人事件が起きる。 現実の殺人事件そっくりの小説を執筆する。 【物狂い】 恋人や子供と別れた女が、狂気となって諸方を巡る。 妻や恋人と別れた男が、狂気となって諸方を巡る。 【物乞い】 神仏が乞食姿であらわれる。 神仏が人の慈悲心を試すために、繰り返し物乞いをする。 繰り返しの物乞いに応じて、宝をすべて布施する。 食や金でなく、身体を布施として乞う。 物乞いとなって、自分の家に戻る。 【もののけ】 死霊・生霊・妖怪などが、病気・懐妊中の女性にとりついて苦しめる。 病気の男性を、もののけが苦しめる。 一人の女の生霊・死霊が、二十数年、あるいは三十年にも渡って、何人もの女を苦しめる。  一人の法師の死霊が、二年余を隔てて、二人の女(異父姉妹)にとりつき苦しめる。 屈強な武将も、もののけに取りつかれることがある。 【桃】 天界の桃を食べれば、不老長生が得られる。 桃一つ食べると一年が経過する。 桃を用いて、鬼や魔物を追い払う。 死霊は桃を恐れる。 【森】 飢饉で食物がなくなったので、親が子供を森の奥に捨てる。 飢饉で食物がなくなったので、子供たちのために食物を残して、親が森の奥に姿を消す。 森の中の城・宮殿・家・小屋。 森や林の中で、すでに死んだ人や、まだ生まれない人に出会う。 森を抜けて異世界へ行く。 森に隠遁する。 【門】 門は、冥府への入り口である。 極楽の東門。 地獄の東門。 地獄の外門と内門。 龍宮のような門。 疫病に侵され死に瀕した市は、現世に出現した冥府である。冥府の入り口に相当する市門は、閉鎖される。 門は、神や鬼などと出会い交渉する所である。 ただ一人のための門。 【問答】 無言の問答。 身振り手振りによる問答。 智恵くらべの問答。 旅の賢者と子供の問答。 生者と死者との問答。 【矢】 矢を射ると、射手の方へ戻って来る。 射られた矢を、射手に投げ返す。 射手が、自分の矢で自分を傷つける。 矢を射る時に、第二の矢を用意する。 二本の矢を同時に射る。 クピードの二本の矢。 三本の矢。 五本の矢。 十万本の矢。 無数の矢を身体に受けて倒れる武将。 白羽の矢。 矢の落ちた所に住む娘を、妻とする。 【厄年】 厄年に病気になる。 厄年に心中する。 【宿】 神が宿を請う。 僧が宿を請う。 旅人が宿を請うが、そこには鬼や怪物の類が住んでいる。 宿の主である魔女が、訪れた旅人を動物に変える。宿の主が僧であったという物語もある。 旅人が宿で命をねらわれる。 旅人を殺す大石を仕掛けた宿。 つり天井を仕掛けた屋敷。 宿で殺される、と旅人が誤解する。 旅人が人(あるいは動物)を殺した後、一軒の家に宿を借りるが、そこは旅人が殺した人(あるいは動物)の家族の家だった。 旅人が人を傷つけた後、一軒の家に宿を借りるが、そこは旅人が傷つけた人の家族の家だった。 宿で、人々が思いがけぬ巡り合いや再会をする。 宿を請う人を、実の子であると知らずに殺す。 宿の女と関係を持つ。 宿の女に心ひかれるが関係を持たない。 消え失せる宿。 【山】 山に登って神に祈る。神と出会う。 山にこもって思索・瞑想する。 山に隠れる。 山での説法。説教。 神が山へ降り立つ。 日本の山の起源。 山を作る。 山の背比べ。 二つの山の一方が背伸びし、一方が身を縮める。 山の背伸びを止める。 山崩れ。 山を少しずつ崩して行く。 山は、死者の世界との接点でもある。山へ登って、死者と出会う。 現世に別れを告げ、深山に入って死を待つ。 飛行機で高い山の頂上へ向かう夢を見つつ、死ぬ。 人間は死ぬと、山に登る。 人間の寿命と山。 ガラスの山。 【山姥】 山奥に住む白髪の老女。 山姥が人間や動物を食う。 山姥が富を授ける。 山姥が子を産む。 山姥の子。 【闇】 闇の中の戦闘。同士討ち。 闇の中の人殺し。人違いして別人を殺す。 闇の中の交わり。 醜貌の男が、闇の中でのみ妻と逢う。 闇の中では盲目の人は、目の見える人よりも、かえって有利である。 闇の中の盗み。 だんまり。闇の中で、何人かが無言のまま手探りで絡み合う。 【遺言】 敵を討て、との遺言。 遺言状。 【誘拐】 子供を誘拐して殺す。 子供を誘拐し、身代金を得る。 誘拐犯から要求された身代金を、犯人逮捕の懸賞金にする。 誘拐犯ではなく、誘拐された被害者が、身代金の額を決める。 親の口を封じるために、息子を誘拐する。 若い娘を誘拐する。 UFOが地球人を誘拐する。 【遊女】 賤しい職業の男が、高嶺の花の遊女を見そめる。 遊女殺し。 娼妓が男をだます。 【誘惑】 神女もしくは魔性の女の誘惑。 英雄が女に心を奪われ、本来の任務を忘れる。 傾国の美女を用いて、帝王の心を惑わす。 超人的な力を持つ男が、誘惑に負けて女と交わり、力を失う。 謹厳実直な男が、女ゆえに身を滅ぼす。  女の誘惑に負けなかった男の物語もある。 神・仏・僧などが女に化身し、あるいは女を送って、男の心を試すために誘惑する。誘惑に乗る男も乗らぬ男もいる。 仏や僧が女に化身し、誘惑に乗る男をそのまま仏道へ導く。 【雪】 雪に難渋して宿を求める。 雪の夜に、神仏またはそれに等しい存在が身をやつして訪れ、福を授ける。 雪と足跡。 積もった雪が村全体を隠す。 雪だるまが死体を隠す。 雪山。 【雪女】 雪女と結婚する。 雪女を風呂に入れたら、消えてしまった。 雪むすめを火に近づけたら、消えてしまった。 抱くだけで消えてしまう雪女もいる。 雪女と話をすると殺される。 雪女郎を見ると死ぬ。 雪の精を見ても死なない。 【行方不明】 行方知れずの女。 行方知れずの男。何年か後に再び姿を現す。 行方不明の隠蔽。 【ゆすり】 人に言いがかりをつけて、大金を要求する。 スキャンダルや犯罪に関わりのある人物を脅して、金品を要求する。 【指】 指先から光を放つ。 人の指が蛇に変わる。 指に噛みつく女。 指先に残る記憶。 指と痛み。 指を切り取る。 ヤクザが指をつめる。 【指輪】 不思議な力を持つ指輪。 愛のしるしとして、男から女へ・女から男へ、贈られる指輪。 男が指輪を二つに折り、半分を自分が持ち、半分を女に渡す。 指輪を示して、その持ち主の存在を知らせる。 海に投げ捨てた指輪が、持ち主の所へ戻って来る。 指輪の自慢。 【弓】 弓の名手。 弓を用いない名手。 強弓を引く。 神々の武器。 姿を変える弓。 【夢】 夢か現実かわからない。 夢と現実を等価と見る。 現実に起こったことを、「夢だ」と言う。 人間の一生は夢だ、と悟る。 神も人間も宇宙もすべて夢だ、と教えられる。 繰り返し見る夢。 懐妊を知らせる夢。 夢に見た人を捜す・夢に見た人と出会う。 夢で逢う人の家を、目覚めてから訪れる。 夢の中で見たもの・得たものが、現実にある。 逆に、夢の中で人に物を与える形もある。 夢の中で体験したことの痕跡が、身体に残る。 月と太陽の夢。 真実の夢といつわりの夢。 他者の夢の中の存在。 夢の中で見る夢。 夢と自覚している夢。 夢から覚めて、その夢のもとになったことがらを知る。 夫が眠って夢を見る。妻が覚醒した状態で、夫の夢の内容を目撃する。 人間が眠って夢を見る。夢の内容を人造人間が目撃し、まわりの人たちに説明する。 妻が眠って夢を見る。妻の身体から抜け出した魂を、夫が目撃する。 母親が眠って夢を見る。母親の身体から抜け出した魂を、息子が目撃する。 【夢オチ】 長い時間にわたる経験が、実は短時間の夢だったことが、物語の最後にわかる。 眠れない夢を見ていた、という夢オチ。 夢オチの提案。 二十世紀中頃になっても、正攻法の夢オチの物語が作られることがある。 【夢語り】 良い夢を見たら、それが実現するまでは人に語ってはならない。 悪い夢を見た時、その日のうちに人に語れば、夢は実現せずにすむ。 悪い夢を見たが、その内容を誰にも話さなかった。 【夢解き】 王が見た夢を、賢者が解釈して将来を予言する。 王が、自分の見た夢の内容を語らずに、「私が見た夢の内容とその解釈を示せ」と、賢者たちに要求する。 凶夢を解釈しなおす。夢違え。 夢は、いったん解釈されてしまったら、もう解釈し直すことはできない、という話もある。 夢を誤って解釈する。 【曜日】 日曜日。 月曜日。 金曜日。 土曜日。 【予言】 予言された運命から逃れようとしても逃れられない。 予言にそそのかされて行動する。 死の予言を人為的に実現させる。 死の予言を無視して、命が助かる。 死の予言をそのまま受け入れて、命が助かるばあいもある。 予言の真の意味がわからず、誤った受け取りかたをする。したがって、意想外の形で予言が実現する。 無意識のうちに未来を予知する。 何気なく発した言葉が、将来の自分の運命の予言になる。 【横取り】 AとBが貴重な品を巡って争い、通りかかったCがその品を横取りする。 A・B・Cが貴重な品を巡って争い、通りかかったDがその品を横取りする。 AとBが金を巡って争い、通りかかったCがその金を預かる。 AとBが争い、通りかかったCがAとBを獲物として得る。 AとBが争い、通りかかったCが争いをやめさせて、A・B双方の命を救う。「漁父の利」とは異なる展開。 手柄を横取りする。 【横恋慕】 王などの権力者が、部下の妻に横恋慕し、部下を迫害する。 夏目漱石は、権力者の横恋慕をモチーフとした作品を二つ、明治三十九年に発表している。 横恋慕に起因する殺人と自殺で、男女三人が皆死ぬ。 横恋慕された女の夫が迫害されず、かえって昇進する物語もある。 横恋慕とは逆に、若い二人の幸福のために身を引く男。 【夜泣き】 特別な素質・運命を持つ人物が、幼い頃に夜泣きをする。 幼い子が、霊を感知して夜泣きする。 【四人兄弟】 四人兄弟の長子が王位を継承する。 四人兄弟の末子が天皇になる。 四人兄弟の末子が総領になる。 四人兄弟が協力して大蛇を退治する。  四人兄弟と父親との関係。 【四人姉妹】 四人姉妹それぞれの生き方。 【呼びかけ】 一声だけの呼びかけ。 妖怪や幽霊などの呼びかけに、返事をしてはいけない。 呼びかけに答えて良い相手と、答えてはいけない相手がある。 化け物の呼びかけに返事をしてはならない、という俗信を利用した詐術。 【読み間違い】 ひらがなの読み間違い。 漢字の読み間違い。 漢字二文字を、一文字に読み間違える。 アルファベットの読み間違い。 【嫁】 嫁くらべ。 嫁いじめ。 善意の押し売りが、結果的に嫁いじめになる。 嫁と姑の対立。 嫁が姑に孝行を尽くす。 嫁選び。年頃の娘たちを城へ招く。 嫁選び。年頃の娘たちがいる女学校へ行く。 夫が死んだ後に、舅・姑の家へ行き、嫁として仕える。 【夜】 夜に変身する。 夜に謎の外出をする。 夜、身体は家で眠っていて、魂だけが外出する。 夜にだけ訪れる夫。 夜の夫と昼の夫。 夜が先に生じ、後に昼が生じた。 はじめは昼だけで、後から夜ができた。 【四十歳】 初老となった四十歳で、あらたに結婚し・出産して、人生の新段階をむかえる。 初老に達した人を殺す。 【落雷】 落雷で人が死傷する。 落雷に遭いながらも無事だった。 雷が落ちて捕らえられる。 雷が木にはさまって、捕らえられる。 落ちた雷が、人間に何ものかを授けて昇天する。 激しい雷鳴。 臨終時の落雷。 【落下】 落下する刃物。 無意識の殺意による、刃物や植木鉢の落下。 落下する果実。 落下する亀。 天空が落ちるのではないか、と恐れる。 雷や隕石が落ちるのではないか、と恐れる。 高い煙突から落下する人。 水のないプールの底へ落下する人。 大きな客船の高い甲板から海へ落下する人。 深い穴を落下して行く人。 落ちそうで落ちない石。 天から穀物が降ってくる。 天からお札(ふだ)が降ってくる。 【離縁・離婚】 離婚・離別で終わる物語。 離縁・離婚を繰り返す。 離婚を望む夫婦。 妻が妊娠したため、離婚できなくなる。 子供が生まれたため、離婚せずにすむ。 両親の離婚後の子供が、父とともに暮らすか、母とともに暮らすか。 両親の離婚後の子供が、父の家と母の家を行ったり来たりする。 離縁の回避。大切なものを持って家を出る妻。 父親の説得により、離婚を思いとどまる妻。 旅先での経験により、離婚を思いとどまる妻。 神々の離婚。 姑が嫁を離縁する。 「離婚せねば災難に遭う」と言って脅す。 離婚の町。 縁切り寺。 縁切り石。 別れのスポット。 これといった理由もなく、男女が別れる。 【理髪師】 床屋が、客の咽を剃刀でえぐる。 悪人が床屋と入れ替わり、客の喉を剃刀でかき切る。 悪事をはたらく髪結い。 理髪師が、王の耳がろばの耳であることを知る。 理髪師が、王の白髪を見つける。 女性理髪師とその夫。 【龍】 剣や槍などで龍を殺す。 言葉の力で龍を追い払う、服従させる。 人間が龍に化す。 龍に乗って去る。 龍の引く車に乗って去る。 龍は水を得れば神通力を発揮する。 龍の作り物。 龍の持つ玉。 人とともにある龍。人を守護する龍。 龍の姿を見る。 龍の苦しみ。 【龍宮】 男が、海の彼方もしくは海の底の龍宮へ行く。 男が、湖の底の龍宮へ行く。 男が、池の底の龍宮へ行く。 男が滝壺の底の龍宮へ行く。 龍宮の住人が人間世界を訪れ、やがてまた帰って行く。 この世を去った人々が龍宮に住む。 龍宮城の東門。 【両性具有】 男でも女でもある存在。 一人で受胎する女。 両性具有と逆の、男性器も女性器も持たぬ無性人間。 男でも女でもない存在。 死とともに、性の区別も終わる。 両性具有者と間違えられた男。 【りんご】 西欧の物語に頻出する果物。生命のりんご・黄金のりんご。 命を奪うりんご。 りんごを食べて、壊血病から回復する。 【累積】 類似の出来事・状況などが次々に連なり重なる。 吉事と凶事が連なり重なる。 寒さと暑さが連なり重なる。 【留守】 留守番する娘のところへ、魔物や魔女が来る。 留守番する山羊の子供たちのところへ、狼が来る。 留守番をする子供が、泥棒を撃退する。 夫の留守を守る妻。 留守にさせる策略。 【霊】 幽霊が、配偶者や恋人のもとへ現れる。 幽霊が、友人のもとへ現れる。 幽霊が、死んだ場所に出現する。 霊が、生前の自分の家から離れない。 居城が解体され移築されると、幽霊もいっしょに移築先へついて行く。 幽霊が、現世に残した物に執着する。 きわめてささいな物に執着するばあいがある。 一人だけが霊の姿を見る。 大勢の人が幽霊を目撃する。 死霊が人間に手助けを請う。 死者の霊が供養を請う。 死者の霊が、「自分は殺されたのだ」と訴える。 死者が、骨と化し・鳥となって、「自分は殺されたのだ」と訴える。 生きた人間だと思っていたら実は幽霊だったことが、後にわかる。 生きた人間だと思っていたら幽霊で、幽霊だと思っていたら生きた人間だったことが、後にわかる。生者と死者の逆転。 生きた人間が幽霊のふりをする。 幽霊を見たと誤解する。 本物の幽霊を見ても、「これは幻覚だ」と考える。 目前の幽霊が実在するのか、ただ幻覚を見ているだけなのか、わからない。 幽霊のあるなしの議論。 「幽霊はいない」と論ずる幽霊。 霊と出会った証拠の物品。 幽霊は触れようとしても手をすり抜けてしまうものもあるが、生身の人間同様に質量や実体を持ち、さわることができるものもある。 【歴史】 過去の歴史記録を改竄する。 不都合な出来事を隠し、事実とは異なる記録を残す。 歴史を語る老人。 【連想】 犯罪と連想。 妻を思い浮かべる。 半月からスイカを思う。 風呂桶から棺桶を思う。 旧知の人の名前を思い出す。 連想の連鎖。 連鎖のあてはずれ。 【老翁】 老翁と若い女。 老翁の霊と若い娘の霊。 老翁が息子で、若い女が母。 不思議な老人と出会い、貴重な情報などを授けられる。 老人が青年の肉体を得る。 老年になってからもうけた子供。 老人の一人芝居。 老人の回想。 【ろうそく】 生と死のろうそく。 ろうそくが燃え尽きると、命も尽きる。 初めて見るろうそく。 ろうそくの蝋(ろう)を、身体にたらす。 ろうそくの焔の色で、火事が予知できる。 【老婆】 老婆と若い男。 老婆の霊と青年の霊。 老婆が若い女に変身する。 老婆が若い女に見えてくる。 老婆と思ったら、実は若い女。 若い女と思ったら、実は老婆。 【ろくろ首】 ろくろ首の女が結婚して、夫を驚かす。 少女のろくろ首。 ろくろ首の変形で、女が眠っている間に首が身体から離れて飛んで行く、というものがある。 首が外へ飛んで行っている間に身体を動かすなどのことをすると、首はもとの身体に戻れない。 身体を動かさなければ、首はもとの身体へ無事に戻ることができる。 女が蛇になり、木になり、ろくろ首になる。 【ロシアン・ルーレット】 ロシアン・ルーレットによる運試し。 ロシアン・ルーレットによる決闘。 ロシアン・ルーレットによる賭け。 ロシアン・ルーレットの変形。 弾丸なしのロシアン・ルーレット。 【ロボット】  人間と共存するロボット。人間の味方をするロボット。 人間に敵対するロボット。 ロボット三原則。〔第一条〕ロボットは人間に危害を加えてはならない。〔第二条〕前条に反しない限り、ロボットは人間の命令に従わねばならない。〔第三条〕前二条に反しない限り、ロボットは自らを守らねばならない。 ロボット三原則〔第二条〕と〔第三条〕の板ばさみ。 人間がロボットに恋する。 人間のロボット化。 サイボーグ。身体の欠損箇所を、人工の機器で補う。 【和解】 病気による和解。 死による和解。 父と息子の和解。 父と娘の和解。 兄と弟の和解。 【若返り】 草・花・果実・薬などを、飲んだり食べたりして若返る。 桃を食べたり水を飲んだりして、老夫婦が若返る。  水の中に入って若返る。 月の神は、若返りの水を持っている。 魔法や神通力などによって若返る。 老いてはまた若返ることを繰り返す。 身近にいる人を若返らせる不思議な存在。 若返ったと思ったら、病気だった。 若返り無用論。 【わざくらべ】 名手どうしが、わざを競う。 名手と女神が、わざを競う。 幻術などを競う。 変身くらべ。二者が互いにさまざまなものに変身しつつ闘う。 人間と狐の化けくらべ。 けちくらべ。 【鷲】 鷲が子供をさらう。 鷲にさらわれた子供が、後に親と再会する。 鷲にさらわれた人の帰還。 鷲の恩返し。 自分の羽のついた矢で射られる鷲。 【わに】 わにが人間の身体を食う。 わにが小鹿にだまされる。 日本の神話にあらわれる「わに」=鮫(さめ)、とする説が有力である。 わにと女。 わにの恋。 わにが女を喰い殺す。 【笑い】 笑いの呪力。笑うことによって神を招き、魔を払う。 笑って金を招き寄せる。 鬼や魔物を笑わせることによって、その力を失わせる・追い払う。 笑いを封ずる。 笑わぬ女が、こっけいなものを見たり、自分の気に入るものを見たりして、笑う。 笑わぬ女が、女性器を見て笑う。 少女の謎の笑い。 微笑。 笑いガス。 笑い薬。 笑い死に。 作り笑い。 家族の死に際しての、日本人の不可解な笑い。 【藁人形】 呪いの藁人形。 呪いを転じ変える藁人形。 人間に見せかけた藁人形。